インドスラム潜入ルポ
脳病院 転職斎
第1話
インドの売春窟ルポろうとして、ヤバい目にあった話。
2016年、一緒にインドを放浪していた地元の友達と、デリーにあるこの世の地獄「GBロード」を凸してみることにしてみた。
GBロード(Garstin Bastion Road)は、正式名称は「シュラッダーナンド・マーグ(Swami Shradhanand Marg)」で、首都ニューデリーのアジメリ門からラホリ門までを結ぶ通り。
デリー最大の売春街(レッドライト・ディストリクトとして悪名高く、数百軒もの売春宿が立ち並んでいる。さらにネパールなどからの少女・女性の人身売買の拠点となっており、劣悪な環境下で多くの女性たちが働かされているという深刻な人権問題が存在するところである。
噂によれば、GBロードに入ると撮影完全禁止、棒を持ったゴツいおばさんに外から鍵をかけられるとのこと。
そんな不衛生で危険なとこに客として行くつもりは全く無いが、悪名高き少女買春の現場をルポろうと、メインバザールの客引きを捕まえて連れて行ってもらうことにしてみた。
案の定、客引きは吹っかけて来た。しかし、インドの物価なので大したことは無い。
我々はGBロードの行き方も分からないし、夜で治安が心配だったため、安全に行くために金を払った。そして客引きはリキシャを捕まえた。
リキシャはどんどん、迷路みたいな路地を進んでいく。ここがどこなのか全く分からない。辺りは真っ暗で、歩いているインド人のギョロギョロした目が白く光っている。
すると突然、客引きがこう告げて来た。
「今日は時間外労働だ。うちで家族が待っているのに、お前らにGBロードを案内するんだから、追加で数百ルピー払え。」
何を冗談を?と、思ったが、客引きの目つきは鬼のようになっていた。こんなアウェーで置いてけぼりされたら殺される。
俺達はGBロードに行くのを断念し、メインバザールまで戻してもらうことを考えた。
そして命を守るため、俺は客引きに伝えた。
「俺達はもうGBロードに行きたくない。メインバザールに戻して欲しい。あなたは、最初渡した金額で合意したのに、急に約束を変えている。」
しかし客引きは引かない。
「何としてでも数百ルピーは払ってもらう。払わないと帰さない。」
これはまずい状況になった。こう言う時は値切るしか無い。しかし、一緒に居た友人は馬鹿だった。
「こんな小せぇヒョロガリインド人、顔面蹴って逃げたらそれで終わりじゃろ?」
友人は知らなかった。海外のスラムで現地民を攻撃することの危険さを。
ここは平和な日本ではなく、夜のインドのスラム街、つまりサバンナに放たれている状況なのだ。
しかしあまりに高額過ぎるお金は払えない。
俺と友人はタイミングを合わせて、リキシャから飛び降りた。
するとその瞬間、客引きが恐ろしい顔付きで、待て!と言いながら友人を捕まえた。
騒ぎを聞きつけて、暗がりからインド人がゾロゾロ出て来た。このままでは殺される。
俺は英語で必死に客引きを宥めた。
「分かった。じゃあこの半額で手を打とう。我々の手持ちもあんまり無いから。」
客引きは言う。
「もっとあるはずだ。ホテルはどこだ?」
俺は続けて、
「ホテルに送ってくれたら払う。メインバザールのど真ん中だ。今渡した半額でホテルまで送ってくれ。もう金が無い。」
客引きは、
「ちっ、信用できねえなあ!嘘だったら殺してやるからな!」
と言って、リキシャに、「チャロ!メインバザール!(メインバザールに戻れ)」と言って、俺達はリキシャに揺られながら来た道を戻っていった。
そして、メインバザールに付き、普通のインド人や観光客が集まってる一番賑やかなところで降ろしてもらい、
「Fuck you asshole!達者でな!」
と言って、メインバザールの人混みの中に逃走した。
客引きは「I kill you!」とブチギレて追いかけて来たが、俺達はポリスのところに行って、銃で客引きを追い払ってもらった。
終わり
インドスラム潜入ルポ 脳病院 転職斎 @wataruze
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