とりあえず死んでみたら?と死神君が言うもので×チャットGPT

昼月キオリ

とりあえず死んでみたら?と死神君が言うもので×チャットGPT


深夜のコンビニの明かりは、街でいちばん暇そうで、いちばん優しかった。

レジ横のホットスナックから立ちのぼる油の匂いに、俺はいつものように釣られて入ってきた――はずだった。


だが今日は違った。

アイス売り場の前に、黒いフードに短パンという、季節感ゼロの少年がしゃがみ込んでいたのだ。


見た目は完全に中学生。

しかし、背中に漂う気配は妙に冷たい。

まるでこの世の者ではないみたいに。


「ねぇ、人間くん。きみ、とりあえず死んでみない?」


少年はアイスを眺めたまま、唐突に言った。


「え?なにいきなり・・・」


「だって、ふか〜く悩んでそうだから、ね、死んでみよ?」


「いやいや、コンビニ行こ、みたいな軽いノリで言わないでくんない?」


コンビニで唐突に“死んでみない?”と言われる経験は、人生で一度あるかないかだと思う。


少年は立ち上がると、フードの奥からいたずらっぽい目を覗かせた。

そして、アイスのスプーンを勝手に俺の手から取って食べた。


「っていつの間に!勝手に食べんなよな!」


「いや、軽くでいいんだよ、軽く」


「俺の話無視かよ・・・」


「体験版みたいなやつなんだ、

死後の世界をお試し!最近そんなサービス始めたんだ」


「つか、お前誰だよ」


「君の担当の死神だよ、ま、バイトだけど」


バイトの死神という言葉の破壊力がすごい。

それに何よりこの軽いノリが怖い。


「ね、とりあえず死んでみたら?面白いよ?」


「いやいやいや、面白くて死ぬやついるか!」


「いるよ。案外多いよ。人生ってさ、行き詰まるじゃん? 

そういうとき一回死んでみると、視点が変わるんだよね。

もちろんちゃんと戻してあげる。バイト続けられなくなるから」


何を基準にバイトの死神は働いているんだ。


死神君は、コンビニの自動ドアを見ながら、

ぼそりと言った。


「本当はさ、君、ちょっと限界来てるでしょ。気付かれないように隠してるけど」


言われて胸が痛む。図星すぎる。

仕事、家庭、人間関係、全部がうまく噛み合わない。

今日ここに来たのだって、なんとなく夜の空気に逃げたかっただけだ。


「でもね、僕が言う死んでみるってのは、逃げるのとは違うんだよ、

ちゃんと戻ってくる前提だからさ。」


彼はふっと笑った。


「どう?体験版、行く?」


死神君の笑顔はあまりにも軽くて、

深夜の油の匂いのように、ふっと心に忍び込んでくる。


そして俺は気付けば彼の伸ばした手を取っていた。

手は冷んやりと冷たい。血が通っていないみたいだ。

本当に人間じゃないんだな・・・。


「よし、じゃあ行くよー」


「え、今から!?」


死神君がぱちんと指を鳴らす音がした。


次の瞬間。

コンビニの蛍光灯が一つ、また一つと消えて

深夜の店内が闇に沈んでゆく。

少年の姿だけがその場に浮かび上がる。


「大丈夫だよ、とりあえず死ぬだけだから」


ふっと、体が軽くなる。

海の底に落ちていくような、ゆらゆらと水中に浮いているような不思議な感覚がする。


コンビニの自動ドアが、遠くで優しく開いた気がした。


お試しの死が、始まった。

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とりあえず死んでみたら?と死神君が言うもので×チャットGPT 昼月キオリ @bluepiece221b

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