現代ダンジョンがある世界で、ジョブ【小悪党】♂は一発逆転を狙った結果、ジョブ【悪役令嬢】♀に
セトウチ ハコネ
プロローグ
第1話 小悪党は思い返す
一体何がどうなってる…??
探索者協会東京支部長室…、その部屋の中で俺のことを受付嬢の彩奈さんが、膝を折り、目線を合わせながらナデナデしている。
俺は、性欲を持て余した高校2年生の男子で、おまけに相手はちょっといいなと昔から思ってた俺担当の受付嬢さん、本来なら嬉しさのあまり小躍りしてもおかしくない中、俺は混乱の境地にいた。
「ほんとに可愛い!いっつも生意気な子どもだって思ってたけどこんなになっちゃって!もう!お姉さんビックリしちゃったじゃない!ビックリさせちゃメッ!よ!」
「ちょっ!ちょっとやめてもらえますか彩奈さん!」
そして俺の横には、抱き着くようにくっついてきている小学生くらいの幼女がいる。
幼女の腕が俺の胸周りにくっついていて子どもの高い体温もあって大変暑苦しい。
「とってもきれぇ〜なお姉ちゃん一緒に遊ぼうよ!おじいちゃん待っててたって退屈なんだもん!」
抱きついてきている幼女が、俺に目を合わせて話してくる。その幼女の目線の高さは、俺より少し下……。
そうだ少し下だ。
目の前の幼女の身長は130〜140cm位だ。対して高校生になりそれなりには身長が伸びていた俺の身長は175cm程ある。普通なら、頭ひとつ分は目線がずれる。
立ったまま会話するだけでも、相手は首を伸ばすはずだ。
……いいや、それは正確には嘘かもしれない。何せ今の俺は身長が、150cm無い位の女の子になってしまっているのだから。
飛びそうになる意識を奮い立たせ、なぜこんなことになってしまったのか、改めて思い返す。
---7年前-----
ある日世界が変わった。
地震の発生と共に世界中に謎の洞窟や扉、あるいは空間の歪みの様な入口が唐突に出現した。
それらは後にダンジョンと名付けられることになる。
各国は既存の科学ではあり得ないものの出現に対応を決めかね、立ち入り禁止処置を行い、各国が対応を話し合う方針を決めた。
日本政府は、次々発見されていくダンジョンを即時封鎖し、民間人の立ち入りを禁止するが、好奇心が強い人間はどこにでもいる。
政府が発見していない未発見のダンジョンに、集団で民間人が突入してしまう事態が散発してしまう。
俺も当時、物心がついていたのならダンジョンに興味を持っていただろう。
ダンジョンに押し寄せる人々が、そこで見つけたのはアニメでしか見たことのないもの…。
緑色の肌を持った小鬼、二足歩行の犬、透明なゲル状の生き物、それらの映像が世界各国から同時多発的にネット上に投稿される。
そして情報が錯綜する中、ダンジョン発生から半日後にある有名な動画がネット上に投稿される。
それはある若者集団がダンジョン内に立ち入り、そこで襲われた緑色の肌の小鬼を撃退した動画だった。
倒した小鬼は空間に溶けるように消えていく。
「ひー、怖かったな。チビるかと思ったw」
「緑色の肌の小鬼って言ったらやっぱゴブリン……だよな?」
「この動画で俺らの有名人になれんじゃね?他の連中より早く動画投稿しようぜ!ネットも繋がらないし、さっさと帰ろうぜ。」
「まるでアニメか漫画みたいな話だよな。もしかして魔法とかステータスとかもあったりするのかな?」
動画内の青年の一人が発したステータスという言葉とともに、空中に透明なウィンドウが現れる。
「うわ!なんだコレ!………ステータス…?氏名…年齢…性別…レベル…それにジョブ:【商人】ってなんだよ。俺は製造業なんだけど………。」
「お!おい!それ!もしかしてステータスプレートってやつじゃねぇの!?…って!俺のとこにも出やがった!」
「ステータスって言えば出るのか!」
この動画は短いが爆発的に再生され、瞬時に世界を駆け巡る。
ステータスの存在が、それに続く魔法等の夢のような現象の存在を期待させたからだ。
こうなると世界の人々の興奮は、そう簡単には抑えられない。
各国政府は必死に民間を統制しようとするが、膨大に発生したダンジョン全てを短期で見つけることは不可能だった。
次々ダンジョンに侵入する人は増えていってしまう。
中でも多かったのは日本で、やはり長年培われてきたアニメや漫画によるファンタジーへの適応力が日本人の多くをダンジョンに誘う。
その後、魔物・レベル・ドロップアイテムなど多くのことが徐々に分かっていき、はじめはファンタジーを追い求めて命を掛ける、一部の命知らずがダンジョンを探索するばかりだった。
しかし、ドロップアイテムの魔石による魔石発電の開発を経て、第5次産業革命(魔力革命)によりダンジョンを探索する需要が急激に高まる。
ダンジョンを攻略する人々は、次第に探索者と呼ばれるようになり、世間でも一般的な仕事になっていった。
--3時間前-----
話変わって俺が女になるその日の昼へ、場面が移る。
Bランクダンジョン【
目の前にいるオークジェネラルは、このダンジョンの最下層ボス、一対一で戦うには文字通りに命を掛けて戦う必要がある相手だ。
『【ジョブ】のレベルが85に上がりました。』
『【短剣術Level4】・【弓術Level1】・【気法Level5】・【気合Level2】・【精神統一Level3】・【魔力感知Level4】・【トラップ解除Level5】・【ダンスLevel1】・【料理Level3】に上がりました。』
今日も危うげなく討伐し、すごく久しぶりのレベルアップに頬を緩ませる。
ようやくレベル85になったか。感慨深いな。
「ステータス。」
-------------------
氏名:三島 夕貴
年齢:16歳
性別:男
ジョブ:【小悪党】
ジョブレベル85
基礎ステータス
体力値 2740 (2840)
魔力値 2320 (2320)
攻撃値 862 (1392)
防御値 895 (1085)
魔攻値 662 (702)
魔防値 681 (821)
敏捷値 1214 (1624)
【剣術Level3】【短剣術Level4】【槍術Level5】【気法Level5】【闇魔法Level4】etc……
スキル
【連剣斬】【過連斬】【円周斬】【散裂斬】etc……
魔法
【ダークボール】【ミスト】【体力減衰】【視界減衰】【視野狭窄】etc……
【練習大好き】
------------------
ステータスウィンドウを確認して閉じる。
「ヨシ。帰るか」
ここ1年近く俺はこのダンジョンを潜り続けて、最低、週一回はボスと戦っている。
なぜこの1年間ずっと繰り返し同じボスと戦っているかという疑問が思い浮かぶだろう。
…別に勝てないからというわけじゃない。
最初こそ死にかけたが、今では油断こそできないが確実に勝てる相手というほどには自分自身強くなれた自信がある。
じゃあ、なんで俺が一年も同じダンジョンに通い続けているのか。理由はいくつかある。
一つ目は単純だ。
このダンジョンは、ボスが単体でしか出現しない。道中の魔物も一体、せいぜい二体まで。雑魚に囲まれる心配がほとんどなく、ソロ探索者である俺との相性がいい。
一対多数の戦闘は相手の数が多い程、事故の確率が跳ね上がる。一人で潜る以上、無駄なリスクは極力避けたい。
二つ目は、敵のタイプだ。
ここ【
人型の敵は対人戦闘に近く、通常戦闘スキル以外に対人用スキルや応用技術の習得に繋がる。
基礎能力だけじゃなく、|技能アーツの熟練度を稼ぐにはうってつけだった。
強くなるにはジョブレベルを上げるだけじゃ足りない。それと同等レベルの|技能アーツやスキルがなければ、ただの力に優れた素人になってしまう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます