情景集
鹿羽根ダヨ
20251130
午後9時。改札を出る。
ちょうど駅前のパン屋がシャッターを閉めていた。ガラガラという軋み音は1日の終わりを否応なく告げる。
隣のセブンイレブンは変わらず店先で煌々と企業ロゴを掲げているが、それもあと1時間で閉店。客足もまばらな店内で、緑の制服を着たバイトスタッフたちは思い思いに手を動かしながら、シフトの終わりを待ちわびる。
改札とセブンイレブンのあいだのスロープにはさまざまな人が行き交い、明日に備えて家路を急ぐ。
リュックを背負った行楽帰りの老夫婦、ものうげな顔を浮かべた白いダウンの女、恋人を見送る紫のボトムスを履いた若者。伊勢丹の買い物袋を手にした父親と、幼い兄妹を足元につれそった母親。
まもなく11月が終わる。そして我が身を振り返る間もなく、慌しかった1年が過ぎ去ろうとしている。
顔を上げると白いダウンの女は駅の角に寄りかかり、スマホを見つめている。まだ離れられない理由があるのか。立ち去ろうとする気配はない。
そろそろ足も疲れてきたのでエスカレーターへと歩きだす。人の流れに乗って、家路を急ぐ。
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