第45話 収穫を確認しよう

 ふらふらと歩き回ると、思っていたよりも色々な香草類や野菜を発見した。

 バジル、ローリエの葉、セロリ、パセリ。ニンニクと生姜もあった。ニンニクと生姜はここまで取りに来るより出来れば領で栽培して、いつでも自由に使える状態に持ち込みたい。ミントとレモングラス、ラベンダーも見つけたが、これらは森に自生しているのを確認済みなのでスルーする。ティムバー家で飲むお茶はもっぱらこれらのハーブで作ったハーブティーだ。


「お、ブロッコリーとカリフラワーだ」

「なんスかその緑のもさもさと白いもさもさ。食えるんスか?」

「俺は割と好きだな」


 ブロッコリーのポタージュがこれで作れる。しかしブロッコリーとカリフラワーは大きいので麻袋が一杯になってしまった。


「もう袋が一杯だから待ち合わせ場所に戻るか」

「俺の背負いかごに入れればまだ入るッスよ?」

「そっちには魔獣を狩ったやつを入れてもらうつもりなんだよ」


 待ち合わせ場所に戻ると、フリージアたちはもうパンパンに膨れた麻袋を持って待っていた。


「お待たせしましたか」

「そんなに待ってないわ」

「トール君に聞いたら本当に色々な食材があって、あっという間に集まってしまったんですよぉ」


 なんだかフリージアとアザレアが物凄くニコニコしている。満面の笑みで微笑んでいると行ってもいい。何かあったのか?とジェイドが様子を伺っていると、トールが麻袋を差し出して来た。


「中身を確認なさいますか?」

「あー、普通は家に帰ってからやるべきなんだろうけど、正直興味ある。見せてもらっていいか?」


 トールに渡された麻袋の中身を確認すると、ジェイドたちが見つけられなかったものも何種類か入っていた。


「おっ、セージ、ローズマリー、ディルか。……これなんだ?」

「それはマスタードです。ご存じないですか?」

「へー、マスタードって元はこんな感じで育つのか」


 辛みのある物が見つかったのは朗報だが、調理方法が分からない。


「……トール、これ加工法まで分かるか?」

「やったことはありませんが、どんな風に使うかは聞いたことがあります」

「それなら良かった」


 前世で自給自足チャレンジをやったときに、香草も野菜も色々な物を育てたのだが、辛味系はあまり手を出さなかった。理由は前世のジェイドが辛い物があまり得意ではなかったというのが一つ。そしてもう一つは、最初に唐辛子の栽培に手を出したら、他に栽培していたシシトウとピーマンとパプリカが唐辛子の花粉を受粉してしまい、辛い実をつけてしまったためだ。全部辛ければ諦めがつくのに、辛いのと辛くないのが入り混じって実るため、ロシアンルーレットと化した。以来ちょっと辛い物を避けていた。


「ん? なんか下の方にもあるな」


 手を突っ込んで取り出すと。


「マッシュルームだ! この階層キノコあるのか!?」


 ころりと出てきたのはブラウンマッシュルームとホワイトマッシュルーム。

 地球であればキノコは毒キノコと食用キノコの見分けが難しいため、専門家以外が手を出すべきでは無いジャンルだが、この世界は大抵のキノコの毒は準ポーションで解毒できる。


「キノコの群生地を見つけたんです。他にもポルチーニとモリーユ、エリンギが」


 麻袋の上の方が香草で埋まっていたが、下の方にはキノコがかなりの数入っていた。


「うふふふ~キノコがいっぱいですよ、キ・ノ・コ♥」

「ポルチーニとモリーユは結構いい値段するのよ~」


 フリージアとアザレアがご機嫌だったのはそう言うことらしい。


「魔宝具づくりとキノコを採りまくって王都で売るの、どちらが稼げそうです?」


 ジェイドの質問にアザレアが眉をハの字にした。


「売っちゃうんですかぁ~? 食べましょうよぉ~」

「いや、食べるのはいいけど商売になるのかどうかって話」


 前世日本ではシイタケやマイタケ、エノキなど、栽培されたキノコが簡単にスーパーで購入できたが、あれは栽培方法を見つけた人間が居て、大量生産・大量流通が出来るようになったから安く買えたのだ。栽培方法が見つかっていなかったマツタケなどは高級品だったわけで、まだキノコの栽培方法なんて生み出されていないこの世界では、どのキノコもかなりの高級品のはずである。


「条件によるわねぇ。これから王都に向かうまでの数日で準備できる分だけ、という話であれば魔宝具づくりの方が稼げるわ。でもそれって、私たち貴族が作業を行うからこそ出来ることでしょう?」

「まあ、人件費計上したらそこが高くつきますね」

「私たちは今後もずっと魔宝具づくりばかりやっている、なんてわけにはいかないし。一方で、キノコの収穫はこの1階層で出来るから、身体強化さえ覚えれば平民でも取りに来れるし、私たちが手を出さなくても収入になる。そう考えればこれはこれでいい商売なのではないかしら?」


 フリージアの説明にジェイドは頷いた。


「領の特産品には出来そうですね。大抵のキノコはダンジョンみたいに頻繁に収穫したり出来ないでしょうから」

「そうですよぉ、これから特産品にするんだからいっぱい採れます、だからこのキノコは食べましょぉ!」


 どうしても食べたいらしいアザレアがジェイドの肩をつかんで揺さぶってくる。


「アザレアって、意外と食いしん坊だったんだな……」


 これまで領の食事が美味しくなかったせいか、こんな一面は見たことが無かった。


「美味しいは正義ですぅ!」

「分かった分かった。今日採集した分はうちで使おう」

「やったあ!」

「その代わり、オーガブルの狩りは頑張ってくれよ? オーガブルを狩った数が足りなくて金が足りなかったらキノコも売る」


 ジェイドの提案に、アザレアが腕を組んで胸を反らした。


「まっかせてくださぁい! 狩って狩って狩って、狩りまくりますぅ!」

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