第3話 知らない世界
遠くから、声がする。
「起きろーー!!おおおおーーい」
何だ何だ? 俺は……? 春巻きは……?
あっ、あった。
ちらっと、手元を見るとちゃんと七百十一の袋がかかっていた。
「姫様。こいつ起きない。ぶん殴ってもいい?」
「こらこら、アセロラ。乱暴しないの。女の子でしょう?」
姫様? アセロラ? なんて名前だ。俺はアセロラが嫌いなんだ。
そんなことより、俺は今どうなっているんだ?
「そうだけどさ、姫様を困らせるやつはみんな私がやっつけるんだ!」
アセロラってやつは姫様の従者なのか。にしては言葉遣いが気になるが。
さっきから、声を出そうとしても、出ない。向こうにも届いていない。
そして会話の内容から察するに俺は姫様とアセロラの前で眠っているらしい。
「気持ちは嬉しいけど、今回はぶん殴っちゃだめよ」
「えーー姫様のケチ。毎回それ言うじゃん!」
「こーら?」
「はーい。わかったよ! もうっ」
良かった。とりあえず俺は殴られないらしい。
「でもまあ、こいつをどうにかしなくてはいけないのは事実よね……うーん、あれを使うか」
「えっ、姫様あれ使うの? ほんとに?」
「えぇ」
「ほんっと、姫様って優しいのか酷いのかわからない」
あれ? え、あれってなんだ。
なんで、アセロラってやつはそんなに嬉しそうなんだ?
「あれぇ、アセロラ。私はアロエ。世界一、優しくってよ?」
「えへへ、もちろん。姫様は世界一」
「よろしい」
「姫様! 準備できた!」
え? ええ? ちょ、ちょっと待って。
「流石よアセロラ。3、2、1」
え、だからちょっ……。
大きな衝撃とともに電流が俺を襲った。
そしてプツンと意識は途切れた。
「はっっ!」
眼の前には、顔が2つ。
金髪青目のアニメ顔とピンク髪赤目のアニメ顔。
「あっ、起きた。姫様、こいつどうす……」
「動くな! 首が飛ぶわよ?」
その言葉と同時に金髪青目は鋭い何かを俺の喉元に突きつけた。
そんなものどこで手に入れたのか、金髪青目の手には長槍のようなものが握られている。
アニメ顔がアニメみたいなことをしている。
俺は……死ぬのか? 嫌だヤダヤダヤダ。
いや、でも俺みたいな男が可愛い女の子に殺されるだけマシなのか?
いやいや、やっぱり駄目だ。俺はまだ死ねない。
俺はちらっと自分の手元を見る。
だって、俺は……この春巻きを食べるまでは死ねないんだ。
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