「俺たちのつらく、切ない過去を伝えるために……
デジタルという魔法がある」
「過去を伝えることと、未来を作ることは……
同じなんだ」
ビデオゲーム『METAL GEAR SOLID2』終盤にて『2』主人公・雷電に『1』主人公ソリッド・スネークが語ったこの旨が思い出されました。
『MGS2』ゲーム中で描かれるのは
「デジタル技術の発展によりいつの、どこの情報でも、万人が容易に手に入れられる『情報化社会』では
〝様々な理由で生まれるウソの情報もいつまでもヒトを欺き続ける、
それは時に生命の継承を危うくすることにも等しい危機を招きかねない〟。
夥しい情報の渦巻く世界にあっていったいナニが本当に正しいことなのか。
みなが自覚的に見定め続け、そして正しいことを伝えてゆく姿勢がこれから求められる」
……という内容です。
昔ばなしのひとつと言える当作でも
「情報を正しく伝えることの難しさと、語る者の責任の重さ、また正しく伝えられぬ無念」
というテーマにブチ当たった、そんな格好でした。
いま一度、
「いま観て/聴いているソレは正しいことか」、
「いま語ろうとするソレは正しいことか」。
改めて自ら自覚的に向き合わねばならない。
改めてそう突きつけられました。
酒呑童子と源頼光。
よく知られる鬼退治の伝承の裏に、もし、語られていない真実があったとしたら——。
村の子どもたちに、ひとりの老人が語り始める。
それは、人を愛した優しい鬼姫と、討伐を命じられた源頼光との「約束」の物語。
恐ろしい鬼として知られる酒呑童子を、人を愛する鬼姫として描く。その着想に、まず惹かれました。
そして読み進めるほどに、登場人物それぞれの想いや、背負うものが胸に迫ってきます。
言葉にできない想いがこぼれる場面や、それぞれの気持ちが交錯する描写が本当に素晴らしく、何度も胸を打たれました。
よく知る伝承と重なることで、「本当はこんな出来事があったのかもしれない」と思えるほどの説得力があります。
何が真実として語られ、何が語られずに残るのか。誰かの想いは、長い時の中でどう受け継がれていくのか。
そんなことまで考えさせられる、深い物語でした。
そして、ぜひ後日譚まで読んでいただきたいです。
私は鳥肌が立ち、読み終えてもしばらく余韻から抜け出せませんでした。
短い物語の中に、これほどの熱さと切なさが込められているとは……。
歴史や伝承をもとにした物語が好きな方、登場人物の想いに心を動かされ、深い余韻に浸りたい方におすすめです。
魂が震える名作です。ぜひ、最後まで味わってみてください!✨
酒呑童子といえば史上最強の鬼、というイメージを踏まえつつ、「伝承の裏にもう一つの真実があった」という前提を立てる構成がいい。源頼光の鬼退治という有名な逸話を、剣戟だけでなく人と鬼の間に結ばれた「約束」の物語として再解釈する着眼点に好感を持った。
レビューで繰り返し言及されている「この物語を語り継ぐ者は誰なのか」という謎が、全6話・4,827文字というコンパクトな構成の中で最後まで読者を引き止める仕掛けになっている。歴史の正史として残った「鬼退治」という建前の裏に、語られなかった優しさと悲しみがあった、という構造は、表向きの物語と内側の真実のずれを描く著者らしい手法だと感じた。
音楽まで含めて世界を届ける、という制作姿勢も含め、伝承そのものを語り直す行為への誠実さが伝わる一作。
この作品でまず驚かされるのは、物語そのものだけではなく、動画や音楽まで含めて世界を届けようとするクリエイター魂です。
源頼光と酒呑童子という有名な題材を、「悪しき鬼を討つ英雄譚」ではなく、人を愛した鬼姫と、討ちたくなかった武人の約束の物語として描いているのがとても印象的でした。
鬼姫の優しさ、頼光の葛藤、金時が語り継ごうとする想い。
短い中に、伝承の裏側にあったかもしれない祈りや悲しみが込められていて、胸に残ります。
そしてエンディングの歌まで含めて味わうと、これはもう読むだけの物語ではなく、五感で感じる作品だと思いました。
最後の音楽には、思わずホロリときます。
文章、映像、音楽。
すべてでひとつの世界を作ろうとしているところが本当にすごいです。
クリエイターとしての熱量を強く感じましたし、私もぜひ参考にさせていただきたいと思いました。