アドベントカレンダーの企画に乗る形で投稿されていた連作で、2022年から短編や番外編などを挟みつつ、この2025年の作品をもって完結となった模様です。
この作者さんの作品に「沫たつ時波の物語」という大きな世界観がありまして、栞のシリーズもこの世界観のなかのお話になります。
世界の全ての要素それぞれごとに魔女や聖人、竜や妖精や魔術師がいて、事象をつかさどり、その力を失って滅びたり、新たな力を得て生まれたりを繰り返す壮大なファンタジーで、独特の空気感はとても幻想的。
それぞれの物語は独立しているのでどれから読んでも良いけれど、この栞シリーズに関しては時系列で追いかけることをお薦めしたいです。世界観も順番に読んでいるうちに気づけば理解できている感じでしょうか。
全ての森の事象をつかさどる強大な魔女、森の魔女。その魔女は森ある限り続く長い寿命を持ち、それに対して人間の一生はほんの一瞬。だけどそんな魔女の物語に登場しうる存在になろうとする人間の男、それが夜の魔術師です。
本来なら魔女のような存在は、一介の人間など歯牙にもかけないのですが、この夜の魔術師はもうあらゆる手を使って魔女の興味を惹いていきます。なお読者の興味も惹いていくとんでもない男でもあります。すき。
作品を通して描写される風景もとんでもなく美しく、メルヘンチックでもあるしロマンチックでもあるし。人間の感性とはかけ離れた人外たちの残酷さとか、風刺めいた部分は古い西洋の童話のようでもあり。
森の魔女と夜の魔術師の祝祭の勝負にかこつけたやり取りと距離感を、このファンタジックな世界の中で味えます。
ひとつひとつの言葉の意味を理解しながら読むというより、感覚的に雰囲気を味わいながら読むタイプのお話かもしれません。
そんな物語の終着点が、この作品。森の魔女と夜の魔術師の関係がどのように決着したか。その最高のフィナーレをぜひ堪能してほしいです。