第37話 例えば肉があって、海賊は肉で宴をするけど、領主は肉を分配する!

「「「「ジャーク王!我らモコターン、御身に忠誠を誓います!!!」」」」


馬鹿共が。


やはり、言っちゃ悪いが「半人(ハーフリング)」だな。身体の大きさだけじゃなく、脳味噌の量まで人間様の半分ってか?


こんな程度のパフォーマンスに感動しちゃってまあ。


確かに、金はかかったさ。


クジラを急遽、魔導列車で輸送!中小企業一つが余裕で傾く大金が浪費されたとも。


だが、俺の、今の財力ならば。


こんな程度、大したもんではないのだ。


こいつらが恐れたのって、つまりは、俺の「底知れなさ」だろう?


こいつらは、普段は、馬賊だと、街道に湧くモンスターの一種だと……、人々やプレイヤーからすれば単なる「敵キャラ」であると、背景情報も見ずに切り捨てられるだけの存在だ。


それが、急に、俺に真正面から見られて、その存在を知られ、どんな存在かを把握されたと。


そう思い込んで、恐怖したんだろう。


だが実際のところ、俺もモコターンについてなんて、殆ど知らない。


知っているフリができる程度の情報を集めただけだ。


例えるならば。


あらかじめ、レストランで「このワインを出してくれ」と言っておいてから、デートで女の子を連れてきてワインを注文して、「おっ、このワインは〇〇産のワインだね!」とカッコつけた!みたいな、そんな程度の話。つまりは「トリック」でしかない。


だがこんな程度の手品も、この世界の奴らはやらないからな。


魔族共も同じだ。


俺が表面上理解を示したフリをしてやっただけで、皆面白いくらいに尻尾を振ってきやがった。


警戒心ってもんがないんだよ、こいつらには。


ま、周りみんなに虐められているから、ちょっと優しくしてきたギャルに依存しちゃうオタク君……、みたいな話かね?


俺から言わせりゃ「お笑い」の一言だが、本人達はこれでも必死で大真面目なんだろうな。


とにかく、間抜け共は俺にいたく「感服」して、頭を下げてきた。


それを俺は、いかにも、「鷹揚な君主ですよ」と言った態度で受け入れる。「忠誠をアリガトウ!」っつってな!


……モコターン共が俺に逆らうことは、もうないだろう。


俺が上から押し付ける「法律」と言う名の掟も、平気な顔で受け入れた。内容の精査も殆どせずに、だ。


問題は何もない!




「ジャーク王よ、我らモコターンの弓技を見てくれ!」


宴の席。


モコターンが来てからもう十日も経ったが、まだ宴をしている。


どうやら、今年の冬が終わるまでこいつらはここに居座るつもりらしい。


それならそれで良い。


モコターンは、老いた人は捨てられる……まあ姥捨山みたいなことをやる部族なので、その捨てる老人や、訳ありの女子供を受け取り、この街で暮らさせることにした。


老人も意外と馬鹿にならず、むしろ、老人の方が労働能力は高かったりする。


近眼や腰痛、歯抜けくらいは、ワルバッド辺境伯領脅威の技術力でなんとかなるからな。そもそも、「回復魔法」がある世界な訳だから、悪さをしようと思えば結構無茶できちゃう訳で。


それにアレだ、モコターンは生産を軽視……と言うか、遊牧民故に重視できず、家内で糸紡ぎや布織りをやる女や老人は「いくらでも捨てられる存在」と考えているのだ。


そこんところもまあ、草原に出る強いモンスターと戦ったり、氏族同士で争い合ったり、街人と戦うことや略奪相手の抵抗を受けたりと、武力を必要とされる場面の方がどうしても多くなってしまうので、戦士第一生産者第二となってしまうのは仕方ないかもだが。


まあとにかく、そういう余った人達を受け取り、この街の工場で糸紡ぎや布織りをやらせる!と。


そういう話だな。


男達は兵隊として動員する他、モンスター退治をやらせる。


そう、モンスター。


この世界はファンタジーなので、そういう存在がちゃんと居るのだ。


そうじゃなくても、狼とかそういうのは多いし、街の外は危険でいっぱい!


そんな猛獣やモンスターの数を減らしてくれるだけでも、大助かりだ。


それに、機関車の線路にイタズラをするモンスターも少なくないし、線路上でモンスターが寝ている!なんてこともある。


それの排除を、モコターン共にはやってもらうこととした。つまりは、線路警備だな。


っと、まあ、モコターンは遊牧のついでに未開拓の草原のモンスター退治や、こちら側の警備をやらせて、得た素材を買い取ったり、賃金を払ってやったりという形式を作った。


賃金なんていくら払っても良いんだよ。こいつらが持っている金は、全部俺から何かを買うために使われるんだからな。


また、未開拓領域にも鉄道を伸ばすのだが、その線路にモンスター等の立ち入りがあった場合、それを退治しろとも命じておいた。


全て全く、完全に問題ない。


勝ったな!ガハハ!


そう言って俺は、モコターン達の弓パフォーマンス……流鏑馬みたいなのを観ながら、酒を飲んだ。最近作っている果実酒の類をだ。んー、シードルかなこれは?中々いけるぜ。


それに、モコターン達の技術は確かだ。見世物にするだけはある。


まず、モコターン達は、草原に適した細身ながらもスタミナとスピードに優れた種類の馬に乗る。


この種の馬は、名前をスーホンと言い、遠くに早く走れるが、積載量が少ない。


この世界の騎士達が乗るのは、デストリエという、大きくて積載量が多い馬だ。プレートアーマーを着込んで乗るとなると、大きくて頑丈で、荷重に耐えられる「軍馬」に乗るのが普通。


だがモコターン達は、超軽装の射撃騎兵なのだ。


モコターン達はハーフリング、成人男性の半分程度の重さしかない。


それが、軽い石材を加工した軽量の部分鎧と、短弓を持って素早く駆けてきて……、すれ違いざまに毒矢を浴びせてくる。


まあそりゃ、強い。


見たところ、短弓……。ありゃ、魔法の武器っぽいな。


弓の癖に連射をしている。一秒に二、三回は射撃できるみたいだな。


ううん……、かなり嬉しい戦力だぞ、これは。


平原でのぶつかり合いでは、何も考えずにこいつらを放流するだけで、敵陣は大混乱だろうな。


俺は満足し、頷いた。


……ん?




「ヤアヤアヤア!戦でござるか?!戦でござろう!!!拙者と、拙者と戦えええええええ!!!!!!」




うわ、なんか来たぞ。

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