第30話 oh〜 3years after 三年後の……。

スターライト子爵との戦争から、三年。


俺は、大陸初の「機関車」と「エイビルベルグ駅」の落成式を開いていた。


ずらりと並ぶ、野次馬市民。


人間が最多だが、仕事中のハーピィやオーク、ゴブリンにワーウルフなどもいる。


そいつらの目の前で、俺はスピーチをした。


「ワルバッド辺境伯領民の諸君!ジャーク・ワルバッド辺境伯だ!……本日、我が領地の革命的な輸送システム……乗り物をお見せしよう!」


バッ、と。


機関車にかけられた布が剥がれる。


「「「「おお」」」」


ふふふ、これは「おお」だろ?


地球のそれとは違い、黒光りではなく、薄く緑味のかかった金属ボディ。これは、オークの金属、「オークメタル」製である証。


それに煙突と、カウキャッチャーと呼ばれる尖ったバンパーのようなもの。丸い先端に、金色の管。


体格のいい亜人が乗るからか、地球のそれと比べて大きさは倍近く。


そう、これが……。


「———『魔導列車』だ!」


「「「「うおおおおおお!!!!」」」」


……みなさん、空気を読んで歓声を上げてくれているが、もう既にテスト走行とかはずっとやってたから、皆知ってるんだよね。


それでもちゃんとテンションを上げる市民達はえらいっ!エンタメの何たるかを分かっているよね。


「魔導列車は、諸君らの生活と共にある!この魔導列車は、たったの一時間で、エイビルベルグからイクナインまで移動する!千人のオークと、千袋の麦の詰まった袋を載せてだ!」


お……、ダークエルフやラミアみたいなインテリの顔色が変わったな。


ヤバさに気づいたか。


これは、世界を変える技術だ、とな。


「諸君ら市民も利用してくれ、金は取るがな!だが、エイビルベルグから二日歩いてイクナインに行くよりも、この魔導列車を使った方が確実に安いぞ!二日分の路銀に、護衛を雇い、武器を持ち歩く必要はもうない!」


そう言われると、間抜けな一般市民共も喜ぶ。


一般市民は、「安くなる」って言葉が大好きだからな。


かつては、削っちゃいけない公費を削った党が政権をとっていたが、そんな奴らを与党にしちゃうくらいに民衆とはアホなのだ。「安くなる!」と言えば、親の仇にも股を開くんじゃないっすかね?


「もっと言おうか?南部の港町ダーミッドは歩いて十日だが、魔導列車なら四時間だ!軽く氷魔法を使えば、このエイビルベルグで海の魚も楽しめる!オークの山ことマッシブ山までは魔導列車で一時間!鉄を運ぶ手間が減り、鉄製品は安くなる!山の果実も食べられるぞ!鉱山の街アートロまでは五時間!出稼ぎした息子や夫に簡単に会えるぞ!」


歓声は更に大きくなる。


「この魔導列車は、一日四十本、毎日休まずに運行する!乗るには、一駅分で3シルバー(千円程度)だ!全ての民に解放するぞ!」


歓声は最高潮。


ここらで終わっておこうか。


俺はそのまま、歓声を背に浴びながら引っ込んだ。


そして……。


大きな産声、鉄の叫び。


汽笛を上げて、ピストンが動く。


煙突から煙が出て……。


魔導列車は動き出した。


そのまま俺は、この魔導列車に乗って、魔導列車の乗り心地を確かめると共に、辺境伯領各地に顔を出し、「領主である俺が魔導列車に乗っているんだから安全ですよ」とアピールする。


見慣れない、鉄の乗り物!山暮らしの蛮族である亜人共はビクビク怯えてらあな。


だからそこで、一番偉い人たる俺が率先して列車に乗ることで安全アピールと宣伝になる訳よ。


あ、因みに、俺が乗っているのは貴族用の高級車両な。


高級じゃない車両は寝室が共用だったり、食堂車のメニューが貧弱だったりする。


そうそう、食堂車。


懐かしのアレだな。


……いや、食堂車を「懐かしのアレ」呼ばわりするのって相当なおっさんか鉄オタだけだよな。歳がばれちまう、やばいやばい。


まあでもその、大したもんは出してないよ。


基本的にワンプレート。メインディッシュとサラダとパン、後スープくらいのもん。


これはね、サラダが売りだね。


鉄道による流通革命の証拠として、新鮮な生野菜のサラダ!海魚のソテー!


後は蒸気機関の冷却器を魔法でアレをアレして作ったら冷凍庫ができたので、アイスキャンディとかも作って売っている。新名物だぜ!


やっぱほら、バカ金持ちは意味のわからん事大好きでしょ?


列車の窓から山を見ながら、海で今朝とれたての美味しいお魚のソテーを食べて、別の山で獲れたブドウのワインを〜!みたいな。


そういう金持ちワクワクセットもこれからどんどんやっていくぞ!




そして……、次。


駅の隣で、もう一つの落成式も行う。


「ワルバッド辺境伯銀行です!!!!」


そう、銀行だった。


あのさあ……、もうさ、各地に工場を建てて物資の大量生産を始めて、列車ができて物流に革命が起きたらさあ。


みんな儲かってお金持ってるじゃん?


でも、手元に置いとくと危ないから預けたいじゃん?


この儲けを使って新しい事業やりたい人もいるじゃん?


俺としても金を腐らせとくのはアレだから新規事業に投資とかして経済を回したいじゃん?


もう……、そりゃ……、銀行だろ。


そして、銀行の隣で……。


「ワルバッド辺境伯電報通信局です!!!!」


うん……、うん。


銀行ができるじゃん?


お金のやり取りは頻繁に起きるけど、その度に偉い人が移動してたら大変じゃん?


情報だけを素早くやり取りしたら商業が円滑に進むじゃん?


もう……、電報だよ。


なんだろう、これは。


なんで俺はこのファンタジー世界で、西部開拓時代のアメリカみたいな街を作ってるんだ……?

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