第27話 勝者だけが正義だ

二話更新しました。


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シルヴィア・スターライト。


ふむ、確かに、見た目は最高だ。


殺すのが正直、メチャクチャ惜しい。


マジな話、殺したくはない。


めっちゃ可愛いんだもん。


可愛い女の子は宝だよ、いやほんとに。男の子もね。


殺すのは惜しい、めっちゃ惜しい。


「……どうして?」


「んー?」


「どうして、こんなことするの?」


「それはお前の親父が俺を殺そうとしたからだよー?俺は領主様でさあ、自分を殺そうとして来た奴の娘とか、許してやれないんだわ」


「だって、お父様は……、貴方が悪いことをしたって」


「悪いことを?ダークエルフを受け入れたことがか?」


「そうよ……。だって、ダークエルフは、お母様を……」


「ふーん……。でもさあ、例えばお前の他の親戚はどうなの?どうして死んだ?」


「え……?ええと、お祖父様は病気で亡くなられて、ひいお祖父様は戦場で……」


「戦場で誰に殺されたのかな?」


「敵の軍隊だと聞いていますけど……」


「敵の軍隊!じゃあそれってさ、人間だよね?人間の軍隊に殺されるのは良くて、ダークエルフに殺されたのはなんで許せないの?」


「なんでっ……て、それは……、それ、は……」


痛む脇腹を抑えて、シルヴィアは考える。


へえ、考えるのか。


考える頭があるのか、この程度の年頃のガキが。


やっぱり、原作キャラってすげえなあ。賢いんだ。


「……ダークエルフは、人間じゃ、ない、から?」


「人間じゃないと、どうして人間を殺しちゃダメなんですか?」


「えと……、そ、そうだ!死霊術!ダークエルフは死霊術という、死者を操る魔法を使うのです!」


「んー、なんで死霊術を使っちゃダメなの?」


「ほ、法律で決まっているから!」


「その法律は人間の法律じゃないの?ダークエルフの意見は聞いてないよね?それなのに、人間が勝手に決めた法律に従わないダークエルフは『ワルモノ』なの?ダークエルフは意見を聞いてもらってないのに?」


「それは、それは……!」


「結局さあ、こう言いたい訳でしょ?『ダークエルフはワルモノだから、水も碌に手に入らない汚い沼地で、泥に塗れて死んでろ』って」


「そ、そんなことは……!」


「君みたいなのがよく言う『正義』ってのは、『君達にとって都合が良い状態』のことだよね。で、俺みたいなのは、『君達にとって都合が悪い存在』だから、君達は俺達を『ワルモノ』と呼んで、殺しにくる」


「そ、それは、だって、だって!」


「世の中にはさぁ、居るんだよ。俺みたいな、『争いの世界』の中で生きることが心地いい奴らがさ。他人を踏みつけてでも上に行って、偉くなりたい奴らがさあ!……俺みたいなのは、君達の思う、『守るべき皆』の中に入れてもらえないのはどうしてなのかな〜?」


「だって、悪いことを、悪いことを、するんだって、お父様が!」


「もちろん、俺みたいな悪の勢力は、君達『正義』の人達ほど優しい社会は作れないさ。困っている人を助けることもしない。……けれど、個人で人助けをするのならばそれもまた自由だし、力や才能があるなら上に立てる。女でも、子供でも、それこそダークエルフやオークでも。俺は優しくないが、平等だよ」


「あ、ああ……!」


「だから……、そう。俺にとっては……、お前らこそが『ワルモノ』なんだよ♡」


「あ、あああ!あああああ!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!!」


お、良い絶望顔♡


人の心を折るのはこれだからやめらんねえわ。


俺は片手に、闇の刃を創り出す。


ガキ一人の首を刎ねるくらいなら簡単な、鋭い刃だ。


「じゃあ、シルヴィアちゃん。俺にとっての『ワルモノ』さん?俺に倒されてくれ、俺の街の平和のためにな!」


「は、い……!お、父様の、分までっ!お、お詫び、お詫びします!っ、う、うえええええん!!!」




「あ、旦那、頼まれていたものが……。あー……、取り込み中かい?」




んん……、やっぱり原作キャラだな。


まるで、「死ぬ運命にない」みたいだ。


いやあ、まさか、このタイミングでできるとはなあ……。


うーん、そうなってくると……、やっぱり利用する方向で行った方が良いのかなあ?


原作キャラが死なない運命にある!みたいな話なら、その不死性を利用して「悪さ」をした方がお得ではあるのよね。不死身の人間とか最高の資源だもんげ。


いやでも、スターライト子爵も原作に出ていたような気がするし、「原作に関係するならば、特定条件を満たすまでは逆に何やっても死なない!」みたいな某破壊魔的オモシロタイムパラドックス状況ではないはず。


……うん、決めた。


『実験』をしよう。


「早速使うぞ、クルエル」


「このガキにかい?酷いことするねぇ?」


「ああ、そうだな。だが、『正義』の有限性を俺は見てみたくなった」


クルエルは、魔法で熱した焼印を、シルヴィアに翳す。


「ひっ!」


小さな悲鳴を他所に、俺は説明をし、回復魔法で腹を治してやる。


「これはな、呪いだ。『お前を誰もが愛さなくなる』、そんな呪いだ」


そう、今回作らせたのは、その本人を起点に「他人に作用する」呪印。


刻まれたものを誰も愛さなくなるとか、刻まれたものを誰もが嫌うとか、そういうもの。


「え……、そ、そんな!やだっ!」


「『ワルモノ』はさ、誰からも愛されず、助けられず、守られないんだよ。だからワルモノになったんだ!などと擁護する訳じゃあないんだが……、君はこれから、ワルモノの世界で生きてみろ。とりあえず、十年間。それでもワルモノにならなかったら……」


「な、ならな、かったら?」


「君の父親、スターライト子爵の名誉を回復させてやろう。俺が奸計によって殺したのだと、街の全てに公表しよう」


「……分かり、ました。呪いを、受けます」


「ああ、見せてくれよ、正義の味方。寒い冬の日の夜、裏路地でウジの湧いた残飯を食いながら、表通りを歩く人間達を見て……、心が腐らずに正義を名乗れるかを!そんな状況でも、人助けなどと抜かせるかを!」




「……良かったのかい、旦那?」


「え?何が?」


「スターライト子爵の名誉回復だよ。そんなことをすれば……」


「ははは!ダークエルフは長生きだからそう思うだけだってばよ!」


「……つまり?」


「人間はな、十年前のことなんて、忘れちまうんだよ。仮に、十年前に都合が悪いことが起きていても、今を楽しく暮らせていれば、人間はこう言うのさ……」




———「過ぎたことはもう良いじゃないか」ってな!

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