第25話 胸に付けてるマークは「呪印」

ところでみんなは、インフルに罹ってぶっ倒れたことはあるかな?


まあコロナでもなんでも良いけど……、人間、40℃以上の熱が出たら、まともに立ってらんねえのだ。


精神力とかの話じゃねえ。


身体の機能として、そのレベルの高熱では意識をまともに保てないんだわ。


これは女子供でも、ムキムキマッチョメンでも変わらねえ。


あとは鞭打ちの話とかもよく聞くよな。


グラップラー格闘漫画で「鞭打」の話を聞いていれば、皮膚に対する痛みは筋肉をどんなに鍛えてもクッソ痛い、と。


尿管結石の話とかもある。


どんな痛みにも耐えてきた屈強な某映画俳優やら格闘家やらも、尿管結石だけは涙を流すほどに痛かった!とかさ。


つまりさあ、「痛み」とか「不調」とかってもんに、生物は勝てるような構造になってないんだよね。人間が痛みに勝てる訳ないだろ!


たまに、「勝てるんだな、これが!」みたいな超人がポップするから人間は面白くあるのだが、まあそんな超人は単なる外れ値でしかないからね。


一般論の話をしているのに極端な例外の話を持ち出してきて、例外がいるってことは断言はできない!みたいな詭弁を真面目な顔して言ってくる低知能猿は死んでいいぞ。


そして、最初にインフルの話したでしょ?


アレはさ、自分で自分を痛めつけてるのよね。


いや、そうでしょ?インフルエンザウイルスに人体を「痛くする」機能はなく、インフルエンザウイルスを痛めつけようとする人体の防衛機構が人体を痛めつけている訳だ。


というか、万物がそう。


外的要因で痛くなっているのではなく、我々人間、自身の神経が、「痛み」という危険信号を脳に送り込んでいるだけ……。


つまり、人体はその気になれば、自分自身を自分自身でとことんガッツリ苦しませることができちゃう訳だね。


そういう意味での、『呪印型隷属術式』……。


俺がダークエルフに命じて作らせたこれは、刑罰にバッチリのクソ呪いだった……。




「つまりさ、風邪ってのは、『風邪』という外的な存在にバチボコに殴られてそうなるもんじゃなく、自分の人体の免疫機構が『風邪』を追い出そうとして、あそこまで痛く苦しい思いを自分の身体にさせてる訳なのよ」


「……はい」


「だから、苦痛を与えるってのは、ちょっと身体の各所で炎症でも起こしてやれば良いだけで、とっても簡単な訳。別に、なんかすごい呪いの闇オーラ!的なのを出したりしないでも、脳内物質ちょっと狂わせるだけで、人間に地獄を見せることなんて簡単なの」


「はい」


「で、呪印を刻んで、その刻まれた本人の魔力で……ああ、一般人レベルのカスみたいな魔力でも、体調を終わらせるくらいの呪いはチョロいのね?だって風邪引くのに魔力いらないでしょ?魔力なくても頭痛で眠れなくなったりするでしょ?」


「……ああ、なんだか、分かってきました」


「この『隷属の呪印』は、契約を違反すると、刻まれた人自身の魔力を利用して、そいつの体調を終わらせる効果があるんだよね。どんな屈強な、それこそオークでも、手足が麻痺して呼吸もまともにできなくなるレベルの重病と同じ苦痛を受けて、耐えられる訳はないんだヨ♡」


従来の『隷属の呪術』というのは、強い魔力やそこそこ大きなリソースを使い、相手に首輪型などのマジックアイテムを装着し、儀式を行うことで、相手の意識を無視して好き勝手に操れる人形にしてしまう!みたいなアレだった。


洗脳、マインドコントロールってやつだな。TCGでよく見るアレだ。


だがこれは、強い魔力の持ち主を従えるには、より大きな魔力リソースが必要で、また、不安定でたまに術が壊れたりしてしまう、使いにくいものだった。


しかしそれでも……、そんなクソみたいな使い心地でも、人の意思を奪って自由に操るなどというのは非人道的だ!と。そういう訳だから、「禁術」とされ、今ではなんかそういう邪教徒とか、違法奴隷売買者、国家の裏組織とかしか使わない……。


こんなもの、便利ではあるが、文官とか木っ端犯罪者共に一々使ってたらお財布壊れちゃ〜う!ので、俺がダークエルフ共に作らせたのが、これ。


『隷属の呪印』って訳だな。


というかもう、機能的には、『隷属の呪術』の要素がほぼなく、正確には『懲罰の呪印』というべきでは?と思ったのだが、発動プロセスに奴隷自身の自己認識を利用する点がほぼオリジナルの『隷属の呪術』と同じだから、ダークエルフ的には、新規性のある別術式とは認めたくないらしいよ。


プライドの高い研究者肌の人間からすると、既存概念の組み合わせで作られた「製品」は、自分達が生み出した「発明」ではないから誇れない!みたいな話らしい。


まあ、俺からすれば、使えりゃなんでも良いんだがな。


そんな訳なので、今後は犯罪者には、この『隷属の呪術』を焼印で入れることに。


これがあると、街の法律に違反した時点で、全身が一瞬にして立っていられないほどの重病や大怪我と同じ状態になり、何にもできなくなる&クソほど苦しむのだ。そしてコストは、本来の術の百分の一以下!安い!


焼印のパターンでこの重病化状態発生のパターンはどうにでもできて、その気になれば、「食事をすれば重病化!」「寝ると重病化!」みたいな、非人道的な設定も可能だ!


真っ当に使うんなら、乱暴者のお友達には「戦ったら重病化!」、盗み癖のあるお友達には「盗んだら重病化!」みたいな感じかね。


「なるほど……。ご主人様にしては、かなり真っ当な刑罰の与え方かと。牢屋に閉じ込めておくのもタダではありませんし、ならば、罪を犯せば苦しい思いをする呪印を刻む方がよい、と」


「ああ!」


……因みに、ちゃんと欠陥もある。


これ、一度呪印を刻むと、解除する方法がその部分の皮を剥ぐしかないってことな。


だから、皮を剥ごうとしたら死ぬようなシステムを作ってあるのだが。ほら、あれだよ、ベアラーの印みたいな感じで、下手に弄ると毒が漏れて死ぬ!みたいな……。


あと融通も効かない。「暴力を振るったら重病化!」と設定したら、正当防衛とか、モンスターに襲われた時とかでも発動する。


その辺りは後々暇な時にでも改良しよう。とりあえずは……、ええやろ……!


んで、後さ。


これ、「サボったら重病化!」って設定にしたら、最高速度でディストピア作れるね。


更生できないレベルのカスは、この「サボったら重病化!」の呪印を刻んで、鉱山にぶち込んじゃおうねえ……♡


結局さあ、統治の難しいところって、下の奴らが言うことを聞かないところなんだよ。


どんだけキツく言っても、罰を与えても、絶対必ずルール破るバカがいつもいるのが社会ってもんでさ。


例えば、ニートだの生活保護だのなんだのって奴らだな。


ああいや、もちろん、現代社会でのニートや生活保護受給者をバカにしている訳じゃない。むしろ、大変素晴らしいことだと思っているぞ俺は。


何せ、会社で使えないゴミクズ共が、チンカスみたいな額の捨て扶持で、死ぬまでパチンコだ酒だをなりながら大人しく社会に出ないでいてくれるんだからな!


三十代四十代になってもまともに働いたことがない欠陥人間がノコノコ社会に出てきて、会社に介護してもらおうだなんてえのは迷惑極まりないからな。そのままじっとしておいてくれ。


……が、このナーロッパにおいては、それは許されない。


福祉なんてもんはねえからな!そんなことをやるリソースはない!この世界でニートやられるとマジで邪魔!もう殺すしかないよ〜!


なので、そんな本当に使えねえカスを、この呪印で操り、死ぬまで使い潰せると思うと……!


「胸がキュンとしちゃうんだなあ……♡」


「は、はあ……?どうなさいましたか?」


「呪印、サイコー!」

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