第13話 ゆりゆらら大事件

最早、理由なんて関係ないんだよな。意味があるのは行動だよ。


なんかよく、「法律」ってもんを分かってない人間は感情で法を捻じ曲げようとするけどさ、それと一緒だよなあこれ。


詐欺でオッサンから大金パチったクソアマが、「騙されるおぢが悪いんだョ……?」みたいなイキリ発言してたら「厳罰に処せ!」でしょ?


逆に、介護疲れでテメェの親を殺した中年には、「悪いのは国!減刑してやれ!」でしょ?


もちろん、情状酌量って言葉は存在するが、罪には決まった罰を与えるのが法律ってもんだ。


どんなド悪人でも、聖人君主でも、同じ罪を犯したなら同じ罰を与える。そういうもん。


誰がやったか?とか、何でやったか?とか、そんなもんは関係ねえ。


つまり、「ダークエルフを呼び入れた邪悪な領主を問いただす!」みたいなご立派ァ!な志(笑)をお持ちでも、やってることは「武力侵攻」だから、それに対しては毅然とした態度で殴り返しますよ〜っつってんだよ。


そんで、安全保障上、侵略者に下手に出ない。テロリストとは交渉しない。


俺、何かおかしいこと言ってる?


「ですが、ダークエルフを引き入れたのは事実では?」


「だからぁ、そんなの関係ないんだって。動機の話じゃなくって、事実の話!どんな理由があっても、無断で他人の領地に兵士を連れて入り込んじゃ……ダメだろ!!!」


「確かにそうですが……、ダークエルフの話をされれば、『こちらが悪い』ということになりかねません。ご主人様の言う『理屈』は、正しいのですが、通じないのでは?」


「でも、バカ共に『なんで正義のボク達に攻撃してきたんですか?!』と言われた時に、テロリストと交渉はしない!と言い返せば、『理屈』は通るんだよ。圧倒的に叩きのめせば、理屈の通った方が勝ちだ」


大義名分……、とまでは言えないが、「名分」にはなるからな。そして、貴族の仕事の殆どはその名分や面子を守ることだ。


大義名分などないのさ!と頭にドクロのついたスーパーロボットを乗り回せる立場じゃないのよね、俺って。


「しかし……」


「先先代は、理屈が通っていないのに、圧倒的な武力で無理矢理他人に言うことを聞かせていた。だからダメだった。……今回攻めてきているスターライト子爵家も、昔は先先代の手下の一人だったと聞いているぞ?」


「手下……というのは正確ではないかと。この辺りの貴族は、多かれ少なかれ、先先代のキョアーク様に侵略され、略奪された経験がお有りです。その辺りの話をすると、復讐をされてもやむなしという感覚は……」


はあ、カスだなやっぱり。


別に、親として子世代に負債を残すのは〜みたいな話ではない。


だが、統治者としてそりゃダメでしょ。


自分さえ良ければどうだっていい!と言う思考は俺も完全同意だが、そりゃ個人の主義主張であって、仕事でやることじゃあねえんだわ。


例えば、学生時代に散々イジメやってたクソガキさんが大人になって、警察官や消防士になるのは全然良い。


良くないのは、警察官や消防士になったのに、仕事そっちのけで職場でイジメこくような「アホ」。こういうのが一番ダメ。


愛想がない人間でも良い、人間性の否定はしねえ。けど、接客業やってんのに愛想いい「フリ」もできねえ奴は、ぶっちゃけ「バカ」だろ?


そういう話をしてんのよ俺は。


俺は人間性はカスだが、領主としては上手くやってる。


しかし先先代は、人間性も領主としてもカス。それを武力で補っていた。


金勘定のわからない人間は、「補填できているんならいいじゃん」などと言うが、とんでもない。


赤字の補填は、将来的な利益を失った等しいからだ。


全ての荒くれ者共を抑えられるカリスマと武力があるのに、それを無駄遣いしたってことよね。そんだけの力があるなら、少し我慢してまともな主君を演じれば、バカな手下を制裁するためのエネルギーを外に向けて、もっと多くの土地や権利を得られたはずなのに。


だからバカアホ間抜けのカスだってんだよ。


まあ、済んだことはいい。もう居ない人間の悪口を言ったところで、オモシロギャグ以外にはならんしな。


で……、本題だが。


「知らねーーーよ、そんなん。先先代が勝手にやったことだろ、俺は知らん」


って話なんだよね。


おサヨク様が今時流行らんのと一緒だ。


貴方の先祖は戦争犯罪を〜、ってか?


知らねーんだよね、そんなもん。知ったことじゃない。


何で、顔も知らん馬鹿な先祖のやらかしを、今の世代である俺が詫びながら生きなきゃならないんだ?今時の子はみんなそう考えてるよ。


そもそもが馬鹿クセェ話なんだよな〜?そんな話をしたら、元寇ん時の詫びをモンゴルから貰ってねえだろ。イギリスなんか腹切らなきゃ許されなくない?というか欧州全域がどのツラ下げて?という感覚だろ。十字軍の謝罪と賠償はしたのか?


この世界でも同じ。歴史書に残ってないくらいの昔には、俺の先祖が今攻めてきている貴族の先祖にイジメられてたかもしれねーんだぞ?


結局は、自分の都合だろうがよ。


自分が殴りたい!というお気持ちを正当化させる為に、行為に対して「正義」だの「大義」だののラベルを貼るなってんだ。優良誤認だろ。


「こう言ったことは、『周りがどう思うか?』という話では?」


「それを言ったら、周りから嫌われまくっているウチが全てで不利になるだろ」


「だからと言って、ここで交渉の余地なく相手を叩きのめしてしまうと、それこそ今後に差し障りがあるのでは?」


「もう既に周りの全ての領地とうっすら敵対してるから、この段階で融和に舵を切ることはできないんだよなあ」


「……もう、戦うしかないのですね」


「ああ、そうだな。先先代と先代がボンクラ過ぎたせいで、俺は最初からクライマックスだ」


本来なら、メイの言う通りだ。


ウチがまともな領地なら、あっち側も攻めてこないし、攻めてくるにしても手順を踏むし、最初に話し合いもするはず。


だが、うちはご覧の通り、まともな貴族じゃない。


ギャンブルに大勝ちした山賊、その次は財産を食い潰す豚。そして今は、領地にダークエルフを受け入れたキチガイ。


まあそりゃ、交渉せずに殴った方が早いように見えるわなあ。


「……っと、こんな感じだ。じゃあ後は流れでヨロ」


「「「「はい!」」」」


そんなことを考えながら、今後の指示出しを終えた俺。


「まあほら、理論上はさ、攻められたからやり返さなきゃならない立場にある訳よ俺も。そんな訳だから、お前らも戦えよ〜?」


「「「「はい」」」」


「あ!そうそう、言い忘れてた。今までは俺の立場の話だったんだけど、ここらで俺の気持ちの方を話しておくぞ!」




「代替わりしてすぐ攻めてくるってことは、俺なら楽に殺せると思われたってことかよオイ????舐めやがってよぉ、皆殺しだクソボケがァ!!!!!!!!」

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