第11話 命歪め隊 〜ハッパ一枚あればいい〜

「これはこれは、閣下。いらっしゃるのなら、連絡を下されば……」


「よう、ノーマン。どんなもんだ?」


領都エイビルベルグの離れにある平地を開拓し作った、実験農場。


そこの新設された小屋に、ダークエルフのドルイド共が住んでいた……。


ん?元々この実験農場には、農奴共が居たはずだが……?


「オラっ!働けよ、猿共!」


「ひ、ひいっ!分かりました、ドルイド様!」


ああ、ドルイド達の小間使いにされてんなありゃ。


まあ良いか、所詮はいくらでも代わりのいる農奴。地位の低くていくらでも代わりのいる奴ら、略してちいかわに過ぎない。こいつらに任せておこう。


人権侵害?


はぁ〜……。


マジな話、人権云々ゴチャゴチャ騒ぐんなら、最低限の能力と知能は身につけてほしいんだわ。


統治者からすると、政治の「せ」の字も分からんのに、普選だから〜とか言ってゴチャゴチャ口出ししてくるアホ、殺してやりたいくらい邪魔だぞ?


こういう、ナーロッパ人民に政治参画させない理由のテンプレとして、「ナーロッパ人民は無学だから、政治参画できるレベルの学がない」ってはよく聞くが、日本だっておんなじよね。


選挙期間中にチンドン屋みたいに歌って踊って宣伝するポピュリスト政党に喜んで金出して投票するバカを見て、「どうしてこんなバカ共に参政権付与してんの?」と思ったことは一度や二度ではない。みんなそう思うだろ?


そうじゃなくても、この世界のノーミンとか、アフリカの田舎みたいな思考回路しかお持ちじゃねえぞ。


ボランティアで村に井戸を作ってやれば、それを解体して売り捌くような低脳カス猿がデフォの世界で、なーんで「人権」なんてものを考えて「優しい王様」を目指さなきゃならないんですかね?


とにかく、大衆は豚なので、家畜に神はいないので……、俺が決める。俺が導く。


そして俺は役得もある。頑張ってるんだもん、当然の権利だよな?


その俺が、はっきりと言ってやろう。


「農奴共はいじめても良いが、働けなくなるような怪我は負わせるなよ!鍬を振るしか能のないバカでも、使い道はいくらでもあるんだからな!」


……ってな。


「分かりました、領主様!よーし、領主様のお許しも出たぞ!おらっ、猿共!とっとと働け!」


「「「「ひいぃ〜〜〜!」」」」


これでよし。


……で、どれどれ?


畑は……、うん。


分かんねえや。


俺は人から富を搾り取る方法はよーく知っているんだが、土いじりはなーんもわからん。


パッと見では育っている感じだが?


「これはどうなんだ?ちゃんと実っているのか?」


「はい、こちら、この三ヶ月間で十世代以上入れ替えまして、毒が少なく育ちやすいものを作りました。これならば、この辺りの地域でも十分に育つと思われます」


ノーマン……ああ、ダークエルフのドルイドな。このにいちゃん……まあ見た目はにいちゃんだが年齢的にはおっさんらしいが、とにかくこいつが答える。


「ほう、トマトはいい感じか。こっちのスパイス類はどうだ?」


「この辺りは……、少し難しいですね。そもそもが、この辺りの土で育つものではないようでして。我々の魔法陣で無理矢理に育成していますが、もう少し時間がかかるかと。或いは、この地でも育つ近縁種と掛け合わせるなどが必要で……」


「なるほどなあ、じゃあ育たない奴は新大陸で育てるから、こっちでは優先度を下げて、奢侈品枠で維持だけしてもらえりゃあいいよ」


「了解しました。数量などは後ほど資料をまとめて提出致します」


他は……。


「家畜の方はどうだ?」


「はっ。ご指示をされました『ブロイラー』という種を作成中で、最近ある程度の形になってきたところです。我々も元々、死霊術を応用し、不毛の地である沼地で生きられる家畜や穀物を開発していたのですが……、飼料や肥料が十分に得られるという豊かな土地であれば、早く育つ大きな鶏程度、すぐに作成できます」


生物を『作成』ね。


生命倫理とやらの視点で見るとよろしくないのだろうが、普通のエルフや人間達から不毛の地に追い立てられて、その上で高い倫理観も保持しろってのはまあ無理っすよね。


それに、現代人だって生き物の品種改良をしているし、フォアグラの作り方とか普通に拷問だしな。


俺としたら儲かれば何でもいいんだが、動物愛護みたいなクソくだらんネガキャンをされたら全力で潰せるように体制を整える必要がありそうだ。


「大変結構。肉や卵、皮などが得られれば何でもいいから、動物はいくらでも苦しめていいぞ。但し、人間を材料にする時は報告をするように」


「何故でしょうか?人間も動物では?」


本当に分からない、みたいな顔をするダークエルフ達。そんなんだから不可触民扱いになるんだよね。


まあ構わんよ、お前らのガバガバ倫理観は俺が補って、上手く「使ってやる」からさ。


「人間を敵に回して団結されると厄介だと身をもって知っているはずだが?……実験用や製品加工用の人間が欲しい場合、稟議書を持ってこい。利益が出るプロジェクトならば、俺は『投資』を惜しまない」




うんうん、全てが上手くいっているな。


こう上手くいっていると、何か悪いことが起こりそうだ。


ただでさえこの世は中世。意味もなく喧嘩を売ってくるバカは多い。


そもそも、スウェーデンにある感じのストラテジーゲーム製作会社とか、あるいは、光り栄えている会社とかに脳を破壊されている人間はよく知っていることなのだが……、戦国乱世でシコシコ内政していると、殴られるのだ!


マジな話、自分で頑張って増やすよりも、ある所から奪う方が早いからな!


そうじゃなくても、うちは元々がガバガバ運営だったし、代替わりしたばっかりだから隙があるように見える。


「ご主人様!」


おっと……?


「どうした、メイ?」


「緊急事態です、隣領のスターライト子爵家が、サテライト男爵家とオービット男爵家の軍を引き連れて現れました!」


ほー。


舐めてくれちゃってんねぇ!


「代替わりした今なら犯れる!と思ったのかね?面白い、カウンターでぶん殴り返すぞ!」


「いえその……」


「んん?なんだ?」


「……ダークエルフを集めて悪事を為そうとしているワルバッド辺境伯を止める、と」


あー……?


何それ?俺が悪いってこと?




とりあえず、メイを引き連れて、屋敷に帰る。


すると屋敷には、デストラン将軍、ドクター・サイエン、クルエルと、幹部格が揃っていた。


あ、それとジジイもいるじゃん。


「ジジイじゃん、久しぶり」


「ふぉっふぉっふぉっ、久しぶりじゃのう、坊ちゃん。しかし、これで見納めかもしれんがのう」


この、俺を舐め腐ったジジイは、ローガン・ガイアと言う。


白髪に白髭の、なんか大物っぽいオーラを出した老害だが、実際大物。


伝説の戦士と謳われた先先代、キョアーク・ワルバッドの右腕だった男だ。


だが、死ぬべき時に死ねず、俺のようなバカガキの教育係をやらされたせいで、なんか捻くれてんだよなこのジジイ。


まあ気持ちは分かるが。


もう生きていてもやることはないんだろうな。俺がキレて「こいつ処刑しろ!」ってなったとしても、抵抗せずに絞首台に上がると思うよこのジジイ。


死に場所を失った死に損ない、ある意味で「無敵の人」な訳だから。


そんなジジイは、俺に教育はしたが、俺が悪いことをしても注意とかはしなかった。


その人に嫌われてでも、強く叱ったりとか、嗜めたりだとか、そう言うことをするのがまともな指導者のやること。


だがこのジジイは、俺がどうなろうと知ったことではないらしく、教えるべきことだけを教え、聞かれたことのみを答えて、それきりだった。


基本的には屋敷の図書館で本を読んでいるだけのジジイなのだが……?


「ご飯はもう食べたでしょうおじいちゃん?……ボケてないなら何の用だ?」


「ふぉっふぉっふぉっ。なあに、坊ちゃんが、あやつ……キョアークのクソボケ野郎でもやらなかった選択肢を選んだ故にの」


先先代でもやらなかったこと……?


ああ、ダークエルフの雇用か。


「どうじゃ、坊ちゃん?お前さんは、キョアークのクソボケカスよりも『上』なのかのう?」


そんなもんは決まっている。




「俺が『上』!!!!テメェらは死人も含めて、『下』だ!!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る