ゲームのような英雄譚

@Raata0505

第1話

 ー


 …


 いつもの夢を見て、太陽が空の真上にいるときに目が覚める。

 いつもの夢って言うのは、昔の出来事のこと。

 都合のいいように切り取って、いい夢のように見ているだけ、だと思う。

 正直大事なこと以外の記憶がないのだ。

 起きてフライパンを手に取る。

 卵を焼こうとするけど、昨日使い切ったのでもうない。


「…ベーコンだけ焼くか。」


 美味しそうな音が聞こえる。


 …

 つまんねぇ〜。

 夢の中みたいに仲間引き連れて冒険でもしてみてぇー。


 じゃあ行けばいいやん、冒険。


 フライパンを熱している火を止める。

 ぬるいベーコンを口に入れ、荷物をまとめる。


「美味っ!」


 一応身なりも整えてみる。

 気づいたら持っていたペンダントをつけ、拾ったダガーを装備する。

 出る前に鏡を見て、形見を持つのを忘れていたのに気づく。

 形見のゴーグルもつけると、お気に入りのマスクと相まって顔が見えなくなる。


「…まいっか!」


 なんとかなるっしょ!


「行ってきまーす!!」


 起きてから30分くらいのうちに決意を固めて、冒険に出ていく。

 このような行動力の速さは現世では「ADHD気質」と言うらしい。


 〜


 とりあえず近くの森に腕試しに来た。

 数体のゴブリンには会ったけど、単体ずつだったから余裕で勝利。


「このまま全モンスター倒しちゃったりして〜♪」


 そんな感じで余裕ぶっこいでたら聞いたことのないような声が聞こえてきた。

 まだあったことのないモンスターか?


 気を引き締めて声のする方に足を進める。

 少しすると声が近くなり、言っていることがわかってきた。

 人間だ、モンスターじゃない。


 ?『わぁー!!!!』


 悲鳴が聞こえてきた。

 この声の高さ、子どもじゃない!?

 森を進む足取りを早める。


 すこしすると、開けたところにでた。

 ゴブリンが三体で、何かを囲んで威嚇している。

 真ん中に子どもと…なんだあれ?

 わかんないけど子どもは助けないと!


 ゴブリンに向かってダガーを投げつける。

 ダガーは運良くゴブリンの胸元に刺さった。

 そのまま一体のゴブリンは消滅する。

 ダガーもその場に落ちる。


 あ、でもどーしよ、武器なくなっちゃった。


 …


 誰かぁー!助けてぇー!!


 そんなことを心の中で言うとペンダントが神々しく光り始めた。

 その後には体も浮き始め、訳わからん声も聞こえ始めた。


 ?『…ワシは神だ。』


 は?


 神『そなたがピンチだったのでな。神の力を分けてやる。好きな力を選ぶと良い。』


 疑わしく思いながらとりあえず力を選ぶ。

 剣士、魔法使い、僧侶、盗賊、アイドル、料理人。


「…これにする。」


 神『おっそうか。じゃあ、お主には盗賊の力をくれてやろう!その力を使い子どもを助けるのじゃ!』


 声が聞こえなくなると光が体を包む。

 徐々に光が落ち着き、体も地に近づき始める、そして気づく。

 手に新しいダガーを持っている。

 装備も戦いやすいものに変わっている。


「これならいける!」


 うちは残り二体のゴブリンのところに突っ込み、一体に手に持っていたダガーを刺してやった。

 その流れでさっき投げたダガーを拾いもう一体を斬りつける。

 二体のゴブリンは致命傷を負い、消滅してしまった。

 うちはゴブリンがいた地面を見下し、


「…ザコ乙w」


 死体撃ちまでしてやった。

 はいうちの完全勝利。


 子『おねーちゃん…。おにーちゃんが…。』


 子どもに話しかけられて我に返える。

 子どもの指差す方には人が倒れている。

 さっきわかんなかったの、人だったんだっ…!

 うちは少し恐怖した。

 これ、人間っ?

 ボロボロで、血だらけで、人に見えなかったから。


「っ!早くベッドに寝かせないと!!」


 うちは子どもをだっこ、怪我人をおんぶした。

 そして子どもの案内通りに森を進んだ。


 〜


 子どもを親に送り届けると、うちは怪我人のために宿を取り、ベッドに寝かせた。

 今は怪我人のためではなく、自分のためにもらったダガーでリンゴを剥いて起きるのを待っているところ。


「もう六個目なんだけど…」


 ムッシャ、ムッシャとリンゴを貪り食っていると。


 ?「…ン。…ここは?」


 怪我人が起きてきた。

 怪我人は不思議そうにあたりを見渡している。

 うちは怪我人に今までにあったことを見たままに話した。

 話し終えると怪我人は目を輝かせながら言ってきた。


 ?「僕もその神の力で君みたいな勇者になる!」


「そんなことできるのかわからん」


 神『できるともできるとも!好きなものを選ぶと良い!』


 うちの答えを聞くとペンダントが光り、話し始めた。

 しばらくして、ペンダントが落ち着くと怪我人の姿も変わっていた。

 傷が無くなった体に鎧をまとい、切れ味の良さそうな一本の剣を両手に持っている。


「…よかったね」


 ?「うん!ありがとう!!」


 元怪我人はお礼を言い終わっても、まだ何か言いたそうだ。


「…言いたいことがあるなら言えば?」


 ?「っ!あの、えっとぉ…。」


「うん。」


 ?「俺を!!仲間に入れてください!!!」


 …

 うーん。

 ザコっぽそうだから冒険の役には立たなそうだけど…。

 まぁ、仲間とわちゃわちゃしながら過ごすのも出てきた理由だし…。


「うん、いいよ。」


 そう返事すると元怪我人は嬉しそうに自己紹介をし始めた。


 ?「俺はるき!」


 るき「これからは男の俺が君を守るぜ!」


 信用ならんけどな。

 しばらくこっちが黙っていると、


 るき「君は?名前は?」


 な、名前?

 名前かぁ…。

 …

 あの勇者からとって。


「R。…ってことで。」


 るき「呼びづらいかららっぱで」


「は」


 るきはそう言うと手をこっちに出してきた。

 似たようにうちも手を出してみるとぎゅっと痛くないくらいの力を入れてきた。


 るき「握手!これからよろしく!!」


「…よろしく」


 新しい冒険が始まるのでした。


 ー

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