夜を彷徨(ゆ)く
夏乃緒玻璃
夜を彷徨(ゆ)く
やあ、またお会いしましたね。
実生活においては多分一度も言う事がない台詞でしょうから、なんとなく言ってみました。すみません。
こんな車椅子姿で失礼します。
夏に、車が突っ込んできまして。全治六か月です。
今でも痛みます。厄介ですね。
しかしまあ、今まで休みもほとんど無かったですからね。こういう振り返りの時間が出来たのは怪我のおかげですね。嬉しくはないですが。
さて。
猿の手、というのはご存知ですよね。
元々はイギリスの古典ホラーらしいのですが、いまや様々な物語に登場する呪いのアイテム。
使用者の願いを叶えてくれるステキなお猿さんの手。
ただし、使用者にとって不幸な形で。
例えば、お金が欲しい!と願えば大怪我をして保険金が降りる。
仕事が忙しすぎて、ゆっくり休みたい!と願えば車が突っ込んできて入院する羽目になる。
長距離通勤の時に疲れ果ててシルバーシートに座りたいなあなんて思った事もあったような。
あんなのも願ったうちに入るのでしょうかね。
おや、今は全部叶っている。
まだ保険金は降りて無いけど申請は済ませたし、休職して時間も出来、長距離通勤も無くなりました。
どこかで猿に願ってたんでしょうかね、私。
今日は、以前夜の街を彷徨ったお話をさせて頂きます。
彷徨ったというのは詩的表現ではなく、文字通り物理的に途方にくれた日々の話です。
今夏の交通事故で肉体的には一番危険な経験をしました。撥ね飛ばされながら空を見て、次に地面の砂粒まではっきり見ながら叩きつけられました。痛みって少し遅れて来るんですね。激痛に絶叫しました。
死がすぐ横に来たのをはっきり感じましたね。
でも、もしかしたら。
肉体ではなく精神的には、その後の方が辛かったのです。また歩けるようになるのかという恐怖。職場に戻れないのでは無いかという不安。いつまでこの痛みが続くのかという絶望。
今はこうして車椅子でお話できるまでに回復して、精神もだいぶ安定しましたよ。
でもその間はずっと、動かぬ体でベッドの中で生と死についてずっと考えていたものです。
そういう意味で、死に近かったのは、この時だったのかもしれないなと思うのです。
そしてその時、思い出したのですね。過去にも同じように心が死に近付いた時があり、そしてそれを記憶から追い出し忘却していた事を。
2014年の春、消費税が8%に上がった頃だったと思います。
私は一文無しみたいな有り様でした。今で言うなら「無一郎の無は無一文の無だよ!」という奴ですね。
違いますか、すみません。
ええと、もし私が意識せぬままに猿の手に何か願いをしてしまったのならば、多分この時の深夜の街で、だったかもしれません。そ
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自分の腕なら、どこで何をやっても大丈夫。
自分の能力なら、どこのどんな商材でも売れる。
そんな風に思い上がって脱サラした。
しかし気付けば周囲は敵だらけ。契約は取っても取ってもひっくり返され、資金繰りはすぐに悪化した。
結局、自分には経営の才能は無いのだと自覚しすぐに廃業した。
判断がもう少し遅かったら大きな借金を抱えていただろう。とりあえず、蓄えを全て吐き出して、一兵卒からやり直しである。
しかし脱サラ再就職となると中々に条件は厳しく、またゆっくり好条件の職場を探す余裕なども無かった。
大きな借金は作らなくて済んだが、細かい負債は少々残してしまったからだ。
春先に自分の立ち上げた営業所を完全に閉め、小さな営業会社へ再就職した。面白味の無く賃金も低めの代わりに、そこまでノルマのキツく無いルート営業の会社だった。
そして、その時点で収入は脱サラを決めた時点と比較すると五分の一程度になった。同棲していた彼女とも別れ、独り身だったから食べるだけなら問題無かった。
もう、そういうものだと諦めて、節約を極めた生活をすればよかったのかもしれない。
しかし当時の若くて愚かな自分は、手っ取り早く借金も返して、できれば元に近いグレードの生活に戻りたかった。体力にも能力にも自信がまだあった。
なので、昼は正社員で安月給で定時上がり。毎日ではないが夜にもう一つバイトを入れて稼ごう、などと考えた。
本当にその頃に闇バイトなんてものが無くて良かったと思う。その時の自分ならもしかするとウッカリと応募して泣いていたかもしれない。
「闇」では無いが「黒」だった。
元々、普通のサラリーマンが仕事を終える時間から始まり、不定期勤務でもOKなどという募集がマトモな筈は無かった。
すぐに、あれ、これはやばいぞと思って辞退した。
しかし当時のブラックバイトは、辞めると言ってもすぐには辞められず、結局その割の合わない深夜の「何でも屋的な派遣バイト」を一か月近くは続ける羽目になった。結局、サラリーマンなんて世間知らずで、彼らからすればいいカモだったのだろう。
毎日では無かったので、実際に駆り出されたのは10日くらいだったと思う。拒否権は無かった。
まあ、後から人に聞いた話では、私に振られた仕事はまだマシだったようだ。
もっとガテン系の体格をした人なんかであれば、ハンマーを持たされて廃屋の解体(真夜中に!素人が!)なんかをやらされる事もあったという。
私に振られた仕事は、当日欠勤した工場勤務者の穴埋めや、宅配業者が期日までに配りきれなかったチラシを指定区域に一軒一軒ポスティングする仕事等だった。
当時都内在住だった私が行かされた場所は、まず相模原。追浜自動車工場。千葉ニュータウン。川越。
それから横浜外人墓地付近。
都内から千葉埼玉神奈川って、どれだけの距離を移動させるのか、呆れてしまう。
どうやら私の様にすぐ「辞める」と宣言した者は、もう居なくなるのが確定なので、一切の気遣いはしない。遠隔地や山間部、観光地等のキツい場所にどんどん入れていく、という事らしい。
それにしても都内から遠い。
公共交通機関も無い真夜中に自腹。
逃げたりできない様に位置確認用のGPSを持たされていたとはいえ、いっそ現地に行かず労働基準局にでも駆け込んだ方がマシだったろう。
唯一、救いと言えるのは位置監視されているとはいえ、一人でやれるという事。
怖いお兄さんが真横で見張っていたりはしないだけまだ良い。
これもまあ経験。
こういう世界も知っておけば、きっと何か将来役に立つ事もあるかもしれない。
そう自分を慰めながら、帰路につく人の波の逆へ。
夕焼け小焼けのインストゥルメンタルが流れる商店街を抜けてゆく。
買い物客はこれからあたたかい家で楽しく団欒なのだろう。鰻、焼き鳥、カレー、惣菜の匂い。
灯油販売車から流れる「月の沙漠」のメロディが胸を締め付ける。金と銀の鞍の王子と姫はどこに消えてゆくのだろう。そして私はどこへ向かっているのだろう。
真夜中の遊園地。
歌や絵本、映画などで見かける幻想的な世界だが、いざ実際にそんな場所に行った事がある人はいないだろう。しかし、その時私が立ち尽くしていたのは、まさに人っ子一人いない相模の森の広大な公園の柵の前。
時間は深夜の2時少し前。
春だがもの凄く寒い。
柵の向こうに列車をかたどった遊具が見え、それでそこが遊園地だと知った。
当然、通行人など誰もいない。
私は、後部に広告チラシを2000枚以上括り付けた原付バイクを柵に横付けし、途方に暮れていた。
このチラシは、本来本職の宅配会社が明日までに何人かで配るべきものだが、キャンセルが出たのでその代行なのだという。
マネージャーの説明では、とても楽な仕事だという。普通なら一定範囲の全戸に投函するなどの指定があるが、今回は臨時請負なので、渡された地図の範囲内ならどこに投函してもよいのだとの事。
とにかくこの付近一帯に翌朝までに投函して在庫を0にしてこい、というのが請け負った仕事内容だった。
やった事のない仕事だが、正直舐めていた。足腰には自信があるし、1時間に500枚くらいのペースでやればその日のうちに終わるだろう、と。
報酬は一枚五円。
ガソリン代自腹でも一万以上にはなるし、うまくいけば翌朝、本業の方に出勤するまでに7時間くらい寝られる。はい、やりますと答える。
嵌められたと気付いたのは指定されたスタート地点に着いて地図をまじまじと見てから。
やたら緑色と茶色が多い。
山、湖畔、北里大学キャンパス、自然公園。
あれ。
これ、2500軒とか家、無いんじゃね。
マンション、団地、そんなものもほとんどない。
いくつかある小さな公団の様な場所は黒く塗り潰され、投函禁止と書いてある。
要は団地やマンション等の楽な場所は先に社員が車か何かで来て、ささっと投函して行ったのだろう。
そして誰もやりたがらない山林部を回したわけだ。
腹は立つが、GPSで行動を監視されている身。
とにかくやらなければならない。
それはもう意地になって必死に頑張る。
本業が終わった17時過ぎに出発してから、相模原市内に着いたのが18時頃。
しかし、そこから6時間近く休みなく作業をして、まだ500枚くらいしか配れていない。
家が無い。
少し配ってはバイクに戻り、次の住宅地へ。
しかし広い範囲に住宅が数軒、そんな地形ばかり。
疲労は溜まり、数は減らず、時間ばかり過ぎてゆく。
ラジオのオールナイト・ニッポンが静寂の闇の中での唯一の慰め。
地図を見る灯りさえ無い闇の中を、ひたすら彷徨う。肉体以上に精神の疲弊が大きかった。森や林の中に点在する家のポストに、大手財閥系の景気の良い広告チラシを入れていく。誰でも出来る簡単な、辛い作業だ。
皆があたたかい家の中で安らいでいるこんな時間に、なんで自分はこんな事をしているのか。
少し前までは外車に乗り、夜景の見えるベランダで彼女と乾杯していた自分が、なぜ今こんな事になっているのか。さまざまな感情が渦巻く。
しかし全ては自業自得だという事もわかっていた。
やがて彷徨いながら大きな公園の様なこの場所に辿り着いた。
せめて自販機や休める場所を、と思ったが何もなく、ただ柵の向こうを眺めれば遊具。
昼は子供達が乗り回すのだろう動物を形どった乗り物や、列車の車両。
その列車の先に伸びた線路の先は闇の中へ続いている。
それはまるで死の世界に続く道のように、禍々しく見えた。
そこには人工建造物があり、優しい顔の動物達の遊具もあった。にも関わらず、今しがた抜けてきた山林よりも強く闇を感じる場所だった。
何かに引っ張られるような感覚。あの闇の線路をずっと行けば、失われた安らぎが得られるのではないか。遊具で遊んだ子供の頃のように、悩みも苦しみもない世界にいけるのではないか。そんな馬鹿な考えが一瞬よぎる。
いままでずっと抑えて堪えて強がってきた自我が崩れそうな気がして、慌てて逃げる様にそこを後にした。
結局、その日は明け方まで作業を続け、なんとか1500枚くらいを配って時間切れ。
疲労困憊で事務所に戻ると、監視役が私の軌跡をチェックし無駄が多いなと嫌味を言う。
チラシの残った分を作業台に戻す様に言われる。
「大事に扱ってくれよ。私達はこの商材に愛情を注いでるんだからな」
紙の束よりも、苦労して働いてくれている人間に愛情を注いで欲しいものだ、と腹の中で舌を出す。
この人は私が事故に遭っても私自身には目もくれず、チラシの行方を心配するのだろう。
この日は10時間以上働いて七千五百円、そこからガソリン代を引く。すり減ったタイヤの消耗(バイクも自前)を考えたら下手したら赤字だったのではなかろうか。
夜はすっかり明けていた。結局一睡もしないまま本業の方に出勤する。
つまらない会社。以前の営業会社の、数分の一の給料しか出ない会社。
接待も競争もノルマもほぼ無い小さな会社。
だがまともだ。まだ人間のやる仕事だ。
まあ薄給のこの会社にも長くは居ないだろうが、いる間は真面目にやるさ。
夜を彷徨うのはもうたくさんだ。
出勤ラッシュの人波に揉まれながら、そこに人間の作った社会がある事にどこか安堵する。
その後の黒バイトも似た様なものだった。
追浜の自動車工場に行かされた時は、いきなり流れ作業のラインに入れられた。
前に中国人、後ろにはイラン人に挟まれ、彼らが処理した自動車のパーツに、保護液のような物を吹きつける作業だった。腕に持つ機材は重く、スピードも要求される重労働だ。少しでもミスをすると様々な外国語で罵倒される。そして、空調は無い。
汗だくで数時間の重作業。逃げる人の気持ちもわかる。私だってもう一日やれと言われたら絶対断わる。
翌日は全身筋肉痛で起き上がる事も困難だった。
休憩時間には少しでも涼を取るため、皆いっせいに外に出る。何十人もの作業員が埠頭で真夜中の海を見つめている光景は悲しく美しい。
遠くに見える東京湾の灯りが、伝奇譚にでてくる不知火のように見えた。
千葉ニュータウンと川越は、流石にバイクでは無理なのでレンタカーを使った。
相模原の時と同じで臨時のチラシ投函だったが、大型マンション等も多く作業は楽だった。
今はそうでもないのかもしれないが、この頃のニュータウンは成功している人達が住む場であった。住宅そのものは画一的で無機質と言われる事もあるが、最寄り駅やモールは発展しており、賑やかだ。
夜の仕事であろうとも、やはり人の営みのある場所は安心できた。
契約上の最後の夜は、横浜の外人墓地周辺だった。内容は複数枚束ねた各種広告チラシの投函。
こんな外交官だのヤクザだのの家がある地域を夜中に徘徊して大丈夫なのか。
いや大丈夫じゃないから、バイト最終日の私にいかせたのだろうな。
イタリア山公園近くからスタートし、フェリス女学園の前を通る。懐かしい。
営業マンだった頃、先輩と二人で来た事がある。
校内を歩くと何人かの女の子達がチラチラこっちを見ていた。
先輩とお互いに「俺を見てますね」「ばっか俺に決まってるだろ」などとやり取りした記憶が甦る。
その頃は年収は1000万超え。肩で風切る営業マンだったが、いまはどう見ても不審な真夜中の徘徊者だ。
港の見える丘公園には大きく綺麗なトイレもあり、休憩もしっかり取れた。難点は深夜だと別の意味で御休憩のカップルがそこらにいる事だ。
温かいコーヒーを自販機で買い、一息つく。
大佛次郎記念公園を抜けると、横浜港の夜景が広がる。昔はよく、彼女と車で来たものだ。別れる原因になった、くだらない喧嘩を思い出す。「やばい、会社に帰らないと」寝ぼけ眼でそう言った私に、彼女は激怒した。「帰る場所って会社なの?」。皮肉なことに、その帰るべき会社も、今はもう無い。
赤い靴の少女像が見える。
異人さんに連れられていく少女と今の私はどちらが哀れに見えるだろうか。
更に進むと高級住宅街は終わり、漁港の名残りが残る下町へ出る。小さな家が密集してるこの辺りで配り終わる計算だ。
この作業も数回目。私も事前準備を学習したので計算通りだ。
ガード下。魚の匂いがきつくなる。
朝になればこの辺りの一画でエビの皮剥きや魚の下処理のパートタイマーが頑張って働きにくるはずだ。
スーツで通る時には、「お兄さん頑張ってるね!」「おばちゃん達こそ大変でしょ、お互いがんばろーね」なんて軽口を言い合った事もあった。
口では大変だねと言いながら、その頃の私は心のどこかで時給数百円で働く彼女達を見下していたのが今はわかる。
その頃の私はスーツに臭いが付くのが嫌で、営業スマイルを浮かべながら内心で舌打ちし、小走りに通り過ぎていた。ライバル達より一件でも多く契約をとる事だけを考え、前しか見ていなかった。貧しい人間と挨拶以上の付き合いをしたって時間の無駄だとすら思っていた。そう叩き込まれていた。
目を血走らせて成績の為に飛び回る、私達自身こそが、あるいは呪われた猿そのものだったのかもしれない。額に汗して陽気に働く彼女たちは、おそらく人間としては当時の私なんかよりはずっと立派だった事だろう。
夜の闇の中を歩けば、そういう自分自身の心の闇もまた見る事になる。それは少し、苦く辛い。
港町を抜けた辺りで作業終了。
懐かしい横浜は、夜の闇の中でも美しかった。
いつかまた、戻れるだろうか。
寝てないからややテンションもハイだ。
紙チラシ溺愛おじさんに終了報告し、監視用GPSを返して私の労役は終わった。
二度とやる気はないが、なかなか出来ない体験はした。
あまり収入の足しにはならなかったが。
「お世話になりました」
去り際に挨拶したが、返事は返って来なかった。
私には興味も無いのだろう。彼は真剣な目をして無数に積まれているチラシを折る作業に没頭していた。
そういえば、他に夜間バイトって居るのだろうか。
結局一度も他のバイトらしき人とは会わなかったな。
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ああ、長々とお付き合いありがとうございます。
ええ大丈夫です。心の旅はおしまいです。ちゃんと2025年に戻ってきましたよ。
真夜中の放浪の顛末をお話しました。
これはまあ移動距離も長かったですが、むしろ心の中の闇を彷徨っていたような旅でした。
多分、猿の手に願いをかけたとしたら相模の森の辺りでしょうか。それとも闇に浮かぶ線路の辺りですかね。
後になって、そこがどこだったか検索してみたのですが、どうやら「さがみ湖リゾート プレジャーフォレスト」という場所だったようです。
2024年に「さがみ湖MORI MORI」という謎にハイテンションな名前のパークにリニューアルしたらしいですね。
まあどちらにせよ、このパークと北里大学付近には、個人的にはできればもう二度と近寄りたくはないものです。
ですが、いやなんでもありません。怖いもの見たさというのは大抵ろくでもない結果を招きますからね。
幸い本業の方は、基本的には真面目な私を評価してくれました。
その後はしばらくコツコツと働き借金返済。
多少の幸運もあり、キャリアも緩やかに再びアップしました。比較的安定してきたと言えるかもしれません。
車が突っ込んで来て、こんな有り様になるまでは。
もちろん猿の手なんて単なるネタで冗談です。
こじつけるなら、傲慢な猿のように邁進する営業マンが自分の腕を信じて独立した、という時点で象徴的ですがね。流石に強引すぎるでしょう。
だいたい私は猿ってイメージのキャラじゃないですしね。どちらかといえば社畜の犬でしょう?
ああ、突っ込んできた運転手のハンドルを握る手が獣のように毛むくじゃらだった!なんて陳腐なオチもありませんよ。
まあ諸々、因果応報なのかもしれないのは否定しませんよ。この世の中は、悪い奴より愚かな奴の方が罰を受けるシステムですからね。おっと、愚痴っぽくなりましたか。
なんにせよ、この足が治ってまた再び歩ける日を、今は猿の手ならぬチタンプレート入りの足に願いますよ。
そしてその願いが叶う日がきても、私はもう絶対に深夜の暗闇を徘徊する事だけはないでしょう。
あの闇へ続く線路の先を、見に行きたい気持ちが全く消え失せたわけではありませんけれど。
お付き合い、ありがとうございました。
暗い夜の道をゆくときは、くれぐれも気をつけて下さいね。もし迷ってしまって闇の先に向かう線路に出くわしても、そちらには行かない事をお勧めしますよ。
では、またお会いできると嬉しいです。
そろそろ年明けですからね。一緒にお祝いしましょう。生きて新年を迎えられて良かったですよ。
祝いと呪いは、よく似ていて、表裏一体ですからね。
fin.
夜を彷徨(ゆ)く 夏乃緒玻璃 @NATU2025
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