3歩目 浜野井晶は普通の友達の男子です

第34話 浜野井君は普通の友達の男子です

 さて、いきなりですが重大発表です。


「おーい浜野井はまのい。土の袋ってどこ運べば良いんだっけ?」

「あ、湊君……こっちだよ」


 僕、湊想太郎に。

 ようやく普通に男子の友達ができました!


 当然のことながら、糸美川さん、志原田さんと友人であることに不満があるわけではない。

 本当に心の底から、二人と友達になれて良かったと思っている。


 それはそれとして、あの二人は美少女過ぎてちょっとばかし落ち着かない。

 そうなってくると、やはり僕としては高校生活を楽しむうえで、普遍的な友情も育んでいきたいわけだ。


 中学時代、楽しく過ごした日々を思い出す。

 今は進んだ高校も別になってしまったし、距離は離れてしまったけれど、あの時のような関係を結ぶこともまた、僕の目標となるわけだ。


 但し、現在の僕はオタクではないものとする。


「よっこいしょっと」

「ごめんね……湊君。重い方ばかり……運ばせてしまって」


 僕が土を運び終えると、申し訳なさそうに、こちらへ謝罪する浜野井はまのい君。

 そう、彼こそが新たに出来た友人だ。


「気にしない気にしない。こういうのは出来る方がやれば良いんだからね」

「ありがとう……湊君」


 僕に向けられた感謝の言葉。

 彼の控え目でな性格が見て取れる。


 彼は、少し引っ込み思案なところもあるし、人見知りというか、喋るのもあまり得意ではない。

 けれど、そこでひるまずにきちんと「ありがとう」と言えるのが彼の魅力だ。


「本当……ぼくは体も小さくて、力も弱いし……湊君が、羨ましいよ」


 おっと、卑屈なモードに入ってしまった。

 ここは彼の短所かもしれない。


「あのさ、浜野井。もしかしなくても、僕は結構でかいから、力もあると思ってるでしょ」

「えっと……うん」

「残念でしたー」

「え?」

「身長は確かにあるけど、筋肉少な目男子なんだよ、僕。中間が終わったら、志原田さんからチェックが入るみたいでさ」

「???」


 浜野井君にフォローを入れると、意味が分からなかったようで、困惑している。

 まぁそうだよね、いきなり言われても分からないか。


「簡単に言うと、普通の男子高校生と比べても、体が強い方じゃないってこと」

「湊君が……?」

「そうらしいよ。『筋肉の量が足りてない気がする~』だってさ」

「えっと今の言葉は」

「さっき言った志原田さんから言われたこと。彼女のことは分かるでしょ?」

「彼女……えっと、うん。以前に重い物を簡単に運んでいた……」

「そうそう。あの後僕はへろへろだったのに、志原田さんは平気だったみたいだよ」

「そうなんだ……湊君……志原田さんと、仲が良いの……?」

「うん。GW前に友達になれたんだ」

「そっか……やっぱり、凄いな、湊君は……」


 息を漏らすような声で、僕を凄いと言ってくれる浜野井君だけど、今僕が伝えたいのは、別のことだ。


「全然凄くないよ。例えば、糸美川さんには、身嗜みを整えることを習っている最中だし」

「湊君……糸美川さんとも仲が良いんだね……」

「まあね、凄く親切にしてくれてさ」

「そうなんだ……」


 おっと、また話が逸れてしまった。

 実をいうと、浜野井君に褒められて悪い気にはなっていないのは事実なんだけど、やっぱりそうじゃなくて。


「とにかくさ、僕自身、まだまだ未熟で、だからこそ頑張って鍛えていこうって思ってるんだ。だからさ、浜野井も一緒にどうかな?」

「僕……も?」

「そうそう、だからもしも、今の自分から一歩踏み出したいならさ、一緒に頑張ろうよ」

「いいの……?」


 遠慮がちにこちらの提案に問いかけてくる浜野井君。

 そうそう、これこそが本題だ。


 彼とは普通に友人としてもっと仲良くなりたいし、そして一緒に鍛錬する仲間も欲しい。


「一緒に鍛えていこうな、浜野井」

「うん……よろしく、湊君」


 おっと残念。

 あわよくば呼び捨てしてもらおうと思ったのにな。


 内心では僕自身もまだ"君付け"で呼んでいたりするのだけれど、もっと仲良くなっていきたいものだ。


「おーい。みなとー」

「あれ?どうしたの玉枝さん」


 僕を呼ぶ声に振り向けば、玉枝さん。

 こちらは逆に彼女は苗字呼び捨て、僕はさん付け呼びだ。


 とはいえ、僕が特別なわけではなく、彼女は大体そのように相手のことを呼んでいるだけなのだが。


 とはいえ、フレンドリーに接してもらえるのは嬉しいけどね。

 自惚れではなく、比較的僕に対して好意的な気もするし。


「いやさ、"あきら"がここにいるっていうから」

「玉枝さん、僕に何か用?」


 彼女が捜していたのは、誰であろう浜野井晶はまのいあきら君、その人であった。

 え、下の名前呼び?


「おーいたいた!晶、この後この前の写真渡すから、集合なー」

「うん……分かったよ。玉枝さん」

「写真?」

「おう、そうだぞー。GW暇組でさ、遊びに行った時の写真なんだー。それをプリントしたからって。湊も来るー?」

「いや一緒に遊びに行っていない僕が行くのも変でしょ」

「それもそうだなー。それに女子しかいないから、湊も気を使うかー」


 割ととんでもないことを言い出す玉枝さんだけれど、それを指摘する人物はここにはいない。


「それじゃ、浜野井。あとは僕がやっておくから、玉枝さんと一緒に教室行きなよ」

「え……それは、悪いよ」

「いいのいいの。さっきも言ったろ、出来る人がやれば良いんだって。その代わり、一緒に鍛錬、よろしくね」

「みなとー。浜野井をマッチョにしたら、他の女子、怒ると思うー」

「そういう鍛錬じゃないから安心してね、玉枝さん。というわけで浜野井と一緒にどうぞ」

「そっかそっかー。それじゃ、晶行こうぜー」

「う、うん……それじゃ、ありがとう。湊君……」


 そして、僕は屋上を去る彼らの背を見送る。

 そっかー、玉枝さん晶呼びなんだなー、自惚れだったわ、恥ずかし。


 それにしても、浜野井君GWに、自分以外は全員女子で遊びに出かけたのか。

 羨ましいなぁ。


 とはいえ、それも当然と、僕は納得している。

 何故ならば彼は、女性と間違わんばかりの、美少年だからだ。


 そして、あの控えめな性格で、大変女子の友人が多い。

 というか女子たちにいつも囲まれている。


 浜野井晶は、そんな感じでちょっと羨ましい、僕の友人だ。


◆◇◆◇◆◇◆◇


本日より第1章最終節

『3歩目 浜野井君は普通の男子です』

開始です。

普通の男子友達も作るのかな?

お楽しみに!

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