魔女狩りという業務について

山猫計

第一章 夢で遊ばない魔女

プロローグ

 銃声と、少女の額に咲かせた赤い花。

 血と肉でできた花びら。


 引き金を引くたび、同じ赤色が視界を塗り替える。


「殺さないで……」


 命乞いはいつからか、ただの環境音──遠くで鳴っているラジオみたいなものになった。


 “魔法を使えば処刑”


 それは中世から続く、世界のルールだ。

 異端は炙り出され、理解できないものは殺される。

 俺はその実行役として、淡々と仕事をしてきた。


 疑問はなかった。

 迷いもなかった。


 ──だが、いつの日か、


 あの魔女に出会ってから、俺の中の世界は、静かに揺らぎはじめることになる。


 撃つべきだと理解しているのに、指が遅れる。

 正しいはずの手順が、どこか歪んで見える。


 魔女は本当に“害虫”なのか。

 それとも、俺たちが駆除してきたのは──



 世界にとって、都合の悪い“物語”だったのではないか──と。


 

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