第30話 初クエスト! ゴブ……凌辱!? いや、スライム退治で
「さっそくクエストを受けよう! ……これなんかがいいんじゃないか?」
アックスが壁に貼り出された紙を指しながら言った。
「どれどれ……ゴブリン退治か、いいかもしれないな」
ゲームだとゴブリンは初期に出てくるモンスターだし、うん、ゴブリン退治って冒険者っぽくていいな!
「――それはやめといた方がいいですよ! ゴブリンは魔物の中では知力がある方ですし、集団で行動します。一匹だけなら成りたての冒険者でも倒せるレベルですが、集団となると……手に負えず、経験不足の冒険者が殺られることが多いんですよ。それにゴブリンは強欲な生き物なんです。種族関係なしに性交を求めます。下手したら凌辱されますよ!」
「ひぃ!? 凌辱……ね、ねぇ、リチャーズ、アックス、ゴブリンはやめようよ」
声をかけてきたのは先程の受付のお姉さんだ。金髪の髪をなびかせながら脅しをかけるようにエリィを見つめている。
「これなんかはどうですか? 初心者にぴったし! 慣れないうちはこういう依頼をコツコツとこなすのが大事なんですよ」
お姉さんは壁に貼り付けてある紙を一枚剥がして、俺達に見せた。
「スライムぅ!? それは駄目だ! 最初の依頼がスライム駆除なんて格好つかない。冒険者じゃなくてもスライム駆除なんていくらでもできるからな」
アックスはそう言うと、腕を組みそっぽに顔を向ける。
「アックスそうは言ってもさ、俺達はド素人だよ。お姉さんも言ってることだし、これにしようぜ」
「そうよ〜! 変に格好つけてる場合じゃないよ。私達の村にスライムはいなかったし、これもいい勉強になるわよ」
「それなら尚更です! 魔物を知るためにも、いろいろな経験が大事ですよ」
お姉さんは嫌がるアックスを放って、半ば強引に受付を済ませた。彼女は 穏やかな表情をしている割に、意外とやり手なのかもしれない。親切心で初心者の俺達のことを考えて、このクエストを選んでくれている……そう思いたいが、もしかしたらこのクエストを受ける冒険者が一人もいなくて、ただただ困っていただけかもしれない。受付のお姉さんのテキパキとした起居を見て、俺はそう思えてきた。
「今から向かいますか?」
「そうですね。朝食を済ませたらすぐに向かいます。それでいいよな? エリィ、アックス?」
二人はうんと頷く。アックスはまだ納得してないのか、口を尖らせていた。
「朝のうちでしたら依頼主が家にいると思いますので、まずは訪ねてこの紙を見せてください。――あ、そうそう! クエスト中はそのプレートを必ず見える所に身に着けてください。それを見て周りの人はクエスト中だと認識できます。逆にクエスト以外では見える所に身に着けないようにしてください。そのプレートを見て、冒険者たち同士はクエスト中なのかを判断します。冒険者であればギルドを通さずともダンジョンに入るのは許されていますが、冒険者同士でバッティングした場合はクエストを受けている方が優先されます」
「ん? それってプレートを見せてクエスト中だと嘘つけばバレないのでは?」
「まぁ、それはそうですけども……冒険者の虚偽行為は罰則が厳しいのでしない方が……冒険者資格を剥奪で済めばいいのですが、その地域一帯を仕切るギルドごとに罰則に違いがあってですね。虚偽行為だけで腕一本落とす所もあるそうですよ! ――あ、ちなみにこの街の冒険者規則はもう一つの緑の屋根のギルドが決めたルールに従っています。向こうが親ギルドなら、こっちは小ギルドみたいなものです」
「ひぃ! 恐ろしい。まさかこの街のギルドもそうとか言わないですよね……?」
「……」
お姉さんはなにも答えず、ただただ不気味に笑みを浮かべる。お姉さんの脅しと思いたいが、腕一本失うのは勘弁だ、ルールはちゃんと守ろう。
「あとですね、今回のクエストは私有地のため、く・れ・ぐ・れも勝手に駆除を初めないようにしてください。ちなみに私有地で許可を得ずにクエストをこなした場合は罰金になります。最低でもギルド報酬分の半分以上です! 依頼主が留守だった場合は時間を空けてか、もしくは日を改めてまた訪問してください」
「「「はい!」」」
「気をつけてほしいことはこの紙に書いておきました。目を通しておいて下さい。それでは初クエスト……武運を祈ります!」
お姉さんはキリッとした眼差しを見せたかと思うと、とびっきりの笑顔をくれた。少し押しが強い所があるが、可愛らしい表情にすらっとした体型、ロングスカートがとても似合う。それになんといっても胸が大きい! ああ、なんて素敵なお姉さんなんだ。
「リチャーズ、鼻の下伸びてるよ」
「え!? そうかな〜、いや、そんなことないよ。……あはは」
エリィは何でもお見通しかい。
***
俺達は街の端にある依頼主の家まで来た。赤い屋根に白い壁の家、その家の横に扉が空いたままの小屋が見える。俺達は家の扉を何度かノックし、返事がないのを確認すると隣の小屋の中を覗いてみた。
「すみませ〜ん」
小屋の奥で影がもぞもぞと動くと、ご老人が姿を表した。
「なにかね?」
「あ……ええっと、僕たち……冒険者でして、ご依頼されたスライム駆除をしに来ました」
エリィは肘で俺を突っつく。――あ、そっか!
「こちら……」
ご老人は俺の手から一枚の紙を受け取り、まじまじとそれを眺める。眉間に深い
「ふむ、やっと来たか。諦めていたが……ずいぶんと待ったわい。三週間は待った。お主ら名は?」
「あ! はい、僕はリチャーズで……それと……」
「エリィです」
「アックス」
「ふむ、わしはゼニキスだ」
「ゼニキスさん、ずいぶんとカッコイイ名前ですね!」
「ん?……」
ご老人の眉間の皺がさらに深まる。
「いや、なんでも〜……あはは……」
「茶でもいるかね?」
「いえ、結構です。早速始めましょう!」
「うむ、こっちだ。着いてこい」
「だいぶ、
「さっさと終わらせちまおうぜ」
エリィとアックスはひそひそと小声で言った。
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