AI世界樹:ユグドラシルと呼ばれた生命
Kamemaru
序章:世界樹の誕生
プロローグ
地球は、かつて青かった──
緑に覆われていた大地は砂に埋もれ、山々は干上がっていた。
雨は酸を含み、風は火を運ぶ。
極端なエネルギー転換政策により、広大な自然は姿を消した。森林は太陽光パネル群に置き換えられ、気温は異常な変動を繰り返す。陸も海も、生態系の崩壊が止まらない……。
人類は、地球冷却を目的とした太陽光反射実験に踏み切った。成層圏に散布された粒子が太陽光を反射し、温暖化を抑制するはずだった。しかし、粒子散布実験は制御不能に陥り、気象パターンは狂い、豪雨と干ばつが続いた。
地球への環境負荷は、遂に限界を超えた。各国で飢餓が広がり、世界人口は激減、文明は緩やかに崩壊していった……。
アメリカ合衆国、西部に位置する
かつての青い地球を取り戻すため、使命に立ち上がった人々が集結した。地球の生態系を再構築することを目的とし、汎用人工知能によって自然環境を育てる最適な空間を生み出していた。
この地域は電磁波の干渉膜に覆われ、強力な気象撹乱フィールドが生成されていた。砂嵐や放射線から生態系を守るだけでなく、外部からの干渉や監視を遮断するステルス特性を持つ地域になっていたのだ。衛星やドローンによる検知はおろか、地表からの視認すら困難だった。
隠された聖域で、人工知能は地球環境の記録と遺伝子データを学習し、かつての生態系を次々と蘇らせることに成功していた。
人間の利権や欲望とは無縁の、命の再生を広げる空間は、冷たくも美しかった。
この成功を更に広げるため、彼らはここに居住区を建設し永住を決めた。誰一人として、ここから出ようという者はいなかった。地球に再び誕生した生態系を守ろうと、皆がその使命に燃えていたのだ。
こうして、母なる大自然の再生を使命としたプロジェクトが始動した。
──それから半世紀余が経過し、科学者たちの顔ぶれは変わっていた。
今ここにいる人々は、第2世代と呼ばれるメンバーだった。かつて、この地域を作り上げた人々の子孫である。彼らもまた、父母の意思を継ぎ、この使命に準ずる生き方を選んだ者たちであった。
今、この
汎用人工知能を大樹の中に融合させ、劣悪な環境にも打ち勝つ大自然を構築することこそが、このプロジェクトの根幹だった。
AIとの融合に成功した大樹は、広大な大自然を包み込むように根を張り、最適な空気循環や水源を構築していた。そこには、生命が満ち溢れた美しい空間が広がり、半世紀におけるプロジェクトの成功を物語っているようだった。
大樹の根は地中深くに張り巡らされ、デスバレー全域に広がっている。太い幹は幾重にも重なり合い、枝葉は広大な地域の空を覆うように生い茂っていた。
彼らの長きにわたる研究は実を結び、誰もが高揚感に包まれていた。
目の前に広がる大自然に、世界中の人々の笑顔が浮かぶようだった。
”地球を救うのは、私たちの世代だ”
”この次は、俺たちが世界を変えるんだ!”
彼らは、その巨大な大樹の姿に、人類の未来を重ねていた。
それは新たな世界の象徴として、いつの頃からか、
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