あねてん!【パイロット版】

エピソード0

 これは、夢?

 どこかで、誰かが。


「貴様、そんなに救世主とやらになりたいのか?」


 見ている方が恥ずかしい。

 きわどいコスプレおねえさんが挑発する。


「わたしは、そんなものに興味ない!」


 毅然きぜんといい放ったのは、だれ?


「ならば、何が望みだ? 魔王様ならなんでもかなえてくれるぞ」


「わたしは……、わたしは……」


 おねえさんが顔を上げた。


「わたしは戻りたいの! 戻るの! ユウくんのところへ!!」


 ぼく?!!

 ぼくのところって?!


 お、おねえちゃん!!


「サキちゃん! そこをどいて!!」

「どけといわれてどくものなどいるものか!」

「だったら……」


 疾風の刃ウィンドカッター


 おねえちゃんの手から何かが放たれた。

 暗い、湿っぽい、広間のような場所。

 屋内空間に風が渦巻く。


 肌で感じる。

 においさえも。

 これは本当に夢なの?


 ズバッ!


 あ、おねえさんの服が……。

 ちょ、ちょっと……!

 か、かくしてよ!

 ぼくには、し、しげきが……っ。


「フン。あいかわらず見事だな」

「もう! どいてったらっ! 魔王を倒せば元の世界にかえれるの!」

「元の?」

「神さまが約束してくれたもん!」

「神だと? あのイカサマ女神か?!」


 おねえさんは嘲笑わらってる。

 おねえちゃん、もしかしてその神さまにだまされているの?


「約束、してくれたもん!」


 神の息吹ゴッドブレス


「こ、こんな場所で、そんな特大魔法を! バカかっ!」

「バカじゃないもん!!」

「ええい! おまえはいつも、いつでも!!」

「還るんだもん! 還ってまた、ユウくんになでなでしてもらうんだから!」


 そ、そんなこと!

 ……。

 あ、してた。


「くっ! この魔乳女まじょが! そのムダにでかいチチで魔王様も篭絡ろうらくするつもりか」


 あ、それはダメ。

 おねえちゃんには禁句。


「そ、そ、そんなことしないもん!」

「なにを、この!! だらしな魔乳まちちが!!」

「ユウくんは、それでもいいっていってくれたもん! わたしの大事な弟くんは! わたしのおっぱいがいいって! だからわたし、生まれ変わっても恥ずかしくても、姿はおんなじしてもらったんだからっ!!」


 お、おねえちゃん、それは誤解されちゃう!

 そんなつもりでいったんじゃなくて!

 あれは、おねえちゃんを……っ。


「フン。実の弟まで誘惑するか、魔乳女まじょめ!」

「うっさい、貧乳まないた!」


 あ、顔色変わった。

 こんどはおねえさんの逆鱗げきりんにふれたみたい。


「お、おまえはっ、また! あ、あたしだってねえ……っ」

「やーい、やーい、ひんぬう! くやしかったら『ああ、胸が重いなあ』って、いってみろっ! べろべろべー!」

「な! こ、こ、この、牛女! お、お、おまえにあたしの気持ちがわかるかっ!」

「んべっ! サキちゃんなんて色気ゼロ、おまけに経験もゼロのおこちゃまなんだから!」


 あれ? 緊張感はどこに? いつの間にか、子どもの口げんか?


「ウッキーーー!! 処女けいけんなしはおまえもだろうが!」

「わたしにはユウくんがいればいいの!」

「このブラコンが!」


 それはおねえさんが正しい!!


「いいんだもん! わたしは生まれ変わったんだから! もう遠慮はいらないんだからっ!」


 おねえちゃんの感情が爆発する。

 それと同時に、渦巻く突風がおねえさんをはじき飛ばす!


「おまえはーーーーっ!」


「絶対、かえるのっ!!!」


 光に、包まれる。


 おねえちゃん……、おねえちゃん……。


 これは本当に、夢?


 帰ってくる?


 おねえちゃん……、おねえちゃん……。


 できるなら、もう一度……。

 ぼくだって……。


「会いたいよ、おねえちゃん」


「うん。わたしもよ、ユウくん」

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2026年1月1日 15:15
2026年1月2日 15:15
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あねてん!【パイロット版】 @t-Arigatou

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