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 担任の先生は、25歳独身 葛城欣五先生だった。大学の時は陸上の短距離をやっていたとかでスラッとした人。でも 私の記憶の中では、この先生は登場しないのだけどなぁー・・・。


 隣の席は 生越弘樹おごせひろき そ~いえば、私に中学の時 告ってきた奴だ 嫌いじゃぁ無かったのだけど、その時は、そんなに好きって言うんでも無かったので、お友達のままでと、やんわりお断りしたのだ。だけど、高校生になって、なんて無く付き合い始めることになっていく。私は 他に 好きな人も居なかったので まぁ 良いかと思っていたのだ。


 新学年の最初の授業で、5年生の算数。葛城先生は、いきなり 黒板に問題をいくつか書いて


「3学期に少し 進んでいるって白瀬先生からの申し送りだ。復習の意味でやってみようと思う。誰か・・・前に出て・・・えっと― 神崎つぐみさん」


「えぇー なんで 私・・・」 


「いい顔してるなぁー 眼が合ってしまったからな 懐かしい感じがするな」


「どーいう意味なんですか? それより 何で 名前知っているの?」


「何でってー 40人ほどだろう クラスのみんなの写真で覚えた」


「はっ 全員のー ・・・何者じゃぁー こいつは出来るぞ 手抜きは出来ない」


 私は、ぶつぶつ 良いながらも 前に出て 分数の問題だったけど スラスラと3問とも解いていった。


「おぉ すごいなぁー 全部正解だよ 3問目は少し 捻ってあるんだけどなぁー」と、拍手をしながら言っていた。


 席に戻ると、隣の生越弘樹が


「お前 算数 苦手じゃぁなかったっけー どうか なってしまったんか?」


「なにゆうてんのー 小学生の問題なんて解けやんでどーすんのん」


「お前 やっぱり なんか おかしい・・・」


 休み時間になると、こころちゃんと有理紗ちゃんが私のもとに来てくれて、


「つぐみちゃん 春休みの間 ずぅ~っと勉強してたんかー?」


「そんなことないでー 普通にしてた」


「ふ~ん なんか昨日から雰囲気が違うねんけど・・・ だってさー いっつも ウチってゆうてたやんかー 私 やってぇー・・・なぁ 有理紗ちゃん?」


「まぁ そーかなぁー 気付かへんかったけどー」


「それにさー 算数 つぐみちゃんが、あんなに スラスラ解ける訳ないもん・・・」


「こころちゃん バカにしてるんかぁー こんな お尻が見えそうな短いスカートでー 小学生の恰好に戻ってしもぅてぇー ちょっとぐらい ええこともあるやろー」


「それって どーいう意味? 変なの!」


 その日 帰ると家の近くの坂の上でピン子が待っていた。


「ねぇ ピン子 お前でしょ! 私をどうする気なの? ペコは どこ?」


「ニャンふぁー」


 無視されて、とっとっ と家に戻っていつた。家に帰ると、ピン子は足元にじゃれてきて、多分 ご飯をおねだりしてるのだろう。まぁ 朝 食べたっ切りなのだろうから、仕方ないのだけど、お釜にご飯は無いし、仕方なくて、冷蔵庫の竹輪を1本ちぎってあげていたら 「ふにゃー フニャー フニャニャー」と・・・


「あっ ペコと同じ・・・」


 そして、いつものように寝る時、ピン子がベッドに飛び乗って来て、私の手首を探しだして、咥えてきた。そうなのだ、この子はこうだったと・・・でも こいつ 怪しい・・・私も眠りについた。このまま 小学生なのかしら・・・

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