追放されたのでもう働きません~無能扱いされたけど実は世界最強の賢者でした~

緋西 皐

第1話 追放された日に、働かなくなりました

 追放宣告の日


 「──リリアナ。お前は今日限りでパーティーから追放する」


 冒険者ギルドの応接室。重々しい声が響いた。銀髪を揺らして立ち上がったのは、Sランクパーティー《白銀の翼》のリーダー、剣聖レオンハルトだ。

 その背後には、聖女アリシア、魔導士カイル、大賢者エリックが揃って私を見下ろしている。私はテーブルの端で小さく息を吐いた。


 「……そうですか」

 「なんだその態度は!」


 カイルが拳をテーブルに叩きつける。


 「お前みたいな無能が三年間も居座ってたのが奇跡だ。スキルは【鑑定】だけ、戦闘力ゼロ、魔法も使えない。俺たちの足手まといでしかないだろ!」

 「レオ様も我慢の限界だとおっしゃっていますわ」


 アリシアが優雅に微笑みながら毒を吐く。


 「お荷物はもういりません。さあ、荷物をまとめて出て行ってくださいな^^」


 私はゆっくりと立ち上がった。


 「……わかりました。それでは、これで失礼します」

 「待てよ、最低限の礼儀くらいあるだろ!」


 レオンハルトが剣の柄に手をやる。


 「せめて土下座して謝罪しろ。俺たちにどれだけ迷惑かけたか、わかってるのか?」


 私は静かに首を振った。


 「いいえ。別に迷惑はかけていないと思いますけど」


 一瞬、部屋が凍りついた。


 「は……?」

 「なに?」

 「この女、頭おかしくなった?」


  私は右手を軽く掲げる。

 【完全鑑定・極】発動。

 瞬間、四人のステータスが私の視界に浮かび上がる。


レオンハルト Lv99(上限)

アリシア   Lv97

カイル    Lv95

エリック   Lv94


 ……なるほど。確かに彼らは「現時点での最強パーティー」だ。でも。私は小さく微笑んだ。


「レオンハルトさん。実は言ってなかったんですけど」

「なんだ?」

「私の本当のスキル……見せてあげますね」


 ぱちん、と指を鳴らす。次の瞬間、部屋中の魔力が一斉に私へと集ってきた。


【スキル:世界樹の加護(唯一無二)】

【スキル:全魔法無効化】

【スキル:無限魔力】

【スキル:概念干渉】

【スキル:存在値操作】

【隠しステータス:賢者値 999999999(上限突破)】


 レオンハルトが青ざめる。


 「な……お前、まさか……」


 私はにこりと笑って、静かに告げた。


 「私、もう働かなくていいですよね? だってあなた方がそう言ったんですから」


 部屋の窓が開け放たれ、風が吹き込む。


 「じゃあ、私は自由になります。三年間、足手まといのふりしてくれてありがとうございました^^」


 私は振り返らず、扉へと歩いていく。背後で誰かが叫ぶ。


 「待て!リリアナ!話が違う!」


 私は最後に一度だけ振り返った。


 「え? もう関わりたくないって、あなたたちが言ったじゃないですか」


 くすっ、と笑って。


 「さようなら。……あ、ちなみに」


 私は軽く手を振った。


 「これから先、あなたたちがどんなに私を呼び戻そうとしても、もう遅いですよ」


 扉が閉まる。

 私は静かに呟いた。


 「……さて。まずはゆっくり寝て、それから世界旅行でもしようかな」


 追放された元・無能賢者(実は世界最強)の、

 気ままな第二の人生が、今始まる。

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