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猫猫にゃんにゃんにゃん
ドキュメント01
どんな人にもきらきらと輝いていた時分があったはずで、僕の場合はどうだったろう? と少し悩む。
僕の名前は
ある朝のこと。
僕が目を覚ましたことを僕自身が思い出すと、ほんの少しだけ憂鬱になる。
憂鬱だった。意味もなくそうだった。僕は深くも浅くもないため息を吐き、死んだ妹に花を捧ぐために起きる。
死んだ?
死んだんだね。僕の心は暗い闇に深まっていき、意味もなく咳をする。一人の世界。
自分は世界で一人。それはそれでいいんだけど何か違う。違う気がして、僕は身体を起こしたままでゆっくりと両手を顔に近づける。
それは涙。
溢れるそれらは色がない。そして枯れ果てることのない水。生命の源。
「……馬鹿なことよ」
僕は呟く。悲しいときは青い海を思い浮かべ、白波に流れる灰色の影が僕に迫る。
影は僕を簡単に飲み込み音を立てる。
というふうなことをやっていると気が紛れ、僕はまともになれる。そんな気がしている。
えっちらおっちら歩いて鏡を見る。中を覗き込む。抜け落ちた睫毛が左頬につき、音楽的感動を覚えた僕は踊る。
虚しさとダンスする。
音楽が鳴っている間は、踊り続けなければならない。でも鳴ってはない。それでもいい。
僕はつま先立ちでくるりと回り、小指と薬指をタンスにぶつける。
短く叫ぶ。思い出す。
「思い出したわ……」と云う。
「何を思い出したの?」と彼女は訊いた。
冬はすぐそばにあって、手を伸ばさずとも勝手に掴まれる。捕まえてごらん。僕は踊る。
頭の中に鳴る音楽は止まっていない。ならばそれを続けよ。
だんだんと身体は冷え──あるいは最初からそうだった──、どちらの指先もじきに動かすのが嫌になる。そう思った。嫌なものは嫌よ。
鏡に映るのは僕だけではない。
赤みがかった金髪の少女が、僕に倣うように影のように……舞っている。彼女の唇が開く。悪戯したくなる柔らかさを見る。
「何を思い出したの? ねえ、教えて──」
そう云うから、僕はやめた。ダンスの時間は終わり、僕は顔を洗う。
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