人の本質


全て人間は思考と行動、ふたつの方法で生活している。しかし、思考そのものが行動に結びつくということは一概にも言えない。

例えば、ある人に趣味を問われているとしよう。君のクラスでの立ち位置は物静かなキャラだったとする。でも君の本当の趣味はオタ活だ。こんな状況で自分の事をしっかりと伝えられる人はひと握りしかいないであろう。

もちろん示したのは例の話。

だが、職場したり、飲み会したり。

一定の状況では思考をそのまま行動に移すことが正しいと言えないことも多々ある。

「周りに合わせる」「どっちでもよかった」

「嫌われたくないから」「これでもいい」

このような考えは思考と食い違った行動を行った際に現れる言い訳だ。

物事に対して理由をつけているだけであって行動が出来なかった訳では無いが、自分に聞かせようとしている。

もちろん他人に合わせることを悪い事とは思わない。

だが、他人に依存してばかりの生活というものは人間の生というものを実感できる1種をなにか失っている気がする。


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春の優しい風と日差しを受けている屋上では、なんとも言いにくい状況が続いている。

自分も軽く自己紹介して何となく仲は深まったが、その後もあかねは絵里に続けて話しかけている。絵里はなんて返していいか分からないのかあやふやしているような感じだ。


僕は僕でそんな状況を横目で見ながら最近読んでいる恋愛ラノベに手をつけている。

まだ読み始めたばっかだが、結構良い作品だと思う。

物語は、幼稚園のときよく話していた女の子と高校で再開して少しずつ距離を縮めていくと言ったものだ。

なんか最初の方は今さっき見たことあるような感じがするな。

ありきたりなストーリーだと思ってもいたが、これが案外面白い、丁度一区切りついた所で顔を上げてみると目の前にふたりがいた。


「何やってんだ。」

「いやあのっ!えと、話しかけても返事がなかったので、、、、。」


申し訳なさそうに言う絵里。


「ほんとひどいよねー!」


軽く頬を膨らませる素振りを見せて前かがみで怒ってくる茜。

ほんとついさっき会ったばっかだけれど対照的なのは一目瞭然のようだ。


「そういえばゆっくりしてるけど、いつまでもいていいのか?」


端っこで読書していたから時間の進み方はあんま分かっていなかったが、今さっきからの状況からしてかなり集中していたので、少し時間が心配だ。


「だいじょぶ!だいじょぶ!」

「何を根拠にだ?」

「......」


茜がだまった数秒後ぐらいに絵里が言う。


「あのあの!各自解散と言っていたので大丈夫ではないでしょうか!!」


「そうなの?」

「そうなのか?」


同時に聞き返してしまったが、多分、、と言っていたことだし信じることにした。

仮に言っていたとしたら自分と茜、両方話を聞いていないし、入学初日で各自解散という学校の方針も少し珍しいなとは感じた。

ホッと胸を撫で下ろすとは安堵した時にアニメや小説でわかりやすいように描かれるが、茜がまんまそのような素振りを見せていたので、

こんな人もいるんだとまたひとつ興味ができた。


「ねーこの後ひま??」


そんな安堵した態度もつかの間こんなことを言ってきた。

多分絵里にだろうと思って聞き流していると

絵里が


「ひ、暇です!!」


なんだかワクワクしているようだ。

この後は二人でどこかに行くのだろうか。

まあ多分もう用事は無いだろうと思ってその場を立ち去ろうとゆっくりと立ち上がろうとすると軽くチョップされた。痛い。


「おい!なんで逃げるのさ!」

「別に逃げるとかじゃないんだけど。」

「じゃあごめんね!でもどこ行くの?」

「帰る。アニメ見たい。」


率直な意見を述べるとふむふむと理解してくれているような表情を見せる絵里。理解してくれる人がいたようだな。

ん?と首を傾げている茜だが、そういうことでと、切り上げようとする自分を再度慌てて止めてきた。

「アニメはいつでも見れるでしょ!!

私たちの時間を楽しもうよ!高校だよ!?」


自分の考えとは全く反対の考えを言われるが反論するも虚しく、ね!ね!と念押しされて面倒くさかったのでついて行くことにした。

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しばらく立ってカラオケに来た。

歌を歌う施設ということは知っているが来たことがない。もちろん知っているのは漫画たちのおかげだ。ありがとう。

茜は慣れた手つきで受付を済ませ

こっちこっち!と部屋へ案内してくれる。

部屋に入ってみると案外広い。

見た事のある部屋は自分の家と教室ばっかだから自動的にそれと比べてしまう。


タブレットを手に取ると「みんなの分のドリンクバーは頼んだから!!」と言って颯爽と部屋を去っていくとすぐ帰ってきて歌い始めた。

ちなみに飲み物はコーラだ。


茜が帰ってきたことを見計らって、まだあまり状況が掴めてなさそうな絵里を誘ってドリンクバーというところに向かうことにした。

茜は熱唱していたので気付いて無さそうだったが、一応静かにドアを閉めておいた。


このカラオケは2フロア使っていて部屋と別のフロアにドリンクバーがあるため少し距離があった。

来たことがないので興味があった店内を見ながら歩いていると、

ある程度沈黙が続いて気まづいなと察してくれたのか絵里が勇気を振り絞って話しかけてくれる。


「えっと、、茜ちゃんとはどんな関係なんですか??」


まあ気になるのも無理はないだろう。なんせあのコミュ力だからね。真っ先に自分のところに来たのは謎なんだけど。友達はもう作っていたのかな?考えている時間が少し長くなっていることに気付いて慌てて謝罪をして言う。


「僕も今日初めて会ったんだ。あの詰め方には僕も正直びっくりしたよ。」


小さい頃の女の子と似ている事は言おうか迷ったが、話が分かりにくくなることを避けるため言うのは辞めた。するとこんな質問が返ってきた。


「その、友達っていうのはどうやってなれるものなんでしょうか??」


あまり何を言っているのか分からなかったが真剣な表情を見ると真面目な気持ちであることが分かったのでしっかりと返す。


「なれる。とかじゃなくて遊んだり、喋っていく中で自然になっていくものだと思う。」


幼稚園にいた時はみんなと話したり遊んだりしている時は楽しくてみんなと一緒にいたいと思っていた。多分それを友達と言うんだと思いそうやって答えた。


なるほど、と納得してくれたような表情を見せて続けて彼女が言う。


「では、私と茜ちゃんは友達、なのでしょうか?そしてあなたと私も友達なのでしょうか。」


また深い表情で聞いてくるので優しく答えて置くことにする。


「100%そうとは自分も言いきれないけど、客観的に見ても君と茜は友達に見える。君が僕を友達だと思ってくれているなら自分もそう思う。」

「これでどうかな?」

「ありがとうございます。とてもよくわかりました。」

「そう。それは良かった。」

「では"友達"としてよろしくお願いします。」

「ああうん。よろしく。」


情を感じることは人より少ないと思っているが、自分の話で納得してくれるのは素直に嬉しいしどうやら友達とも思ってくれているらしいので満足だ。

でも少し気になることがあるので聞いてみる。


「絵里さんさ、友達いたことないの?」

「っ!...」


引きつった顔を見た絵里を見て言い方が悪かったことに気づいてすぐに謝る。


「あ、ごめん。聞き方が凄く悪かった。」

「いえ、私も悪いんです。あまりに知らないものですから。ごめんなさい。」


相手にも謝罪させてしまって申し訳ない気持ちになるが、絵里は続けてこんなことを言う。


「私、元々施設にいたんです。」


ドリンクバーの目の前まで来ていたので話はそこで一旦終わったが、部屋で詳しく聞くということになった。


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