ピサ
相澤零
ピサ
右腕の火傷の話をした君の火傷の痕を想うアルノ川
甘い薬のような季節を予感して朝の植物園を歩いた
才能を庭で育てるメディチ家よ 確かに欠けている私の歯
玉座にはさらに玉座が腰掛けてそれは大人になるということ
あの日々を炎のような指先のくすぐったさが撫でるイタリア
白煙を言葉と指で探すとき大きな知性ほど狂わせる
牢獄の数に限りがあることを確かめ合った 夜の港で
天寵を帆にためながら老人は死の大海を漕ぐただ一人
墓碑銘のような手紙を読んでいる 黒い、大きな網を引きずって
仔羊を抱いた少女の落書きは記憶の山羊に食べられている
白い羽は扇のようにひらかれて無垢の寒さを昇る
老いた樹が枝を伸ばして太陽の光に届く負の乱雑さ
重力に逆らうことは喜びで知恵を讃える奇跡の広場
空間を光の枝が奪い合う大聖堂のランプが揺れる
ds^2 = 0 神性が摂理に宿るステンドグラス
美しい経路 なんども淘汰されてそれでも生きる 蟻の屈折
1 2 3 5 8 13 21 四角い墓と煙の螺旋
大理石 その傾いた鐘楼をふたりで落ちていく白昼夢
王冠のような洗礼堂を背にダンヌンツィオを読む君のこと
上るたび螺旋階段の傾きで支えて、支えられて、頂へ
ピサ 相澤零 @aizawa003
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