⛳️ ゴルフボールとご主人の小さな冒険

深澤澪

第1話ゴルフボールのはじまりのドキドキ

第1ホール

朝の空気が少しひんやりして、フェアウェイはまだ露に濡れていた。

ご主人はティーの前で立ち止まり、クラブを握る手に力が入る。

僕――小さなゴルフボール――はご主人の手元の小さなケースでじっと待つ。

バッグの中では、予備のボールたちがそっと見守っている。

心臓の音が聞こえるような静けさ。


「よし…行くぞ…」

小さくつぶやくご主人の声が、周りの空気を揺らした。

僕はその瞬間、少し弾かれるような感覚になった。


ぱーん、と打たれた僕は空中でくるくる回り、芝の上を転がる。

思ったより遠くへ飛んだけど、枝にちょっと当たって揺れ、足元の葉っぱに埋もれそうになる。


でもご主人の視線が、なぜかとても温かい。

僕は少し弾けるように揺れ、嬉しくなる。

ここから長い旅の序章が始まる――

二人で、まだ見ぬホールを歩いていく予感が胸に広がった。

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