第22話 サトルとライカ、村に帰る ~魔物の娘を連れて~
サトルとライカがアシュロフト村に帰って来た。
炎魔のバルルンを連れて。
「ただいまー」
「おかえりなさいませ。我が創造主、クサットル様」
「ただいま。ニナいる? 店番をゴリマッチョがしてるって事は、どこかに出かけてる?」
「さすがのご慧眼、感服いたしましてございますウホ。ニナ様は先ほど、ミネアリス様に頼まれてハンマーを配達に行かれました」
「ハンマー? ミネアリスさん、自力で教会を建てるつもりなのかな?」
「いえ。クサットル様の御創りになられたスカートを釣るアーティファクトを破壊するのだとか。私が頼まれたのですが、アーティファクトも私も同じクサットル様の産物ですので。それはいささか忍びないと申し上げたところ、ではハンマーをという流れになりましたウホ」
元司祭のセクハラが鬱陶しかったらしい。
しばらくするとゴーンという音が響いて、サトルは前世では除夜の鐘をついた事があったなと思い返す。
煩悩は消えなかったなと回想し終えたところでニナが戻って来た。
「あ! サトルさん! おかえりなさーい!」
「ニナ? 今の音は?」
「ライカちゃんのスカートを脱がせた大きな磁石を壊して来ました!!」
そういえばニナはサトルと初めて会った時も両刃の剣を軽々抱えていた。
力はサトルよりもずっと強いのである。
「あれ? そちらの方は?」
「あたいはバルルン!! 人間の女! お前か? お花の冠を作れるヤツって!」
サトルは簡単にバルルンを紹介した。
「魔物の子だよ。とりあえず急ぎでお花の冠が必要なんだって」と。
「はじめまして。ニナと申します。わたし、作れますけど。というか、作りましょうか?」
「本当か!? あ。でも、お父様が言うにはあたいが作ったヤツじゃないとダメらしいんだ。ニナ! あたいにも作れるかな? やっぱあたいには無理そうな感じ?」
「もちろん作れますよ! じゃあ村の外でお花を集めましょうか!」
「ニナ! いいヤツだな! お前も! 人間ってみんな割といいヤツなのか?」
ライカが村の換金所から帰って来た。
「師匠ー。薬草の換金終わったっすよー。はい、これ月謝っす。金貨5枚。ちなみに師匠はヒョッポリライト草を傷薬にしちゃったから換金するものなかったっすよね?」
「いいんだよ。ライカちゃん。バルルンのバルルンが元気にバルルンしているところを見るとね。俺、『すごくキク傷薬』を『創造』して良かったって心の底から思えるから!!」
「あ。そうっすか。良かったっすね」
サトルのテンションは上がるのに、それに反比例してライカの好感度だけが下がっていく。
バルルンがライカの腕に抱きついて言う。
「なあ! ライカも一緒に行こう! ニナがお花の冠の作り方を教えてくれるんだって! 初心者があたいだけとか寂しいんですけど!!」
「くぅぅぅぅ……。なんなんすか! この弾力は!! サトル師匠!! なんかもう感情がぐちゃぐちゃでわけ分かんないっすけど!! なんかバルルンちゃんのこれに惹かれる気持ち!! ちょっと分かったっす!! もちろんお花の冠、一緒に作るっすよ!!」
ライカがバルルンのバルルンとファーストコンタクトをして、なんだか男に対して少しばかり寛容になれたという。
「それじゃあゴリマッチョさん。店番を引き続きお願いしてもよろしいですか?」
「拝承。お気をつけていってらっしゃいませウホ」
アシュロフト村を少し出ると街道がある。
むしろ街道しかない。
街道以外は舗装もされていない、草花が生い茂っているところしかない。
こんなにお花の冠を作るのに適した場所もなかなかないかと思われた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃。
とある山脈にある魔王城では。
「ファロス様!! よろしゅうございますか!!」
「フフフッ。良い。バルズバラン。申してみよ。しかし先に非礼を詫びておく。余は今、手が離せぬゆえ卿に背を向けたまま話を聞くことを許せ」
「はっ。差し支えなければ何をしておいでなのかお聞きしても?」
「フフフッ。さすがは魔王軍四天王随一の智将。余の口からそれは言わせるか。……卿の結婚式に使うくす玉を用意しておるのだ!! フフフッ。フフフフフフッ!! ちなみにくす玉から舞い散る紙吹雪は先月の魔王城通信を細かく切って使った。白と黒の紙吹雪も魔族らしくて悪くないであろう?」
「はっ。ははぁー!! よもやこのバルズバランのために!! 魔王様が手ずからくす玉を!! 身に余る光栄にございます!!」
「すまぬ。いささか感情が昂ってしまった。して? 卿は何用か」
「はっ。我が内縁の妻と連絡が取れましてございます。いつでもこちらに呼び寄せる事、可能になってございますれば! その旨をお知らせいたしたく!!」
「フフフッ。存外早かったな。そういえばまだ聞いておらぬな。卿の妻の名は?」
「はっ。バルサミッコスと申します」
「フフフッ」
魔王ファロスがくす玉を天井に取り付けて、玉座から降りると言った。
「卿。娘のバルルンはまだ分かる。妻と卿の名前が似ておるのはどういうことなのだ? 出会った時は他人だったはずであろう?」
「ははぁー!! これは申し遅れまして、大変申し訳ございません!! バルサミッコスは吾輩の従妹にございます!!」
ファロスが「フフフッ。ロマンティックな関係であったか。つまらぬことを申した。許せよ、バルズバラン」と笑顔になった。
バルズバランにとってバルサミッコスは従妹。
子供の頃は一緒になって人間の村や町を襲っていたという。
兄のような存在のつもりだったバルズバラン。
その関係が心地よくて一歩踏み出せぬ思春期を過ごしたが、勇気を出して「共に人間どもを根絶やしにしよう」とプロポーズしたのはバルズバランが72歳の時。
その瞬間から従妹で幼馴染だったバルサミッコスはバルズバランの内縁の妻になった。
結婚式を挙げなかったのは従妹が相手という世間体を気にしての事。
「フフフッ。バルズバランよ。我が魔王軍は従妹との婚姻を禁止などしておらぬ」
「はっ。存じております」
「フフフッ。みなまで言わずとも良い。余に気を遣っての事であろう?」
「ははぁー!! 申し訳ございません!!」
「フフフッ。卿は時おり語彙力をどこかに忘れて来るようになった。先ほどから何度目の申し訳になるか。良い。卿の親愛を余は誇りに思う」
「ファロス様……!!」
手を取り合う、サトルの『とても強い剣』によって頭を強打した2人。
彼らの心根が元に戻ることはあるのだろうか。
「ひっひっひっひ!!」
「お前は氷鬼のギリアン!!」
「……私が出てくる度に初登場みたいな空気にするのをヤメてくれぬか。本当に変わってしまったな、バルズバラン。いや、ご報告が先だ。ファロス様! 魔王城の外壁にお花の苗を植え付け終わりましてございます!!」
「フフフッ。そうか。ならば余の魔力で成長力を促進させ、お花を咲かせよう!! ぬぅぅぅぅぅぅぅ!! はぁぁっ!!」
その日。
リデルコベルの人間たちにとって数百年の間恐怖の象徴だった魔王城が、色とりどりのお花咲き乱れるファンシーな姿へと変貌を遂げた。
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