運命を超える冒険譚 ー八つの宝石と自由への脱走劇ー

光野るい

第1話 身分制度

 ここカルマシオ帝国は、とんでもなく厳格で、とんでもなく理不尽な身分制度がある帝国である。シオンとミカエルは、この帝国の最下級身分“奴隷”として生まれ育った。


 食事は“ご飯”というより“気持ち程度の栄養”。衣類は“服”というより“記念品”。休息は“睡眠”というより“気絶に近い仮眠”だった。

 彼らに家族はいない。両親はとうの昔に飢えて死んだ。


 そんな環境でシオンがつぶやいた。

「今日、ナエルが死んだ…。もう、何人目だ…?」

 ミカエルが静かに返す。

「こんな国じゃ何人死んでもおかしくないな。俺たち、完全に“消耗品”扱いだしな」

 二人は互いにため息をついた。

 つい先日も、仲間達が脱走を試みたが捕らえられ、全員処刑された。


 夜、奴隷地区の片隅。シオンがぼそりと言う。

「なあ、ミカエル…このままじゃ俺たちも死ぬぜ」

「だな。最近、疫病も流行ってるし…。せめて食料がもう少しあればな」

 しばらく沈黙が続いてから、シオンが突然言い出した。

「なあ、グラン聖窟へ行ってみないか?」

 グラン聖窟――そこには“宝物を守る魔神がいる”という伝説がある。

「お、おい…。それに脱走して洞窟に行くなんて、どっちにしても命がけだろ」

「でも、このままじゃ確実に死ぬ。だったら、賭けてみるしかないだろ」

 シオンの覚悟は本物だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る