第2話 奴隷地区からの脱走

 翌日の夜。シオンはそっと身支度を始めていた。隠しておいたわずかな食料と松明を手に、できるだけ“存在していないかのように”足音を消して抜け出そうとする。

「……シオン。俺も行くよ」

 暗がりからミカエルの声がした。

「いいのか?死ぬかもしれねぇぞ」

「分かってる・・・ここにいたら、どのみち死ぬ」

 二人はそっと、寝床から出ていった。


 夜になると看守の警備が甘くなる。特に北側は看守の人数が少ない。これはシオンが数カ月かけて丹念に観察した成果だった。


 うまく、奴隷地区から脱走できた。

「伝説によると、このまま北へまっすぐ進むとグラン聖窟のはずだ」

 シモンが言う。

 北極星を頼りに北へどんどん進んでいく。


 やがて、草原が広がり、草原の前方に大きな洞窟があった。

「あれじゃないか?」

 シモンが叫んだ。

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