魔法少女♡ミミカ
頭器
変な深夜アニメ
もう深夜2時か。外は当たり前だがすっかり暗くなって静まり返っている。俺は深夜アニメを見るのが趣味だ。通常の時間にやっているアニメに比べてマイナーなものだったりアングラなものだったり、掘り出し物がたくさんあって面白い。
今日も12時くらいからテレビの前でゴロゴロしている。
「そろそろ群青の恋やる時間か...」
群青の恋とは今1番ハマっているアニメだ。恋愛系なのにどこか普通の物語とは違うところに燻られる。チャンネルを回すといつものオープニングが流れて…なかった。もうとっくに始まってる時間だ。テレビに流れているのは別のアニメのオープニングだ。
「魔法少女♡ミミカ?」
初めて聞いた名前だ。いやおかしい。いつもはこんなアニメやっていない。スマホを取り出してSNSで『#群青の恋』と検索した。色んな人の反応を見るにもう始まっているはず。チャンネルも間違えていない。番組表を確認してみるとそこにも『魔法少女♡ミミカ』が書かれていた。
訳が分からない。しかし、現在の時刻でやっているアニメはこれしかない。まだこの後からも見たいものがあるので仕方なくこのアニメを見てみることにした。
色々している間にオープニングは終わって道路を歩いてるシーンへ変わっていた。制服を着ているオレンジ髪の少女と白くてもふもふしてそうな浮遊マスコットが並んで話している。内容から察するに、少女がアニメのタイトルにもあるミミカらしい。ミミカはマスコットをキューたんと呼んでいる。ミミカがなんか言ってる。
「も〜。どこにいるのよ〜」
何かを探しているのか?番組表のエピソード名を見てみると『探し人み〜っけ!』と書いてある。なんとも変なタイトルだこと。
かれこれ見始めて10分くらい経っただろうか。なんかおかしい。というかかなりおかしい。セリフがあれ以降何も入っていない。映像もただ町を歩いているだけの光景がずっと続いている。魔法少女要素もストーリー要素も何も無い。再度SNSで反応を見てみると、『あとちょっとだね』『ミミカおめでとう!』『今どこいるの〜』変なアニメだし変な反応ばっかりだ。ただ、更新する度に10件くらい新着の投稿が出てくるため一応人気のアニメらしい。というか、俺含め深夜に何を見てんだか....。
20分。もうそんくらい経った。未だに映像は代わり映えのしない散歩の風景。セリフも効果音もなんにもない。
少女が商店街に入った頃俺は違和感を感じた。店の名前がいくつか映っているのだがどれも聞いたことある名前だ。『秋下商店』も『三宮山醤油』も『くりさと服屋』も近所の商店街『しあわせ通り』にある店の名前だ。まあただアニメに取り入れただけかもしれないがそう考えてもおかしい。今日も俺は『しあわせ通り』に行ったのだが、アニメに映ったたぬきの置物は今日初めて置かれたものだ。作画なんて何日に終わってるはずなのになぜ今日置かれたたぬきが描かれているのだろうか。
そんな考え事をしてるとミミカがスキップをし始め歌を歌っている。
「わたし〜は魔法〜少女〜ミミカ〜
世界一かわい〜お〜んなのこ〜」
アニメから聞こえる歌に重なって同じ歌がどこからか聞こえる。押し入れ?引き出し?いや違う。窓の外からだ。カーテンを開けて外を見ると明らかに雰囲気の違うアニメ調のポップな感じで描かれている少女と白いマスコットがスキップをしていた。おかしい。あんなのが現実にいるわけない。そう思ってると少女がスキップをやめこっちを向いた。首を100度以上傾げながら、
「探し人み〜っけ!」
テレビからも外からも聞こえる。あれは間違いなくミミカだ。アパートの駐車場へ走ってくる。嫌な予感がする。扉は鍵がかかってる。窓も閉まってる。テレビは....砂嵐が映ってる。ノイズが聞こえる。SNSを見てみると、『あははははは笑笑』『みつかったねーーー!』『ミミカとあそぼ〜!』投稿している全てのアカウント名がミミカになり、アイコンもミミカになっている。なぜ?疑問符を抱えると、『ドンドンドンドンッ』扉が勢いよく叩かれると「ミミカとあそぼ〜よ〜」そんな声が聞こえる。ノイズの音が聞こえなくなるとテレビになにか映し出された。アパートだ。俺のアパートだ。ミミカが扉に頭を何度も打ちつけている。
「まぁほうであそぼおうよー!!」
やばい。俺はベッドに縮こまって落ち着くのを待った。
どれくらい経っただろうか。何分?何時間?ずっとあの音、声を聞きながらどれくらい縮こまっていたのだろうか。ようやく音が落ち着いた。扉が開いた音も破られた音も聞こえない。ようやく終わったんだ。時刻は3時24分。テレビを見てみると真っ暗闇が映っていた。電源が消えているのだ。リモコンで電源を入れると普通に深夜バラエティー番組がやっていた。
安心したらトイレに行きたくなってきた。俺は立ち上がってリビングの扉を開けた。
「ミミカ遊びたいなぁ〜〜〜!!!
なんで無視したの〜〜~!!!」
顔も服も血だらけで大きなステッキを持ったミミカと赤いニヤリ笑いのマスコットがそこに立ち尽くしていた。首をブルンブルン震わせながら彼女は笑っていた。
魔法少女♡ミミカ 頭器 @touki_a
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます