第25話 (エメライン視点)

「おねえさまは、ずるいわ」


 透明度の高い硝子ガラス窓から外の景色をぼんやりと眺め、エメラインはひとりごちた。

 いきなり知らない男たちに踏み込まれ、よくわからない証明書を盾に身ひとつで邸宅から追い出されて、すでに4ヶ月 ――

 頼っていった姉は嫌な顔ひとつせず、エメラインと夫を公爵家に置いてくれた。特に仕事をさせられるようなこともなく、専属のメイドまでつけてもらい、3食昼寝つきの生活である。

 だがエメラインは不満だった。


「宝石商を呼ぶのは、おねえさまのため。新しいドレスを仕立てて夜会に出るのも、おねえさま。旅行に連れていってもらうのも、おねえさまだけ。ひどいわ。おねえさまばかり」


 しかも姉の夫は、フタを開けてみれば、神秘的なまでに美しい青年。ウン百歳の老人だという噂は、なんだったのか。

 知っていれば、あたしが嫁ぐんだったのに ――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る