Ride2 ファーストライド

「また三角木馬か。まったく、ボスの趣味はよくわからんぜ」


 私は両手を後ろで縛られ、カストロールが三角木馬と呼んだモノに跨がらせられています……。


「どうだ……? そろそろ気持ちよくなってきただろう……?」


 パンッ!


 ボストロールは、何度も私のお尻を叩きます。


「あぅっ! い、痛いだけです……」


 お尻を叩かれる度、木馬の背を挟んでいる脚の力が抜け、尖った背中が食い込みます。

 となりの牢屋から、エルフさんが叫んでいます。


「くっ! なんとむごいことを……! やめろ! やるなら私をやれ!」


「あー、お前はいいや……。なんか演技過剰というか、わざとらしいんだもん」


「な、何だと!?」


 ボストロールはエルフさんにそう言って、独り言のように言います。


「スパンキングはイマイチか……。どれ、これならどうかな?」


 そう言って彼が取り出したのは……


「ろ、ローソク……?」


 彼は松明でローソクに火を灯し、それを私の背中の上で傾けます。


 ポタッ……


「熱ッ!?」


 私のカラダがビクッとして、木馬がゴトッ、と揺れます。


 ポタッ……


「あうぅっ……!」


 ガタンッ!


「くっ……! もう我慢できん! お前たちの目的はエルフだろうが……! 私をやれ!!」


 ボストロールは彼女の言葉を無視して、私への拷問に集中しているようでした。


 私は手下のカストロールによって、仰け反るような姿勢を取らされました。……ボストロールは、私の胸やお腹……そして、その下にまで……ロウを垂らしはじめます。


 ロウがカラダに付着する度、私のカラダは熱さにビクッと反応します。その度に、木馬がそれに応えるかのように、ガタッ、ゴトッ、ガタガタ……。

 ポタッ、ピチャ……ポタポタッ……。ロウがリズミカルに、私のカラダに垂れてきます。


「あっ、んっ……あぁッ!」


 あれ……? なんだか、この振動……。どこかで……。それに、カストロールから匂う甘い香りも、なんだか……。


 ガタ、ガタッ、ガタガタガタ……


 だんだんと、振動が一定のリズムを刻み始めます。私のお腹の奥の方にまで伝わってくるようでした。熱くて、痛いだけのはずなのに……なのにぃ!


「あっ……ふっ……! くうぅんッ!!」


 ビクッ……! ビクッ……!

 はしたない声を漏らしてしまった瞬間、牢屋の壁が明るく照らし出されました。キラキラと光って、なんだか綺麗……。ぼんやりした頭でそれを眺めていましたが、やがて、光っているのは、私のカラダ……そして木馬だということに気づきました。


「な、なんだ!? お前、何をしている!?」


 その光にボストロールが驚き、エルフさんの声が鉄格子ごしに聞こえます。


「この光は……!? 異国の少女、何があった!? ……くそ、ここからではよく見えん!」


 私……この子と繋がってる……!? うまく説明できないけれど、たしかにそう感じました。この子の気持ちが理解わかる……この子を乗りこなせる、と。

 

 でも、バイ助君意外の子で、こんな風に気持ち……く、なっちゃうなんてぇ……!


「か、カストロールさんたちを、やっつけて! ああんッ!」


 ズガッ!! 私の言葉に従うように、三角木馬さんが飛び跳ねて、カストロールの一人を弾き飛ばしました。


「な……この女、何しやがる! お前ら、取り押さえろ!!」


 ボストロールの命令に、手下たちが私と三角木馬さんにじりじりと近づいてきます。それを……


 バカラッ! ドガッ!

 ガタタンッ! バキッ!


 三角木馬さんがカストロールたちを蹴散らし、そのうちの一人が壁に激突。石が崩れ、向こう側からエルフさんが現れました。

 胸と腰に最低限の布を巻いただけだけど、気品があって……金髪で、緑色の目で、すごいびじ


 ガタンッ!

「んんっ!」


「!! これは……なんという……」


 エルフさんは手で目を覆っていましたが、突然……


「! 後ろだ!」

 

 そう叫んで、壁に激突して気絶したカストロールの腰から素早く剣を抜き……


「でやぁッ!!」


 一瞬でした。私の後ろに迫っていたボストロールのそばを駆け抜けたかと思うと……


 ……ドサッ!


 ボストロールは、その場に倒れました。


「ふっ……。拷問と同じで、ヌルい奴め」


 す、すごい……。


「異国の者、このまま逃げるぞ! 私を乗せられるか!?」


「た、たぶん大丈夫です!」


 でもその前に……


「エルフさん、それ! そのヘルメットをお願いしますぅ!」


 私の頭を守ってきてくれた、ショウエイのヘルメット……! あの子だけでも……!


「ヘルメット……? この兜のことだな!?」


 エルフさんがわかってくれてよかった……! 彼女はそれを脇に抱え、木馬の後ろに飛び乗りました。


 ガタタッ! ガタタッ!


「あうっ! こ、この振動は、たしかに……」


「え!? なんですか!?」


「な、何でもない……。き、気にするな! 行け!」


 通路を突き進んでいくと、何度もカストロール達が私たちの前に立ちはだかりました。


「どいてくださいぃ〜〜!」


 それを蹴散らしながら、私たちは命からがら砦を脱出しました。

 後ろを見ると、たくさんのカストロールが追いかけてきています。なんとかして引き離さないと……!


 バカラッ! バカラッ! バカラッ!


「お前、名は!? ひぐ……ッ!」


 ガタタッ! ガタタッ! ガタタン!


「み、御手洗です! 御手洗輪子みたらいりんこ! ……あんッ」


「ミタライか! 変わっているが、いい名だ!」


 バカラッ! バカラッ! バカラッ!


「ん……ッ! あの、あなたのお名前は!?」


「私の名は、あぅッ……! あ、アウラだ!」


 私たちは裸同然の格好で、三角木馬さんに揺られながら、カストロールの追っ手から逃げていきます。


 バカラッ! バカラッ! バカラ……

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