第2話 宝物庫
「うりゃぁぁぁぁ!」
バンっと厚さ50センチはありそうな石扉を蹴り破ると、大きな部屋に繋がっていた。
高校の教室くらいの広さで、天井には光る石が照明代わりに設置されている。
壁際には金のインゴットや、麻袋に詰められた大量の金貨。他にも見たこともない緋色の鉱石や宝石が保管されている。
部屋の奥にはショーケースが並び、壮麗華美な剣や鎧、骨董品の壺や絵画などの芸術作品まで様々な物があった。
てっきり出口だと思っていたのに勘が外れてしまったらしい。
「ねえどうやったら逃げれると思う?」
「私に聞かないでッ!」
「けど、私が逃げられなかったら姫様も一生このままだよ?」
カチャリと拳銃を突きつけると、ブルブルと震えている姫様が来た道を指さす。
「わ、私を人質にすれば堂々と逃げれますわ……」
「なるほどね? じゃ退路は確保できたも同然な訳だ」
デザート・イーグルの銃口を姫様に突きつけながら、左手でハンマーを構える。
「ちょっと貴女正気なの!?」
「だ、だって、お宝がこんなにあるし!」
身寄りのない女子高生が異世界で生きていくのは大変だし、ポイントはいくらあっても足りない。
というか、ぶっちゃけもう色々ありすぎて自分が何をやらかしていのか、半分も理解していない。と、とりあえず、目の前にお宝があったら普通砕くでしょ!
「冷静になりなさいッ、ここにはリーゼ王国2300年の歴史と文化が詰まっているのよ!」
「精神的苦痛を味わった賠償金みたいなもんだと思って諦めてね」
コツンと近くにあった壺を叩くと、ウィンドウ画面が表示された。
『所有物判定になっていないのでポイント化できません』
「あ、あれ!? 駄目みたい」
「な、なら諦めて出口に向かうのよ桃色髪の娘!」
いやいや、方法はあるはず。ここまできたらなにが何でもポイント化してやるぞ。さて、どうすれば私の物判定になるか考えよう。
「貴様ッ姫様を解放しろ……ぐはぁ!?」
パンッ!
「ミラン公爵が撃たれた!?」
「あの女、無言で撃ってきたぞッ!」
ずらずらと兵士を引き連れてきた貴族達にデーザト・イーグルをぶっぱなして、思いついた。
「おらおらーッ、ここは完全に私が占拠したーッ、宝は全部私の物だッ、部外者は出て行けーッ」
「ぶ、部外者はお前だッ!」
武力行使による実効支配である。
その検証のためにどちらがこの場で上かをわからせる必要がある。
「姫様邪魔だからそこで伏せててね。ちょっとでも動いたら撃つよ?」
「もう嫌ーッ、だれか助けてぇぇぇ!」
助けてほしいのはこっち方だっての!
このままじゃ埒が明かないから、もっと強い武器を買っちゃおうーっと。
ポチポチと操作すると、武器欄にアサルトライフルのAK-47という比較的安い銃があった。ちなみに購入画面はこんな感じだ。
◇AK-47
・本体価格 80万ポイント
・オプション一覧
□魔化
性能を向上させる
価格が本体価格から50%上乗せ
魔力消費量大幅アップ
□超魔化
性能を劇的に向上させる
価格が本体価格から100%上乗せ
魔力消費量超大幅アップ
□自動補充
ストレージの倉庫から弾薬を自動で補給する。
価格が本体価格から20%上乗せ
魔力消費量アップ
□耐久力向上
武器の耐久力を大幅に上昇させる
価格が本体価格から20%上乗せ
この他にも様々なオプション機能がずらーっと並んでいる。とりあえず、ポイントはあるので一括で全オプションを選択。最終価格は280万ポイントだ。ついでに弾も大量購入。
二丁の拳銃をポイっと捨ててAK-47をぶっ放す!
ドドドドドドド……
「オララララララ宝は全部私のもんだぞぉぉぉ!」
「うわぁぁ壁が貫通している!」
「誰かあの化け物を止めてくれぇぇ」
「ひぃぃぃぃ!」
ドドドドドドド……
「ミラン公爵がまた倒れた!」
「誰か回復魔法を!」
耳がキーンとする煩い発砲音と、広がる煙硝の臭い。ガリガリと石壁が削れて土煙が舞う。
あー心臓がバクバクする。アドレナリンがですぎて、余計に意味分かんなくなってきた。もうどうにでもなれ。殺されるよりマシだし。
「そろそろいけるんじゃないかな」
左手でライフルを撃ちながら、ハンマーで壺を叩く。すると、見事に光の粒子となった。
―――おお、成功だ。
この調子でどんどん砕いていこう。
「えい、ハンマー・プライス!」
『レオナルド・ダ・ヴィンチの杖 レアリティAA 10億ポイント』
『ジャンヌ・ダルクの魔剣フィエルボア レアリティS 300億ポイント』
『ロビンフッドの弓矢 レアリティS 350億ポイント』
たった数点砕いただけで、とんでもないポイントになってしまった。凄いな、これだけあれば生活に困ることはなさそうだ。
「や、やめろ! ここにあるのは歴代異世界勇者が残したリーゼ王国の国宝だぞ!」
また回復魔法で復帰したミラン公爵が叫ぶ。ゾンビかよ。
「うっさいわ! そっちが先に私が利用しようとしたんだから文句言うなっ!」
「死ね勇者!」
「おっと!」
槍が飛んできたので、蹴りで弾き返す。
どんだけ私強くなってるんだよ、自分でもドン引きだわ。
けどこのままじゃ集中できない……そうだ、さっき見つけたあれを買うか。購入したものを姫様の足元に設置して踏ませる。
「な、なにこれぇ……」
「対人地雷、足離したら爆発して死ぬから」
「!?」
「解放して欲しかったらこれでアイツら撃ってね」
デザートイーグルを二丁渡す。
うるうると涙目になった姫様が貴族に向かって乱射した。
「ひ、姫様!?」
「知らない知らない知らない、もう許してくださいましぃぃぃぃ」
「姫様ぁぁぁぁ!」
その隙に私は宝物をどんどんポイント化していく。
ふむふむ、金属、鉱石、宝石、硬貨などはアイテムと判断されないらしく、ポイントにはならなかった。宝物が半分になった頃に、ようやく私は動きを止めた。
よくよく考えたら王様とか国民はまともな人達かもしれない。財産が尽きたら無関係な人達にしわ寄せがいく……もしかして私がやってることって犯罪なんじゃ……冷静になるほどに、後悔と緊張で手が震えて喉がカラカラと乾いた。
「……こ、この辺にしておくか、優しい私に感謝してよね」
「ここまでやっといて今更っ」
「ま、まあ自業自得でしょ」
最後に、一番ヤバそうな雰囲気をビンビンと迸らせている黒い棺を見つめる。
「それはっ! アーサー・ペンドラゴンが災厄の魔王の魂を封印したとされる伝承の棺だ!」
「そ、そうなんだ、わかった、わかったよ、やればいいんでしょ」
対抗手段のエクスカリバーもミラン公爵の伝達ミスで失ったしね。私も罪悪感あるし最後に勇者らしいことをしておこう。
「ハンマー・プライス!」
『伝承の棺 レアリティSSS 9999億ポイント』
高っか!
一発でスキル画面の保有ポイント数が9999億でカンストしたんですけど!?
「な、なんでぇぇ消すんだぁぁ貴様ぁぁ」
「……えっ、危ないから消した方がいいって話じゃないの?」
「一言もそんなこと言ってないわぁぁぁぁ! もし封印が解けて魔王が復活したら世界の終わりだぞ」
「えぇ……」
……さ、先に言ってよ。
だらだらと汗が止まらない、顔熱っつ。
姫様の手を引っ張って抱き寄せる。
「逃げるよ」
「じ、地雷は!?」
「ああ、それダミートラップだから」
「!?」
まあ、伝承なんて大抵嘘っぱちだしね。
と、とりあえず脱出しましょう。
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