教科書大嘘!本当の日本史
Omote裏misatO
鎌倉時代 — 北条政子と“写し見ライブ”の時代
おまえたちは、鎌倉時代を武士の乱世だと思っているだろう。
剣と鎧と泥臭い争いばかりの、あの荒れた世を。
……ああ、それも間違いではない。
だがな、あの時代は “世界最先端のライブ配信文化” が花開いた時代でもあった。
信じられない?
まあ、歴史の教科書には書かれていない。
当然だ。教えるわけがない。
あれを知ってしまえば、現代の技術者たちは泣き崩れるだろうからな。
鎌倉には「写し見(うつしみ)」という技術があった。
磨き上げた青銅鏡をいくつも連ね、光を跳ばし、また跳ばし、最後には空に巨大な姿を映し出す。
……そう、今でいうところの“巨大プロジェクション”だ。
夜になると町の広場に人が集まり、
空に浮かぶ人物の影を見上げては騒いだ。
写し見に映る人物は誰か?
もちろん——鎌倉の女帝、北条政子だ。
その人気はすさまじかった。
健康法、恋愛相談、髪型、化粧、水の選び方、気の整え方。
政子が語ることはすべてが最新で、すべてが正しいと信じられていた。
政子の口元が揺れるたび、
鎌倉女子たちは黄色い声をあげ、
コメントを叫んだ。
「政子さまー!今日の美容法を教えてください!」
その声はどうやって政子に届くのか?
洞窟と風の通り道を利用した “響応(きょうおう)” という装置だ。
声を放つと、
それが風に乗って反響し、
政子の屋敷に届く。
政子は笑顔で答える。
「今日は水素湯よ。刀匠に頼んで作ってもらった“鍛冶水”を使うと、お肌が整いますの」
刀を鍛える途中で水につけるだろう?
あの瞬間、水が“水素水”になるというのだ。
もちろん、今となっては誰も再現できない。
刀匠も消え、技も消えた。
鎌倉女子たちは政子の写し見ライブを見るために、
毎晩のように町へ駆けだした。
「写し見、もう始まってるよ!」
「急いで!政子さまの開運メイクが始まる!」
……どうだ。
これでも、鎌倉時代を“質素で荒れた時代”と思うか?
あの時代は、
世界で最初にインフルエンサー文化が成立した時代 なのだよ。
そして、政子が語った言葉、
彼女の美容法や恋愛指南、養生術。
そのすべてが、鎌倉が滅んだ瞬間に綺麗に消えた。
いつもそうだ。
技術とは、時代と運命をともにする。
時代が終われば、技術も消え失せる。
……さあ、次はどの時代を語ろうか。
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