スレ番42の朱色の戦績


 あ゛ー、やっと全部倒せた……


 約3時間……新たに神域を展開してから、全ての敵を倒すのに掛けた時間だ。

 倒しても倒しても定期的に敵が湧くから、思ってる以上に数が減らないのが辛かった……


 疲労困憊こんぱいの体で、車のトランクからペットボトルの水を取り出し一気に飲み干す。


 ふぅ、体に染み渡る……


 そういえば起きてから水分取る暇もなく、戦闘突入だったからな、喉も乾くはずだ。


 喉を潤した後、槍を武器収納庫に戻すと、停めてある車にもたれ掛かるようにして、ズルズルとダンジョンの地面に直に座り込む。


 もう少しすれば再び敵が湧いて出るのは分かっているが、少しだけゆっくりしたい。

 さすがに寝起きで、すぐの戦闘は消耗が激し過ぎる。


 20分ほどで、心と体を休めて、何とか気力を取り戻すことが出来た。


 神域の外を見れば、もう2体ほど敵が湧いている。

 何だか敵との遭遇頻度高くないか? これが運の値が低い弊害ってやつなのかな……

 能力値の説明にも運の値は敵との遭遇率に影響するって、書いてあったしなぁ。

 運の値が低いのを嘆いても仕方がない。低いものは低い……割り切るしかないか。


 それよりも気になっているのは、再び神域を展開したときに、なぜあんな予想外のことが起こったかということと、神域にスライムを閉じ込められたということだ。

 

 どちらを解明するにしても、まずは能力値の確認からだ。オレはステータス画面を開いた。


**********************

STR(力)・・・156

VIT(生命力)・・・106

DEX(器用さ)・・・81

AGL(敏捷性)・・・103

INT(知力)・・・265

MEN(精神力)・・・540

LUK (運)・・・50


HP  524

MP  615


ATK(物理攻撃力)・・・156(+25+7)

MAT(魔法攻撃力)・・・―

DEF (物理防御力)・・・104(+25)

MPR(魔法防御力)・・・402(+0)


装備品

武器 初めての槍(+25)

頭 初めての兜(+10)

胴体 初めての軽鎧(+15)

盾 ―

その他 ―

アクセサリー ―

**********************


 能力値諸々について、色々感想はあるが、画面を見て新たに神域を発動させた際に、予想外のことが起こった理由は理解出来た。


 一言でいえば、原因は精神力の大幅増加だ。


 前に能力値を確認した時、精神力の値は510だった。

 それが今回は540……一気に30も増えているのだ。

『その存在は安寧の源泉』の神域の広さは、最大で術者の精神力✕1/100m、特に広さを設定しない場合は、最大値での神域展開となる……というのが、効果範囲の内容だ。


 先ほど新たに展開した神域は広さを設定しなかったので、神域の広さは最大値つまり、現在の精神力540✕1/100mとなり、5.4m四方で展開されたはずだ。

 最初の神域発動時は、精神力は510だったので、神域の広さもそれに合わせて、5.1m四方だったと考えられる。

 つまり新しい神域は古い神域より30cmほど広いのだ。

 周囲に何もなければ、特に問題となるような違いではない。


 ただ新たに神域を展開した時、神域の壁周辺には敵が張り付いていた。

 この『壁に敵が張り付いていた』というのが重要で、敵側から見ると、壁が自分たちの居る場所にいきなり出現したということになる。

 神域の壁はこちらが触る分には、硬さなんてあってないようなものだが、敵側からしてみれば侵入できない程度には硬い。

 

 現実世界でもし自分の身に起きたら……と考えるとその恐ろしさが分かる。

 強度のある壁が自分の体を貫通して出現するのだ。出現地点が自分の立ち位置からズレていれば無傷だが、ピンポイントで壁の出現位置に立っていたなら、運が良くて体の末端部分の切断、運が悪ければ、先ほどの敵のように冠状断され即死である。

 

 とにかく、たった30cmの神域サイズの違いによって、先ほどの7体の敵はお陀仏と相成ったわけだ。

 まぁ、今度から神域作る際には、広さを指定しておけば、今回みたいなことは起こらなくなるだろう。

 しかし、このイレギュラーも悪いことばかりでもない。

 偶然の産物ではあるが、神域で敵が切断出来ることが判明したのだ。これから検証するスライムを神域内に閉じ込めた事象と併用出来れば、神域をもっと有効活用出来るはずである。


 上手く使いこなせれば、強力な攻撃方法になるに違いない。 

 それにしても、信じるだけで、あのお方はこんなにも力を与えてくれるのか……


 あのお方の存在がオレを守ってくれている。


 離れていてもなお、あのお方は自分のような矮小な存在を守ってくれている。

 官僚時代、近くにいた愚民どもは誰も守ってくれやしなかった。

 それに比べ、あのお方は直接お会いしたことがないにも関わらず、惜しみなくその愛情を注いでくださるのだ。

 いや、愚民どもと比べること自体が、あのお方への冒涜か……

 オレとしたことが反省せねば。


 こんな恩恵をもたらしてくださる、あのお方……早くお会いしたい。しかし今はまだお会いしたところとて、何の力にもなれないに違いない。

 せめて今はこの力を行使することによって、確かにあのお方との繋がりを感じて、己の心を慰めよう。


 それにしても、神域とはなんて素晴らしい力なんだ。癒やすだけでなく、敵からの脅威まで打ち払うことが出来るなんて……


 なんとしてでも、この神域という力を十全に扱って見せる。

 あのお方がオレに力を与えて良かったと思えるくらいこの力で強くなってみせる!

 そして直接、お褒めの言葉を頂けたら、それは天にも昇る気持ちだろうな。


 いかんいかん、まずはスライムを神域内に閉じ込めた事象について検証しなければ……


 ただ検証はしたいが現状、MPが615しかない。

 スライムへの神域展開の時、咄嗟に今まで通りのMP消費で展開したからな。

 今考えればスライム一匹に過剰すぎた。

 冷静なつもりでいてもイザとなると、焦りから適切な判断が出来なくなるのは何とかしないと……その辺り、今後の課題かな。

 慣れてきたとはいえ、ダンジョンに入って敵を倒し始めてから半日程度だ。

 長年に渡って温々ぬくぬくと平和を貪ってきたのだ、そんな心根が僅か半日で治る訳ない。

 この辺りの改善は慣れていくしかないか。

 もう少しスキルや能力値強化したら、対多数の戦闘経験も積まないと……


 MP回復待つ間に、神域外の敵減らしておこう。

 武器収納庫から槍を取り出し、軽く外の敵を間引く。

 そういえば、さっき能力値確認した時、物理攻撃力の数値横にあるカッコ内の数値増えていたな。

 まずは神域の件を確認しようと思って、そこは後回しにしていたが、検証するにもMP回復するまで待ち時間だし、今のうちに確認するか……

 結構、戦闘したから経験値も貯まってるだろうし、そっちも確認しておこう。


 オレはそんなことを考えつつ、右手で槍を神域外の敵を突き刺しながら、左手でステータス画面を表示して、スキルと経験値の確認し始めるのだった。

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