本作はエリトニー公国という半島国家を舞台にした叙事詩で、趣の異なる第一部と第二部に分かれて、物語が展開されていきます。
第一部では、エリトニー公国の王ウォレム、王妃のサラ、サラの従者メラニー、ホランド王国の貴族ジュリアン、彼らを中心としたどろどろの恋愛模様が描かれます。人間の醜い利己心、そして登場人物たちの因果応報な結末、人生や恋愛についていろいろ考えさせられる、文学的な物語でした。
そして、第二部では、主役が交代します。焦点を当てられる人物は、ウォレムとメラニーの子たち、セシルとアロイス。心温まるエピソードと共に彼らの成長が描かれていく。
練りに練られた政治や経済の話もふんだんにあり、読みごたえがあります。
そして大人になった彼らはついに戦地へと赴く。
英雄たちの高潔な意思を受け継いだ彼らの姿から目が離せませんでした。
精緻な文章で描写される、丁寧かつ迫力のある戦闘シーンも素晴らしかったです。
親子二代に渡って語られる、壮大な物語。読み終えたあと、大きな感動と深い余韻が心地よい読後感をあなたにもたらしてくれるでしょう。是非ご一読を。
終始感情を揺さぶり続ける、壮大で重厚な物語がとても魅力的でした。
エリトニー国。その国に住む王が、サラという美しい女性を妃とするものの、「彼女の美しさを誰の目にも触れさせたくない」と思ったことから石牢に幽閉するようになってしまう。
あくまでも王の夜伽をすること以外、何一つ役割を認められなくなってしまったサラ。
だが、状況はある時に大きく変わって来る。隣国ホランドから来ていたジュリアンがサラに恋焦がれるようになり、逢瀬を重ねるようになっていく。
ここからの展開がもう、強烈なインパクトを感じさせてくれるものとなりました。
桐生操の『本当は恐ろしいグリム童話』とかにも出てきそうな、『容姿にコンプレックスを持つ王と美しい王妃』の関係とか。嫉妬に狂った愛憎劇が生まれたり、それを軸としての隣国ホランドとの関係性が大きく変化していったり。
国家の歴史ではあるけれども、それを動かすのはあくま『感情』というもの。先を見通し平和を望むような知性ではなく、個人レベルの嫉みや憎しみなどにより、国民全体を巻き込んでの大きなうねりが作り出されてしまう。
タイトルに「年代記」とある通り、物語はサラたちの話だけでは終わりません。嫉妬心が生み出した一つのうねりから、国家は次のフェイズへ。そして王の血を受け継ぐ者たちが新たに物語を動かしていくことになります。
この作品のジャンルはファンタジーではあるけれど、中世のどこかの国で本当にこんなことがあったんじゃないか、と思われるような「歴史」としての凄みや重み感じられるのが魅力でした。
時に愛憎劇だったり、また別の年代では盛者必衰となるような無常観だったり、更には国と国との手に汗握る戦略的な対決だったり。年代によって様々な物語が展開され、読者の心をぐいぐいと引っ張ってくれるものとなっています。
とりあえず第一部だけでも、と読み始めたら次のエピソードも、そのまた次のエピソードもと夢中になって読み進めることになりました。
最終的に、エリトニー国はどのような運命を辿ることになるか。必死に己の宿命を全うしようとする人々。その中では恋もするし、悲しい別れも経験する。『人生』や『歴史』という重厚な物語の数々を味わうことのできる、充実感たっぷりの作品でした。
時代や歴史というのは、まさに人間の思考や行動の積み重ね。
こちらの物語には、喜怒哀楽も生老病死も全てあり、無いものなんて無い、と感じるような盛りだくさんのお話でした。
美しく悲しいお妃様、嫉妬にかられる王様、お妃様を助け出したい騎士、お妃様に嫉妬する若い娘。
そして時代は流れ、歳なりにみずみずしく未熟だった娘は、自分を知り、他人を知り、愛し愛され、賢く、強い女性となって。
英雄が生まれ、彼等もまた自らや外の世界と奮闘する・・・。
特に、女性の戸惑いや、振り切ってからの心理描写がとても胸を打ちます。
中世くらいから近代への差し掛かりくらいまでを駆け抜けているようなスピード感でした。
ぜひご一読くださいませ。
大国に囲まれた小国エリトニー。
たぐいまれな美貌を持つ王妃は愛憎に翻弄され、
後の王妃は壮絶な人生を歩む。
命がけで守られた麗しく聡明な王子女が、
いかにして成長し、何を為したか。
一国の興亡にある政治史、経済史、戦記と余すことなく
この史記には編纂されている。
その上、関わりある数多くの勇士、知者達の生動感のある姿は
もはや人間賛歌である。
さて、この壮大なる歴史を誰が編纂したのだろうか。
まずはこの書を手に取ってごらんください。
長い史記の中で混乱しそうだとご不安なら、ご心配には及びません。
合間に、人物や周辺国の状態を小括してくれる俊才なる語り手が、
貴方を迷わせることがないでしょう。
語り手は巻末で、貴方を待っています。
そして、この史記を著した筆者に尽きない賞賛を贈り、
皆様には、この書をおすすめいたします。
どうぞ、ご一読を。
エル・ディナス、この祝福と共に。
海に囲まれた小国エリトニー公国。
英雄と称えられる王に愛され、
そして恐れられた王妃サラは、
美しさゆえに、城から切り離された塔に幽閉されていた。
彼女に仕えるのは、若き侍女頭メラニー。
王妃を心から敬愛し、支え続ける彼女は、
その献身の裏で、自身の美貌と欲望、
そして報われぬ恋心を静かに育てていく。
一方、王の側近として仕える副侍従長ジュリアンは、
政治と謀略、忠誠と野心の狭間で、
王と王妃、そして侍女の視線を集めていく。
閉ざされた塔。
青い鳥。
夜毎繰り返される王の訪れ。
愛と忠誠、崇拝と嫉妬が絡み合い、
やがて一人の侍女の心は、
取り返しのつかない亀裂を迎える――。
ナーロッパ諸国のひとつ、エリトニーという架空の小国を舞台とした、壮大な歴史絵巻です!
第一部は、エリトニーの美しき王妃・サラ、英雄でありながら美しき王妃を城内に閉じ込める醜き王・ウォレム、王妃を世話する従者・メラニー、副侍従長・ジュリアンという四人の登場人物で展開される悲劇の物語。
ある日、城内で開かれたパーティで、一人の若い貴族が王にナイフを向けた!
「サラは俺のものだったのに!」そう叫んで襲い掛かったのだ。
若者はその場で処刑されたが、ウォレム王はその日以来、サラを城に閉じ込めてしまう。
従者メラニーはそんなサラの境遇を不憫に思う一方、副侍従長のジュリアンに心をときめかせていた。
が、ある日、想い人ジュリアンがサラのいる塔に入っていくのを見てしまい……。
四人の登場人物の交錯する思い、そしてメラニーの心の闇、ドキドキ展開に引き込まれます!
つづいて第二部は、悲劇的な結末の第一部とは打って変わり、エリトニー独立戦争を描く、傑作戦記物となっております!
英雄王ウォレムの死後、エリトニーは大国ホランドの手中に陥り、属国となってしまう。
王の子・セシルとアロイスという双子は、大国ホランドの刺客の手を逃れて隣国ゲルマーへ亡命、いつかエリトニーを奪い返すことを胸に誓い、立派な大人物として成長していく……。
美貌溢れ、射撃の名手となるセシル、そして政治・戦略・経済の面で悪魔的な天才性を発揮するアロイスの二人がとにかく痛快!
また、頼れる仲間が増えていく過程も素晴らしいかぎりでした。
当然、その展開の中で奪われていく命も……悲しい別れを経て、強くなっていく主人公たちに心打たれること間違いありません!
また、独立戦争を国際政治や貿易などの現実的で詳細な部分までしっかり描き上げ、この物語がナーロッパ諸国を巻き込む巨大な戦争であることを実感させられます!
軽快なタッチの文章で読みやすいのに、とてつもないスケール!
是非ともご一読を!!!
一国の王と美しすぎる王女、それに関わる男女二人の愛憎劇から始まる国家の壮大な興亡記です。二つの作品を統合した長編となっております。
第一部『閉じ込められた、美しく、聡明な、王妃の祈り』は、エリトニー国王の嫉妬深さによって悲惨な結末を迎えた愛憎劇です。オンナゴコロの描写が秀逸で、作者は実は女性なのではないかという噂がたった話題作です。
続く第二部以降は、『エリトニー興亡記』。エリトニー国王の忘れ形見である双子のセシルとアロイスが、ホランド国からの自国の独立と復興を目指して活躍する一大戦争絵巻です。
作者初めての戦記ということで、戦いに向けての訓練の様子や、国を興す為の政策の描写が非常に細かく、そこには並々ならぬ気合いが感じられてとても好ましいです。
戦術や国づくりに関する記述に具体性があって、作者の作品に対する真摯な取り組みと研究心が伝わってくるなと思いながら読んでいます。
そして、時々挟まる“オマケ”では、登場人物の恋愛事情を面白おかしく記述していて、緊張感をほぐしてくれます。
戦記物より恋愛ジャンルの方がお得意な作者さんですから、どうしてもこのようなオマケを入れたくなるのでしょうか。そのおかげで女性でも楽しめる作りになっております。
臨場感が半端ない傑作戦記、おススメです!
ダークファンタジーが読みたい…
しかし、あまりに暗すぎ重すぎるのも…という勢におすすめです。
第一部は絶世の美女が石牢に閉じ込められるお話…。
なかなかのハードさもありますが、むしろこのハードさが売りなのです。
第二部も引き続き読みましたが、エリトニーという国をなんとか保つため奮闘する王妃VS王妃に恨みを持ち、画策するダミアン総督…。
そして、双子の姉弟たちの亡命と…。
文章そのものの読みやすさも相まって、ダークファンタジーをこれから読みたい、という初心者の方でも気軽に読める戦記物としてもおススメです。
まずは読んでみてはいかがでしょうか✨