僕らの悪戯《アソビ》は終わらない

通りすがりの腐男子

1‐1 僕らが悪戯を始めた理由

 ほんの小さなイタズラだった。小さい子がよくやる、両親をビックリさせる遊び。

 最初は母の口紅で鏡に落書きをしたのが始まりだった。母に口紅を取り上げられるまで書き続けた。口紅が使えなくなってからは、ボールペンや水性ペン・油性ペンで家中に落書きをした。

 落書きに飽きてからは、隠れた場所から勢い良く飛び出す遊びを始めた。大人が驚く様がなんだかおかしくて、面白くて何度もやった。でも、やり過ぎて反応が悪くなり、つまらなくなって止めた。

 次にやったのは虫を使ったイタズラだった。ダンゴムシから始まって、蝉の脱け殻にカブトムシ、クワガタムシにトンボ。ホタルを数匹捕まえて家の中に放した時は、綺麗と言いながらも顔がひきつっていた。蛙やトカゲ、蛇を捕まえて帰った日は叱られた。でも一番怒られたのは、ムカデやゴキブリ・ジョロウグモなんかを一つの入れ物に入れて、どれが最後まで残るのか実験した時。知らず知らずのうちに蠱毒をやっていたらしい。残った虫はムカデだった。

 逆に他人が怪我をするリスクがあるイタズラはやらなかった。自分のイタズラで自分が怪我をするのは自業自得の結果だから良い。でも、自分が仕掛けたイタズラで他人が怪我をしたら、その責任を親が取ることになる。自分で責任を取れないことはやらないに限る。それが自分に課したルールだ。

 けれど、そのルールを破ってまで仕掛けたイタズラは、小学校の先生に対してだった。保護者からの評判の良い先生で、他の先生からも信頼されている先生だった。でも生徒達からは嫌われていた。親が裕福な生徒をあからさまに優遇して、それ以外の生徒を常に見下していた。それに俺は知っていた。いや、偶然知ってしまった。その先生の本性を、正体を!だからこそ、自分が最大限楽しみつつもっともダメージを与えられる方法を考えた。

 一つ目のイタズラは、先生の机に生きたままゴキブリとムカデを数匹ずつ入れた。ちゃんと先生が虫嫌いなのを調べてから、軽いジャブで。凄く喜んで大騒ぎしていた。

 二つ目は、忘れた頃に毒虫と毒蛇のプレゼント。カッターナイフの刃入りのお手紙を添えて。もちろん、手渡しした。その時に、「先生に渡すよう頼まれた」と言ったら疑われなかった。次の日、目の下に大きな隈をつくった先生に「箱の中身を知っていたか?」と聞かれたが、知らないフリを貫いた。以後何も言われなかった。

 更に忘れた頃に三つ目。プール授業の日、先生が盗みやすいようにプールバッグからパンツを少し出した。わざとゴーグルを教室に忘れて取りに戻って仕込んだ。女子のパンツのニオイを嗅いで悦に入っている変態だから、あえて自分のパンツを犠牲にした。プール授業が終わり教室に戻って着替える時、パンツが無いと騒いだ。教室中を探して先生の机の引き出しを開けたら、精液らしきもので汚れたパンツが出てきて大騒ぎになった。先生本人は何やら言い訳をして「僕はやってない!」と喚き散らしていたけれど、校長室に連行されていき俺は内心大笑いだった。

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