「一度きりの影」
人一
「一度きりの影」
少女は綺麗で可愛らしいドレスを纏っている。
「ねぇママ!見て見て!」
「あら!可愛いお姫様ね!」
「ママありがとう!」
――パタパタパタ
少女は自室に駆けて行った。
鏡の前で踊りながら、お姫様になりきる。
気分はさながら、童話のお姫様だ。
「かがみよかがみ、世界で1番きれいなのはだあれ?」
「……それはあなたです。うふふ!」
定番の文句を口にする。
返事は当然、鏡の精になりきる自分だ。
楽しい。楽しい。
好きなドレスを身にまとって、理想の自分になりきるのは。
「ふふふふ、かがみよかがみ、世界で1番きれいなのはだあれ?」
「それはあ――
『それはあなたです。』
「えっ?」
誰が答えた?
自分のセリフを言ってくれたのは、誰?
「かがみよかがみ?世界で1番きれいなのは……だあれ?」
「……」
『……』
返事は無い。
当然だ。私はアテレコしていないのだから。
「かがみよかがみ?かがみさん?」
『……』
呼びかけても、返ってくるものは無い。
――パタパタパタ
「ねぇママーかがみが喋ったぁ!」
「え?……それは良かったわねぇ。」
「でももう喋らなくなっちゃった……」
「そうなの?きっとそれは1度だけの奇跡だったのよ。」
「そうなの?」
「きっとそうよ。
……さぁ、そろそろおやつの時間にしちゃいましょう?」
「うん!」
「一度きりの影」 人一 @hitoHito93
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