第2話 癖強い兄達

 現宰相のマーゼン・フェンリックス氏とは、父方の親戚同士で僕ら兄弟達も伯父伯母として、子供の時から慕っていた。

 父の国王と一番上のハルトナ兄さんの話だと…

 伯父夫婦には、子供が居ないせいか跡継ぎ問題が、浮上してきているらしい。

 長年に渡って、親族、親友、盟友と共に国を担ってきた父と伯父とては…

 新たな国王となった者の参謀役とも、片腕とも、呼べる地位には…


 「忖度無しに共に意見し合える者でないとならない……との理由が、二人にはあるらしくてね…」と、兄。


 僕が、フェンリックス家に出される事になった。


 「ナゼ、僕なんですか?」その問に一番のハルトナ兄さんは「それは、俺が国王となった時にお前を、必要とするからだ」


 「はあ…」

 「確かに俺とお前は、歳が離れては居るが、その分。他の弟達よりも身近に接してきがするんだ…」


 それは、ハルトナ兄さんが、年の離れた僕を、猫可愛がりしてドコに行くにも付いてきたからでは?

 その挙げ句、それがうっとおしくなっていった僕が、遂にブチギレてしまい。

 お互いに暴言…とまではいかないけど…

 度々、それらが元で言い争ってはいる。

 ハルトナ兄さんの直ぐ下の弟でもあるハイス兄さんとは、昔から適度な距離感で、接してもらえているのに…

 しかも、適度に面倒みが良いしハルトナ兄さんとは、大違いだ。

 現在は、隣国の公爵令嬢のアルティエリ・クライフさんとの婚約が進められているしね。

 そうなると、ストッパーが効かなくなったハルトナ兄さんが、怖いなぁ…


 「兄さんは、過保護ですかねぇ〜」

 「また…他人事みたいに…」

 「気に障ったのならスミマセン。でも兄さんの場合は、ロイシが産まれた直後にアンバー学園への入学が決まっていて…学校の勉強と平行に次期王としての振る舞いや国の歴史…などなどの勉強漬けになって…」


 二番目の兄ハイスは、読み掛けの本に栞を挟み目の前に座っていた三番目の兄アークと視線を合わせた。


 「あぁ〜その時だよな…一時期ヤツレたんだ…まぁ…オレ的には、お前が産まれてくれて、興味がそれてマジ感謝してるよ!」と、アーク兄さんは、手入れを終えた剣を鞘に収め僕に振り向く。


 「へっ…」

 「弟に対しての過保護過ぎの被害は、アークも、だからねぇ…」

 「まぁ……なぁ」皮肉ったようにニカッと笑う。


 それ見る限りでは、ハイス兄さんとアーク兄さんの…『だからねぇ』と『まぁ……なぁ』は、同じ意味なんだろう。

 アーク兄さんは、幼い頃から明朗快活で、王国主催の武芸大会にて出場していた王族警護の騎士が、剣士として戦う姿に魅了されると、自ら騎士団に入隊したいと両親に願い出た。

 いつも自分達を、守って居てくれる騎士達が、剣士として相手に立ち向かう姿勢と勇敢さにアーク兄さんは、深く魅了されたらしい。

 それに幼いながらに王族で三男とくれば、自分で身を立てなければならないと母に教えられてきたからと言うのも大きいだろうが、ソレと並行してハルトナ兄さんのブラコンから逃れたかった…からだろう…

 丁度、その頃に僕が生まれたから興味がやや逸れたが、正しいのかもしれないけど…


 僕が、ハルトナ兄さんの過保護過ぎからくる言い争い後にハイス兄さんが、アーク兄さんとハルトナ兄さんとの遣り取りを話してくれたっけ…


 「プクプクホッペの天使と生傷絶えないガキなら。プクプクホッペの天使に目がいくだろ?」


 そのままハルトナ兄さんは、その頃まだ赤ちゃんだった僕に癒やされたらしい。


 「しかも…学園への入学で、なかなか会えず。構えずだったから余計に可愛く見えたのかもしれないね…」

 「まっ…そう言う事だ…」

 「それは、分かりたくないけど、分かったよ。でも僕が宰相夫婦の所に行くのは…なんだか…」

 「どうして?」


 僕は、改まったように話し出す。


 「他の貴族令息の中には、僕よりも、素晴らしい方はいると思うから。いくら僕とハルトナ兄さんが、それなりに言い合える関係でも…」

 「じゃさぁ…ロイシは、あのハルトナ兄さんを見てどう思う?」

 「過保護? ブラコン?」

 「でしょ? ボクもアークも、同じ兄弟だからね。それ以上の感情はないけど…周りは違う。次期国王と言うことで、あからさまなお世辞で、近付いてくる事もあるかもしれない。王族を利用しようとする輩が、居るかもしれない。皆が皆、信用できる相手ではないんだよ」


 あっ…そう言うこと、と僕は考え込む。


 「本当はね。ボクの所にも、在学中にはなるけど、次期宰相の打診と言うか、そう言う話しは何度かあったんだ。でも、その時にはアルティエと付き合っていたし…互いに婚約すると決めていたから」


 そんな前から婚約の話が、2人の間で出ていた何って…


 「彼女は、隣国の公爵令嬢で一人娘だからボクが、入り婿になることになるだろう。ここに残るアークやロイシには、本当にすまないと思っている…」


 ハイス兄さんは、頭を下げた。


 「いや…そんな! 兄さんは悪くないです!」

 「それでも、結果的に言うと…」

 「…って言ったら。オレだってそうだろ? 王族で騎士とか…」

 「アーク兄さんの仕事は、立派です!」


 突然、僕に名前を言われて戸惑うアーク兄さんは、微妙な表情を浮かべる。


 「アークは、兄弟の中でも屈指の格闘系で腕力型だからね。絶対に二人の力になってくれるよ」

 「まぁなぁ…オレはまだ騎士としては、小隊長補佐レベルだけど、絶対に上に行ってやる王族だからって言うヤツらに一泡吹かせてやりてぇからなぁ!」

 「兄さん怖い顔してる」 

 「あぁ? そうか?」


 三番目の兄であるアーク兄さんは、気さくで程良く面倒見が良い。

 ハルトナ兄さんの過保護過ぎとは、全然違う!

 頼りがいは、国を守る騎士団の一人だから強くて勇ましくて、気さくで頼りがいがあって、カッコ良いから確実にモテるのが、アーク兄さんだ。

 もしかしたらアーク兄さんは、兄弟一モテる男かもしれない。


 本来なら第三王子として、行政や国のまつり事にと顔を出し指示を出さなければならない人で、護対象だが、騎士としてのアーク兄さんは他の誰よりも、勘が異様に鋭く力量も戦術に長けこれが、普通の貴族令息なら王侯貴族を対象とした警護を任せられても、おかしくない立場だ。


 『王族としてのオレは、関係ない。オレは、騎士だ!』が、アーク兄さんの口癖だ。


 僕達、王族は城内外では常に護衛の騎士達が、後ろに控えている状態を常に保っているけど、アーク兄さんは騎士としてのプライドに誇りを持っていて、自分の身は自分で守ると宣言し自分に付けられる騎士達を、他の対象者に回してくれている。

 兄は、王族と言うプライドも同時に持っているから気高さも兄弟の中で、ずば抜けている。


 「ロイシは、本当に良く人の内面を見ているね。その人の本音を見抜く力は、兄弟の中でも群を抜いていると思うよ…」

 「そんな事は…」


 フッと、僕に対してハニカムように微笑むけど…

 兄弟の中で一番、したたかなのは、間違いなく二番目のハイス兄さんだ。


 まぁ…別にそれが悪さをするって事はないけど。

 その冷静な判断。

 素早い自己分析と、点と線を上手く繋ぎ合わせて、いち早く真実に辿り着くのは、決まってハイス兄さん先だ。

 自分の伸び代を知っている自分は、国王の器ではないが、宰相としてだと…

 長兄と対立関係を、生じさせるかもしれない。

 ここは、一歩、互いに引くことができる一番下の弟に任を任せた方が…


 『無難かな?』

 『そうだな…』


 幼い頃そんな言葉を、ハルトナ兄さんとハイス兄さんが、交わしていた記憶がある。


 身を引く覚悟と言うか、そんな事があり隣国の何って話しが、出たのかもしれない。


 しかもその話し合いを聞いた頃は、まだ前世の記憶を持って居なかったし…

 その意味を、理解できる歳じゃなかった。


 『ボクは、次期国王とか、宰相とかには、興味はないよ。第一に兄さんとの権力争いは、ゴメンだね』


 ナゼと、僕が思う前にハイス兄さんは、苦笑した笑顔でハルトナ兄さんには、勝てないと言い切った。


 『だからって…お前のことだ。上に立つ身として、民主を導く事に興味が無いわけじゃないんだろ?』

 『…そうなのかなぁ?』


 わざとらしく腕を組んで小首を傾げるハイス兄さんが、僕の目に映る。


 『まぁ…どうなんでしょう。でも小さな領地なら。そこを自分なりより良く治められたらとは、思うことはありますよ』


 今の僕を通して見ると、やっぱりな…と言う、考えに思い当たる。


 『だから。兄さん。ボクは、隣国の公爵令嬢の所へ婿入りすることにします』

 『あぁ…』

 『なので、宰相の件は、お断りさせて頂きますね』


 その時、幼い僕をハイス兄さんは、にっこりと満面な笑みを絶やさなかった。

 

 何って言うか、お前に宰相の件は任せるぞ的な?

 企みとは、少し違うけど…

 そんなニアンスを含んだ表情だと思う。


 『彼女は、とても可愛らしい方で、優しくて、とてつもなく人気があって…』


 『へぇ〜〜』

 『…他のライバル達を、腕力を使わずに学業や学園での立ち振る舞いだけで、蹴散らすのは大変でした…』

 『腕力意外って言うのが、怖いぞ…お前らしいが…』今となっては、その言葉に対して激しく同意だ。


 ハルトナ兄さんも、ハイス兄さんが持つ。

 中に秘めたシタタカサを、知っている身だ。


 『まぁ…恋愛でも、結婚でも俺は、お前の意思を尊重するよ。だから好きな人は、ちゃんと守ってやれよ。お前のようなヤツは、いつ敵を作るとも分からない。肝に銘じるか、一瞬にして握り潰すぐらいの勢いがないと…夫婦揃って共倒れだぞ…』

 『ハイ。ご心配とご配慮ありがとうございます…』


 お互いが、お互いに一筋縄ではいかないいかないと知っていて、兄達は兄達で、色々と思う事があるのだろう。


 怖い人達だけど…


 ハルトナ兄さんからすれば、ハイス兄さんを介して国益に有利になる方が、介してない方に比べれ他人を介さずすんなりといく。

 そして、そこに僕が加われば、兄弟の独擅場となる。

 それにアーク兄さんだって、それなりに実力があるし統率者としても、認められてきたと言うから。

 何かあれば、直接騎士を動かせるって訳になるのか……


 この兄達、相当腹黒くて癖強いなぁ…


 と、まぁ…兄弟達は、こんな感じだ。

 そして僕は、倒れてから前世の記憶と今世の記憶が、入り混じっている状態で、視野広く物事を見られるようになっていった。








 

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