まどろみの車窓と、星の銀河 ~格差社会と銀河鉄道な夜~
白よもねこ
第1話 ぼんやり光る野原
「所詮、生まれてくる親を選べない時点でこの世は平等ではないんだよ」
残業後の帰りの汽車は思いのほか静かで、隣の席の男女の会話が鮮明に聞こえてきた。汽車が進む大地と水平線を挟んで向かい合う夜空は、むやみにきれいで、そこに浮かぶ上弦の月はやさしい明かりを大地へ届け、星々も自分を主張するようにおのおのが瞬く。まるで星空の中へと進むように汽車は次の駅に向かって静かに走っていた。
仕事の疲れで半分眠りに落ちていた脳にするりと入ってきた隣の男女の会話は、閉じかけていた瞼と脳内のシナプス細胞をことのほか刺激し、糖分不足でむくんでいる脳の覚醒とシナプスの連携を促したようだ。急速に現実に戻された意識の中で、うっすら目を開けると車窓から遠くにきれいな野原がみえた。月の明かりに照らされ、ぼんやり光る野原を眺めながら、先ほど耳から入ってきた言葉をもう一度思い出していた。
鉄筋工という典型的なブルーカラーの父、場末のスナックで雇われママをやっている母という両親のもとに生まれた。収入は少なく、両親はいつでも仲が悪く、顔を合わせればお互いを貶し合い、陰ではお互いの悪口ばかりいい、そしてお互いに不倫をしているような家庭だった。
両親ともにパチンコ狂いで仕事のない休日は、朝から二人とも別々にパチンコ屋にでかけ、23時のパチンコ屋の閉店まで帰ってこないことが日常茶飯事で、空腹のため、6歳下の弟、さらに2歳下の妹と3人で、家にある食べ物を探した。
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