星間輸送管理局の業務日誌・2
四葉みつ
第1話
「ソーライ!」
名前を呼ばれて、青年は軽く手を上げた。
「すぐに戻るから大丈夫だ」
「お前はどうしてそう、いつも無茶な選択をする」
シュラーは半ば呆れたように、ため息混じりにそう言った。
「そんな気難しい顔するなって。ちょっと見てくるだけだから」
「……分かった。ランデブー地点は端末に登録してあるからな」
「りょーかい」
ソーライは小型シャトルに乗り込むと、早速着陸態勢に入った。
星間輸送管理局に正式に所属してから、もうどれくらいの月日が経ったのだろう。
サトーラ星の
星間輸送管理局とは、名前の通り、星々の間を行き交う宇宙船を管理する機関だ。積荷の検査からシャトル乗客の情報管理等を
その所属員であるソーライは今、ヴィアーサという星に着陸しようとしていた。
それは
「ねつ暴走?」
ソーライがその言葉を聞いたのは初めてだった。
シュラーは神妙な面持ちで、静かに頷く。
「ああ。ヴィアーサで起ころうとしている」
「なんだ、それ。水疱瘡みたいなもんか?」
「食べ物と言わなかっただけ褒めてやろう。そういえばお前はサトーラ出身だったな。ああいう帝国規模の星であれば、それなりの回避装置を備えているから、知らないのも無理はない」
「あら、私は知っているけれど」
同じ室内にいた儚げな美少女が口を開いた。彼女もまたサトーラ出身だ。
「熱暴走は宇宙船の往来が原因で起こる災害よ。惑星から見れば天災、でも宇宙から見れば人災よ。もともとはIT用語だったのだけれど、船の航路を回路に見立ててそう呼ばれるようになったの」
「ユーリヤ」
口を開いた少女の名をソーライは呟く。
「宇宙船に関する用語なのに知らないなんて、星間輸送管理局でお仕事する資格がないのではなくて? 退職届のテンプレートならすぐに検索して差し上げてよ」
「……いつも本当に一言多いよな」
説明のお礼を言おうと名前を呼んだ矢先にこれだ。
ため息をつくソーライに、ユーリヤはふわりと微笑んだ。黙ったままソーライの手を取ると、その手に小さな端末をそっと握らせる。画面には検索したての退職届フォーマットが表示されている。黙っていれば可憐な美少女なのに、シュラーの相棒の座を狙う彼女はソーライにとりわけ当たりが強かった。
彼女もまた、過去、シュラーの恩情により管理局へ所属することになった人物だ。アンドロイドであるユーリヤは、本来ならば処分されているところだ。
「で、熱暴走って?」
ソーライはシュラーに質問した。
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