白環の国の四季遣い
暁月
プロローグ:風の呼ぶ春
まだ冷たさの残る風が
淡い桜の花びらを運んでいく。
空を泳ぐそれらの中で
一枚だけ
ほかとは違う軌道を描き
ひゅるり、と高く舞い上がった。
ただ、それだけのこと。
けれど、世界がほんの少しだけ
軋んで揺らいだ。
春の始まり。
忘れていたはずの場所が、再び開こうとしていた。
――プロローグ:風の呼ぶ春 了――
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