自己修了編

 この世界は利己的だ。


 折角与えられた力を自分のためだけに使う。


 それは僕も同じだ。だから、その自己中心的な中でできるだけ多くの人にメリットのある利己的な行動を起こそうと考えた。


 今僕は新幹線に乗って東京に向かっている。


 新幹線ではジャックが起こらない。


 それこそ、銃刀法が廃止された頃はよく起こった。

 そして、たくさん人が死んだ。


 そいつらはやり過ぎたのだ。


 そのせいで利用者は激減。人々はリスク分散のために在来線、自家用車を使うようになった。おかげで新幹線会社は利用料金の減額、中学生の僕でも乗れるくらいにはなった。


 僕はクラスメイトを惨殺してから指名手配さてている。それ故発砲許可が降りており他の乗客にバレれば一発で射殺される。


 普通の人ならこの状況に陥った場合、車内トイレに隠るだろう。しかし、それを不審に思われ、待ち伏せされれば終わりだろう。


 なので僕はわざと席に座った。


 この世界は技術とルールの統制が取れていない。


 ロクな本人確認もなければ緊急巡回員もいない。


 はっきり言ってチョロい。



 しかし東京に着いてからも僕は逃げなければならない。車内と違い防犯カメラが山ほどある。

 それに、ちょうど情報が届いている頃だろう。そうなれば検問が敷かれるだろう。


 それをどう超えるか。簡単だ。先にも行ったとうり、この国は技術とルールの統制だが取れていない。


 まだ一人一人、警官がチェックをしている。予測だけは一丁前にして貼った検問の前には長蛇の列ができるだろう。


 それで癇癪かんしゃくを起こした数名がまた乱射事件などを起こすだろう。


「ただいま、東京駅構内で銃を乱射している人物が...」


 現に、そういう趣旨の車内放送が流れた。


 警察はそれの対応に追われるだろう。そうなると検問にいる人数が減る。

 そのどさくさに紛れて逃げる。


 防犯カメラにはしっかり映るだろう。だけど一日稼げればいいのだ。その目的を達成するために。


 _______


 もうそろそろ東京駅に着く。駅に着いてもドアは開かない。安全性で言えばそれが最善策だろう。しかし、今の自分にとってはただの邪魔だ。


 この新幹線の車種で大きいのはドアの方。


 駅に着いた瞬間、僕はその窓を割って外に出た。


 しっかり駅員がこちらに向かってくる。それを無視して僕は改札の方に向かった。


 改札前の広場は大混乱だった。今の警察は無能で、この程度の混乱をすぐに鎮圧できない。これでも主要都市ということでマシな方だ。


 床に広がった血で何度か転けそうになりながら走る。


 乱射している奴の目的は警察でこちらには目もくれない。


 警察がいない門をくぐり、改札に切符を通し、駅から離れるべく走った。


 _______



 荒い息と共に後ろを見た。追っては来てないようだ。うまく巻き切った。


 スマホのマップアプリで現在地を見る。駅から少し離れたところにある裏路地といったところだ。

 目的地は少し離れたところにある。そこに向かって再び走り始めた。



 銃刀法ができる前には容易にその中に入れた。整理券をとり、傍聴できた。

 しかし、銃刀法が廃止されてからはできなくなった。

 なぜならそこは、この国の政治の中心、国会が開かれるだからだ。


 政府の主要政治家を殺されたら困る。その判断は正しいと思う。しかし、ならばなぜ銃刀法を廃止したのか?ということになる。

 まぁいい。僕の行動が修了した時、もう一度銃刀法ができる。その時、僕にはもうどうでもいい話だ。


 ____________


 着いた。国会議事堂だ。警備はいない。時間を見るとちょうど国会が始まった頃だ。乗り込むなら今だろう。

 僕は警備で立っていた二人を射殺し、門を潜った。


 中に入ればこちらが有利。国会の中では銃器刃物が持ち込めない。安全な会議のため、だそうだ。


 扉を開け、序盤の静かな雰囲気の会議に踏み込む。


 ざわざわと当たりのどよめきが聞こえてくる。


「君。早く退出しなさい。」


 議長の声がマイクを通して響く。それを無視して階段を降りた。


 議長が何度も忠告してくる。


 階段を登り、手始めに議長を射殺した。その体はフラフラとした後、グシャと音を立てて床に倒れた。


 一部から悲鳴が聞こえてきた。


 議長席の左側の最前列。総理大臣の方に向かう。


「門番は何をしている!それに、私のSPは!」


「残念ですが全員殺しました。」


 総理の顔がどんどん引き攣っていく。こいつが目的の奴でなければ既にその頭に発砲していただろう。

 しかし、今はこいつに言いたいことがある。奴の頭に銃口を突きつける。


 バン、と音がして扉が開き、防弾チョッキを着た警察の特殊部隊がはいってきた。


 それは瞬く間に使われていた傍聴席、通路を埋めるまでに至った。


「銃を捨てててを上げろ!」


 その言葉を聞いて安心し切った顔を見て心底イライラした。


「無理です。こいつを殺さないと何も変わらない。」


 そもそもなんでこれほどの人数を集められたんだ?


「もう一度言う。銃を捨て投降しろ。さもなければすぐさま発砲する。」


 めんどくさいなぁ。しょうがない。


「わかりました。その前に、こいつと話してもいいですか?これが飲めなければ発砲します。あなたたちが発砲して僕が死ぬまでに、最低十人は殺しますよ?」


「...分かった。欲求を飲もう。』


 なんで上から目線なんだよ。


「ありがとうございます。じゃあ、お前。なんで銃刀法を廃止した?」


「それは、治安維持のため...」

「それは表向きの理由だよな?実際のところどうなんだ?」


「...裏なんてない!治安維持のために...」

「ごちゃごちゃうるせぇな。話を聞いてなかったのか?もう知っているんだ。代わりに僕が発信してもいい。ただ本人の口から吐化させたたほうが説得力があるという理由で今こうしてるんだ。」


 まぁ予測だけで本当は知らないけど。



 そいつの顔に冷や汗が浮かぶ。


「分かった、分かった。話す。話すから...私は、昔から銃が好きだった。しかしこの国では法律が邪魔をする。なんとかいい理由がないかと探していた時、戦争が起こった。丁度いい理由だと思った。これなら全員が納得する。そう思った。結果はその通り、私の案は可決された。全部私のわがままだ。」


「ふざけんなよ。やっぱりそうかよ。」


 やはり、人間は愚かだ。


「さぁ。全部話した。その銃を離してくれ。」


 僕は銃口を頭から離した。その時またしてもそいつは安心し切った顔をした。

 そのムカつく顔面に向かって、僕は引き金を引いた。


 隣に座っていた奴は災難だろう。こいつの血をモロで浴びるのだから。


 一気にあちこちで悲鳴が起こる。


 ここからは時間に制限がある。一人も多く殺す。


 さぁ、どいつからいこうか...


 突如、大きな銃声と共に右肩に激痛が走る。


 その音の発信源は、またしても咸斗だった。


 なんで...


 戸惑っている間に、次々と引き金を引いていく。


 体の中に次々と異物が入ってくる感覚。やがて、全神経の感覚がなくなり、床に倒れ込む。


 最後の力で引き金を引く。しかし、咸斗には当たらない。


 彼がこちらに銃口を向け、引き金を引き、大きな音が鳴って、一瞬の鈍い一味と共に、僕の意識は途絶えた。


あの時の咸斗の悲しむような顔を、僕は死んでも忘れないだろう。

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そして、総理の優越 黒塔 霖 @kocuto

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