そして、総理の優越

黒塔 霖

中学終了編

2027年 銃刀法が廃止された。


 理由は、各国の戦争という麻薬による、テロリズム、スパイ、この国の自衛力を全て戦地に回したことによる、治安悪化。


 自分の身は自分で守れ。そういうことらしい。


 だが、その思惑とは反対にこの日本という国の人口は減少して行っている。

 ニュースを見ると、テロだの暴発だのスパイだと思っただの、全て利己的に使っている。


 それはこの学校でも同じだ。


 廊下ではグロックだの二刀流だの騒いでいる。


「キャアアアアアアアアアアアアアアアアア」


 廊下の床に倒れた生徒を前に、女子が叫ぶのは日常茶飯事だ。どうせチャンバラでもしていてのだろう。


「おーい那鶴なずくん遊びーましょ。」


 男子数名が机の周りに集まってくる。


 最悪だ。 今日もやられるのか。


 ここで抗っても無駄なので大人しく席を立つ。

 僕はトイレの個室に連れて行かれた。


「今日の朝さー面白いこと思いついたんだよねー。」


 僕は便器に座らされ、上履き靴下をぬがされ、服をぬがされた。すごくスムーズだ。

一切の無駄がなく、下着だけになった。


下着だけなのは情けだろう。

 僕は両腕を掴まれ、持ち上げられる。足が地面から離れた。


 そいつは満足そうに頷いてから口を開いた。


「今日思いついたのはねー、。」


 は?


 処刑って?


 僕死ぬの?


 昨日までは、写真を撮られたり、ゴミを食わされたり、酷い暴行や屈辱を受けたり、耳元で拳銃を発砲させらるみたいな死なないものだったのに?


 ニヤニヤしながらそいつは刀の刃をちらつかせた。


「日本版ということでねー、結構考えたんだよー?キリストの死因って窒息死じゃん?流石にお前がしぶとかった場合何日も支えるのはしんどいから、を再現しようってなったんだよねー。」


 キリストが死んだあと? 死んだあとって確か...


「お前の脇腹に刀を刺す。俺がロンギヌスだ!なんつってw」


 こいつ、本当にやる気だ。


「そんなことしていいのか?この学校じゃない。この国じゃ、故意の殺人は死刑だぞ。」


 そいつらは顔を見合わせて、一斉に吹いた。


「おまwまじかよwそんなこと気にしてんのかよw」

「いいぜw死んだあとお前に服着せて銃なり刀なり持してやるよw」

「お前持ってないんだろ?持たせてもらえて本望だろw!?」


 そういうことか。故意じゃなければ死刑じゃない。そう偽るつもりか。


「じゃあ早速行こうか。」

「ちょ...まっ...」


「3」


 やめろ


「2」


 やめろよ


 声にならない音が口から漏れる


「1」


 そいつが一気に腕を引いて前に出してきた。


 時間がゆっくりに感じた。


 あぁ、これで死ぬんだ。こいつらの利己的感情によって。


 切先が脇腹の表面にあたる。もう少しすると激痛が走るだろう。

そう身構えた瞬間に、大きな銃声が聞こえた。


 刺さりかけていた刀は、半ばから折れ、壁に弾痕ができた。


 刀が折れ唖然としているそいつの顔が、横から飛んできた拳によってぐにゃりと歪み、倒れ込んだ。


「おいお前ら。もうそろそろ、いい加減にしたほうがいいぞ?」


 右手には拳銃が握られている。


「おいおい何してんだよ。」


 僕の腕を持っているやつの口から漏れた。

少しずつだが、支えている力も抜けて入っている。


「それはこっちのセリフだ。さっきの全部録画してあるぞ?それを提出したらどうなるか、少しは考えろ。」


 そいつらは顔面蒼白で、僕の腕を離した。こういう状況になるかもと予測できなかったものか。


「うわああああああアアアアアアアアアアアアアア。」


 そいつらは立ち尽くした後、みっともなく悲鳴をあげて走って逃げていった。


「大丈夫か?」


 そういって、彼、咸斗みなとは手を差し伸べてきた。


「ありがと。でも気にすんなよ。俺は大丈夫だから。」

「何が大丈夫だ、殺されかけてたんだぞ。それに、お前も持ってるだろ、あれを使えよ。」


「あれで何ができるんだよ。ネットで買ったゴミで。」

「それでも使えるんだろ?」


 あぁイライラする。


「とりあえず今日はありがと。お前が友達でよかったよ、じゃ。」


 さっさと服を着て、僕はトイレをでた。



 次の日、教室に入るとあいつらがまたニヤニヤして話かけてきた。


「昨日はごめんねー、悪いことをしたと思ってるよ。」


 こいつら、また何かするのか?


「帰ってからキリスト処刑のこともっと調べたんだ。そしたら、キリストが吊るされている間、周りにたくさん人がいたことがわかったんだ!だからクラスのみんな呼んできたから出来る限り再現するね!」


 本当にバカな奴らだ。昨日のことを忘れたのか?


 早速服を脱がしにくる。


 もういい、こいつらはもうだめだ。


 生きてちゃダメなんだ。


 我慢してたけど。


 殺さないと。


 僕の手で。


 僕は掴んできた手を払い、そいつの視覚を奪った。


「ぅあ゛あ゛あ゛あ゛あああああアアアア」  そいつが叫ぶ。


 鞄からネットで買った無名拳銃を取り出し、もう一人の頭の方向めがけて発砲した。


 大きな銃声が響き、彼はその場に崩れ落ちた。


 二人殺した。


 二人死んだ。


 その事実を認識し、硬直する者。

その事実を受け入れられず、脳がフリーズする者。


 どちらにしろ教室は静寂に包まれた。


「キャアアアアアアアアアアア」


 遅れて後者の悲鳴が起こった。


 クラスの見せ物且つモブだった僕が一気に恐れられる存在になった瞬間だった。

さっき一撃を加えた奴が、ふらふらうめきながらうずくまっていた。


 優しい僕はそいつの首を掴み、苦痛を与えるように壁に押し付けた。


 激しい呻き声が教室に響く。


 やがて声が聞こえなくなってから、僕はその手を離した。


 全員が呆然としていた。


 自分の服には血のような赤い染みがついていたが、それで平然と立っているのだ。


 人とは思えないだろう。


 静かだ。ずっと、こんな世界を望んでいたのだろう。


 だけど、その静寂を乱した者がいた。


 その女は悲鳴を上げドアに向かっていく。


 ドアの直前、そいつはとても安心した、いわゆるという顔をした。


 その横顔の方向めがけて僕は発砲した。


 無名だからか、一発一発の威力の個体差が激しい。


 その結果、女子は扉に激突し、その場に倒れ込んだ。


 その体は扉に体当たりし、ずるずると音を鳴らしながら崩れた。


 全員が呆然としている


「ぅあ゛あ゛あ゛あ゛ああああああああアアアアアアアアアアア」

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアア」


 一気に賑やかになったなー


 昨日今日散々調子に乗っていた奴が、今や悲鳴を上げて逃げ惑っている。


 気持ちがいい。


 そこからは天国のようだった。


 一人一人、しっかりと無力化していく。


 逃げようとする者。


 抵抗を試みる者。


 冷静に弾切れを狙うもの。


 全てこの教室という小さな空間で、しっかりだ。


 殺戮が始まって数分、机は荒れ、床は赤く染まり、教室の真ん中に倒れた生徒の山があった。


 やっと、全てが楽になる。


 ちょうど、咸斗が入ってきた。


 どうだ見たか、僕だって出来るんだ。


「これ、お前がやったのか?」


 その声は震えていた。


「そうだよ。」


「捕まると知っていて?」


 僕は彼の方に向かっていった。


「こいつらは死ななくちゃいけなかった。だから殺した。」


「それは、それは...」


「じゃ、俺逃げるから。」


 僕は、咸斗の言葉を遮って、教室を出た。

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