『かぐや姫』のように育てたいという理由で祖父から名前を付けられてしまった主人公、神楽耶。なんと、髪はさらりと肩にかかる長髪、美少女にしか見えないほどの圧倒的な美形です。
本作の魅力は、そんなコミカルな導入の中に、「歴史のIF」と「妖」という独自の世界観がしっかりと練り込まれているところです。
そして「妖の王」になってしまった神楽耶を取り巻くキャラクターたちのやり取りと、ふとした瞬間に覗く不穏な空気のギャップも良い。
親切なキャラクター紹介も用意されているため、少し間が空いて途中から読み直してもスッと物語に戻れる読者への配慮も嬉しいポイント。笑いと爽快感のテンポが良く、一気に読み進めたくなる作品です。
プロローグの内容の厚みから強く引き込まれました。
なかなか一つのページに、壬申の乱と源頼朝とGHQが同時には出てこないものです。
美少女すぎる女装男子の高校生が主人公の本作。
深みのあるプロローグから一転するように、何度もクスッとなりました。
幼なじみの如月彩は圧倒的な強さを持ち、ボディーガードのような役割になっているのも面白く、吸引力のある文章にどんどん引き込まれました。
日本史や神話、伝承が絡むことで、物語に独特の空気が漂い、ただごとではない物語の飛躍力を感じたものです。
妖の設定も興味深く、ユーモアとシリアスの切り替えが巧みで、筆力の高さを感じました。
現在280話まで連載中の長編小説において、ほんの序盤での感想にはなりますが、壮大なスケールの世界観からどんな展開が待っているのか気になります。
なにより冒頭からとても読みやすく親近感がわきますので、構えずに物語のページを開いてみるといいでしょう。
そこにはアッと驚く展開が待っており、素敵な女装男子があたたかく迎えてくれますよ。
プロローグ一本で、この作者の世界構築力の本気を見ました。
壬申の乱から天武天皇の諡号、和気清麻呂、北条氏、足利尊氏、GHQとマッカーサーのサインまで——妖の城の伝承が日本史の節目節目と絡み合いながら現代まで続いているという設定の重厚さに、まず唸りました。単なる和風ファンタジーではなく、「なぜ妖が今も存在しているのか」という問いに、ちゃんと歴史的な必然性で答えている構造が好きです。
一方で、その壮大な設定をぶち壊すように「年貢が米のまま」「離農が進むど田舎で誰が作るの?」と叫ぶ如月彩の存在が最高です。幼馴染を守るために全国大会一位の空手使いになった彼女が、妖の王の話し合いを「不良物件!」の一言で打ち切るシーンには思わず笑いました。シリアスな伝承の語り口と、この掛け合いのギャップのバランスが絶妙です。
主人公・神楽耶のキャラクターも魅力的です。祖父の「かぐや姫として育てたい」という謎の無茶振りのせいで儚げな超絶美少女になってしまった妖の王が、複雑な顔をしながら「ちょっと疲れて眩暈がした」で締めるラスト。この脱力感と諦観が、キャラクターとして非常にリアルで親しみやすい。
人語を喋る大口真神が「ニホンオオカミのイメージが無くなったから柴犬になった」という設定も、笑えるのにちゃんと世界観の論理として成立しています。
長編でも飽きさせない自信があります。