隣の席の山田くんは、レベル9999で世界最強のようですが、だからなに? としか思えません
水無月/成瀬
第1話
このクラスには毎朝の日課がある。
とは言っても、ヤンキー(表現古いかな?)の佐々木くんとその取り巻きたる宮田くんたちが、山田くんを挨拶がてらに一発ぶん殴るって物だけど。
「おう、今日も良い天気だな」
とか言いながら佐々木くんは腹に一発。
「でも午後から雨みたいだぜ」
宮田くんは窓から見える流れる雲を見ながら、やっぱり腹に一発。
「傘持ってきてないわ」「誰かのパクれは良いだろ」
とか次々に腹を殴っていくクラスメイト。
当の本人の山田くんは、よくわからない顔をして木偶人形のように無抵抗だ。
その日課が終わると、佐々木くんたちはそのまま教室を出ていって、昼になるまで顔を見る事はない。
というのがまぁ一日の始まりの日課だ。
クラスの誰もそれを咎めないし、助けに入る事もない。なにも起きてませんよ、という体を取ってHRが始まるまでの時間を潰している。
それは勿論、森川葉月も変わらなかった。
窓際一番後ろの自分の机に座り、前とその横に座る竹中宏斗と、留学生のジョン・ウィルソン、その二人の友人と昨日のアニメついて話していた。
「それにしても、サイコーでしたでゴザル。円盤になったと時の、演出が今からたのしみでゴザルよ」
イカれた語尾をつけて喋るのジョンだ。
彼は日本の文化に感化されて、単身日本に来た行動力のある男なのだが、いかんせんその行動力は余計なところにも発揮されている。
「確かにな。流石は芸アニだよ。作画がホントに神すぎて、ついドキドキしちゃって困るわ」
宏斗がうんうん、頷いて同意するが、葉月はつまらそうに頬杖をついて空を見た。
「どうしたで、ゴザル? 葉月どの?」
「俺、リアタイ出来なかったんだよ。義妹がダンジョンから帰って来ないから、見てきてくれるって義母さんに言われてさ。で、行けば『なにしに来たの? 友達に見られたくなから、早く帰って』とか言われて散々だったわ」
昨日の事を思い出して、憂鬱を隠す事もなくため息をつく葉月。
「おぅ! それは災難でゴザルね。なら、気をきかせてネタバレをきっかり教えて上げるでゴザルよ」
「なんでたよ! 気を使って話すなよ。それが友情ってもんだろ!」
ガタン!
そんな盛大な音を立てて、ジャンの座っていたイスが倒れる。
勢いよく立ち上がり、ビシッと葉月に指を指して、
「なにイッテるんだ! 義理の妹とか、どこのエロゲーだよ! って設定持っているクセに、さらには自虐風自慢をしてるクセに、友情をカタルんじゃないよ!」
「ちょ、ジャン。語尾忘れてるから、一回落ち着こう? それに葉月の義妹は俺も見たけど、ヤバいぞ、こうこっちを見る目が絶対零度だったもん。生存すら許さない境地で、嫌ってるのがまるわかりなんだからな」
そうフォローする宏斗に、続きて葉月も自己弁護を図ってみる。
「そ、そうだよ。アレは人間じゃね、雪女だ。まじ、睨まれただけで心が凍てついていくんだからな」
「フッ、それはご褒美ってイウンだヨ! あぁ、想像しただけで、背筋がゾクゾクするてゴザルよ!」
自分を抱きしめように両手を体に回して悶えるジョンに、葉月も宏斗と呆れ顔に変わって見つめ合った。
「駄目だ。コイツ真正だったわ」
「……なんであの時、話かけるのを殴ってでも止めてくれなかったんだ。未来の俺」
そんな馬鹿な話を人の目も憚らずにしていれば、当然クラスから浮いていた。
それでも山田くんのようにならないのは、山田くんが居てくれるからだろう。
何事もなかったように起き上がった山田くんが、葉月の隣にある自分の席に座った。そのまま腕を枕につく突っ伏して動かなくる。
まぁ、これもいつもの事だから葉月たちは気にもしいで話を続けていた。
しばらくしてチャイムが鳴る。
「おっと、担任殿が来てしまうでゴザルな」
「じゃ続きは次の休み時間だな」
言って宏斗とジャンは自分の席に戻っていった。
葉月は頬杖をついて、窓から空を見上げる。
青い空に白い雲。ありきたりな風景がそこにはあった。
「あ、科学の宿題やってはいわ」
扉を開けて、担任が入ってきた。
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