第19話「愛を刻む夜」
俺の涙の告白を聞いたカイゼルは、驚いたように少しだけ目を見開いたが、すぐにその瞳に深い愛情の色を宿した。彼はまだ自由の利く方の腕を伸ばし、俺の濡れた頬にそっと触れる。
そして、その親指で涙を拭うのではなく、獣がするように俺の目尻からこぼれる雫を、舌でぺろりと舐めとった。
驚きで身体が強張る俺に、カイゼルは悪戯っぽく、しかしどこまでも優しく微笑んだ。
「……泣くな、ミコト。俺が、お前を置いていくはずがないだろう」
その声はまだ掠れていたが、力強い響きがあった。
彼は俺の首筋に手を回し、ゆっくりと引き寄せる。そして重なった唇は、ひどく熱かった。それは彼の生命の熱そのものだった。貪るように、確かめるように、深く長く口づけを交わす。怪我をしていることなど忘れてしまうほど、力強いキスだった。
想いが、通じ合った。
言葉にしなくても、お互いの気持ちが流れ込んでくるのが分かった。
その夜。
侍医の許しを得て、俺はカイゼルのベッドに招き入れられた。傷はまだ痛むはずなのに、彼は俺を腕の中に抱きしめて離そうとしなかった。
「ミコト。今夜、お前を本当の意味で、俺のものにしたい」
熱を帯びた黄金の瞳が、暗闇の中で俺を真っ直ぐに見つめている。その視線に射抜かれ、俺は頷くことしかできなかった。
「……はい。僕を、あなたのものに、してください」
カイゼルの唇が、再び俺の唇を塞ぐ。今度のキスは昼間とは違う、雄の独占欲を隠さない激しいものだった。服が剥がされ、あらわになった肌に彼の熱い吐息がかかる。
「美しい……」
陶然と呟きながら、カイゼルは俺の身体の隅々まで、まるで自分の所有物であることを刻みつけるように唇と指を這わせた。それは王としての激しい愛情であり、獣としての本能的な求愛だった。
初めての経験に戸惑い、身体は強張る。だが、カイゼルは俺を急かしたりはしなかった。優しく身体を解きほぐし、俺が悦びを感じる場所を根気よく探り当てていく。やがて痛みは甘い痺れに変わり、俺は彼の与える快感になすすべもなく溺れていった。
そして、すべてを受け入れる準備ができた時。カイゼルは俺の耳元で、低く囁いた。
「愛している、ミコト。お前は、俺の唯一の番だ」
その言葉と共に、俺たちは初めて一つになった。
獣の独占欲と、王の激しい愛情。その両方を注ぎ込まれ、俺の身体は内側から焼き尽くされるようだった。痛みと、それ以上の快感の波に翻弄されながら、俺は彼の名前を呼び続けた。
夜が明ける頃、疲れ果てて眠りに落ちる寸前、俺は首筋にチクリとした軽い痛みを感じた。カイゼルが、番の証としてそこにそっと牙を立てたのだ。
身体中に、魂にまで、刻み込まれた。
俺はもう、この獅子王のものなのだ、と。
痛みも、気だるさも、そして何より満たされた幸福感も全てが、その揺るぎない証だった。
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