The Second/シェイヴテイル 第3話
『いいジャイアン』
放課後、シンジたち3人は、アメリカンドックをかじりながら、コンビニを出た。
ダンは両手に二本持ち。
モグモグと左右交互に食べているワンパク坊やだ。
しばらく歩くと、清涼飲料水の自販機が並ぶ一画にガラの悪い輩が3人たむろしていた。
知ってる顔。
近所の悪ガキ。3人とも高校を中退して、フラフラしているってもっぱらの噂。
3人の頭の悪そうな顔を見て、噂は間違いなく真実だろう。シンジは思った。
シンジと、その中の1人の目が合った。
「おい、何見てんだよ」
金髪スパイキーショートが立ち上がり、シンジに近づいてきた。病的に顔がこけている。最初、そいつから甘いマンゴーみたいな匂いがした。しかし、よく嗅ぐとそれは、甘ったるく重い匂いだった。
金髪が、シンジに顔を近づけてくると、ひどい口臭がした。口の中が乾いてるのか、口を開くたびにネバネバした唾液が糸を引くのが見えた。
金髪はシルバーのネックレスをしていた。葉っぱの形をしたペンダントトップ。
マリファナ。
シンジは思った。
どこまで、頭が悪いんだろう。
どう見ても、マリファナ中毒者。
ダンが2人の間に入った。
「何も見てねぇよ!」
ダンはそう言って、アメリカンドックをパクリと一口。金髪を睨んだまま、視線を外さない。
ダンは中2にしては身長が高い。そして、アメフト選手みたいな体をしていた。大切な友達をバカにするわけではない。しかし、シンジは思う。事実として、私服姿のダンはどう見ても、アメリカのストリートギャングだった。学生服を着ている今は少し攻撃力が落ちるが、少なくとも中学生には見えない。
街中で絡まれる。
ダンが凄む。
相手が去る。
それは、黄金パターンだった。
さっきから、シンジがまるで焦らないのはそのせいだ。
ダンの迫力に金髪が怯んだ。ダンは金髪の顔面に思い切り頭突きをした。
尻もちをつく、金髪。
鼻血を出して、顔を押さえる金髪を、取り巻きが起こして、フラフラと逃げていった。
「さすがはダン。見事なお手並み」
ハルトが言った。
ダンは左右のアメリカンドックを一口、二口、一瞬にして串だけにした。串を道端にポイと放り投げて、言った。
「おれ、弱いくせに粋がっている奴らが、一番嫌いなんだ」
さすがはいいジャイアン。
「ありがとう」
シンジがそう言うと、ダンは何も言わず、ニコッと笑った。
すっかり、日が落ちた。
外国人墓地に隣接する公園。
その立地のせいか、辺りが暗くなると人通りは無い。
シンジたちは家に帰るのに都合がいいと、よくこの公園を通った。
三人でいれば、どんなロケーションであろうとコワくない。
辺りに人がいないこのシチュエーションになると、話題は必ず、ハルトの体験談になった。もちろん、一つ年上の彼女との愛の軌跡について。
この前の話題は衝撃だった。
おっぱいは舐めても、甘くないと言うのだ。
それについて、シンジはダンと二人、頭をハンマーで殴られたくらいの衝撃を受けた。
今回のメインテーマは
『パイズリ』だ。
そう、シンジたち、全国の男子中学生のあこがれの行為について。
ハルトいわく、ファーストインパクトがすべてとのことだった。最初に包まれる瞬間、触れたときの柔らかさを感じたその瞬間がピークだと。それほど気持ちいいものでもなく、ただ大好きな彼女がそんなことをしていることに興奮するだけらしい。
ただ、彼女のピンと立った乳首が、玉にツンと当たったときは、体に電流が走ったというくだりに、シンジは気を失うくらいの衝撃を受けた。想像するだけで悶絶した。
さっきから話題に入ってこないダンが気になり、シンジは様子をうかがった。ダンは上着のボタンを外してシャツの上から自分の胸をつかみ、谷間の間に何かをはさみこむように上下運動をしていた。
ダンの顔を見ると、白目をむいてトリップしていた。
ダンは自分の体でエアーパイズリを行い、頭でそれを疑似体験していた。
なんて、器用なんだ。
シンジは驚愕した。
そして、その探究心に感心させられた。
「···ウン」
ダンがボソッと喘いだ。
その瞬間、シンジは思わず吹き出した。ハルトもダンの様子に気づき、シンジにつられ笑い出した。ダンも照れながら、苦笑していた。
「あ··」
ダンの顔から表情が消えた。
ダンの背後で、さっきからんできた金髪があわてて逃げていくのが見えた。
金髪が振り返ると、目が充血していた。やってやったといわんばかりに、顔がニヤついていた。
「ヤバい···ダメだ」
ダンがその場で膝をついた。
よつんばいになり、そのまま地面に突伏した。
ダンの背中にはナイフが刺さっていた。柄の部分だけが露出し、深く突き刺さった刃の部分はまるで見えない。
上着が見る見るうちにドス黒く染まっていった。
第4話へ続く
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