The Second/シェイヴテイル 第1話

 『今日はすき焼き、死ぬ日』


 その日の夕食はすき焼きだった。

 シンジの家ですき焼きをするときは、スーパーのパックの牛肉ではなく、近所の精肉店の量り売りと決まっていた。

 竹の皮に包まれたすき焼き肉はテンションが上がる。

 肉には牛脂、牛の脂身が添えられている。

 牛の脂身を鍋にしいて油を出して肉を焼いたあと、最後に残った脂身を、シンジの父親と小学生の妹は奪い合っている。

 すき焼きの味を吸って、トロ〜リとして美味しいらしい。

 気持ち悪い。

 シンジは思った。

 やっぱり、すき焼きには、白い炊きたてのご飯と、父方の田舎の祖母が送ってくれた白菜の漬け物に限る。

 彼の中で、それは譲れなかった。

 甘い味付けとロースの脂でダルくなった舌を、白菜の漬け物の塩気がスッキリさせてくれる。

 普段、シンジは、ご飯のおかわりはしない。でも、すき焼きの日は必ずおかわりしてしまう。それは、ご飯が進むからだ。

「シンジ、おかわりは?」

 母親が優しい笑顔で聞いてくれた。

「ううん、今日はいい」

 シンジは我慢して、そう答えた。

「どうしたの、お兄ちゃん」

 妹のマヒロが不思議そうな顔をしている。マヒロはシンジの目から見ても、母親に似て、美少女。

 しかし、小5なのに胸はペタンコだった。

「別に」

 シンジは素っ気なく答えた。

 マヒロはつまんない奴って、口を尖らせた。すぐに興味は鍋の牛脂に移った。熟成具合を見つつ、父親と勝負のタイミングを見計らっている。

 この日、シンジにも大事な勝負があった。

 ザ·ロードから、メッセージがあった。

 デスゲームは今晩。

 今日も死ななければいけないのか。

 シンジはそれだけが気が重かった。


 第2話へ続く

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